軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第16話 挑戦状

正門に差しかかった時だった。

「よう。我が家の大落ちこぼれ様じゃないか」

別の方向から、聞き覚えのある声が飛んできた。

レオンの表情がすっと冷えた。

「レオン様、行きましょう。放っておいてください!」

隣のローシーが、焦ったように声を上げる。

エイドリアン・セレストーム。セレストーム家の次男。魔力値百四十、水元素系。

二人の取り巻きを従え、にやにやと笑いながらこちらに歩いてくる。

七年前、レオンの魔力が停滞し始めたその日から、この男はまるで溜飲を下げるかのように嫌がらせを繰り返してきた。レオンの実力が一向に伸びないのをいいことに、態度はますます横暴になっている。

「まだ外を歩く度胸があるとは恐れ入るな。俺がお前の立場なら、穴でも掘って一生そこに潜ってるぜ」

レオンとローシーの前に堂々と立ちはだかり、エイドリアンは嘲笑った。

「お前が恥ずかしくなくても、セレストーム家の名が泣くってもんだ。なあ?」

背後の二人が、追従するように笑う。

「俺の心配より、自分の心配をしたらどうだ」

冷たく、淡々と。レオンは言った。

昨夜ペンダントの秘密を発見したおかげか、今日のレオンは気分が良かった。こんな相手と言い争う気にもならない。淡々と一言残して、身を翻し立ち去ろうとした。

「……おい、待てよ」

以前のレオンは、煽れば必ず怒りの表情を見せた。それを眺めるのがエイドリアンの愉悦だった。

だが今日は違う。完全に「相手にしていない」という態度。まるで蝿でも追い払うような淡白さ。

それがエイドリアンにはたまらなく不快だった。

「エイドリアン様、あの、私とレオン様はちょうどお買い物に出るところでして……先にお通しいただけませんか?」

ローシーがレオンの袖をきゅっと掴み、精いっぱいの愛想笑いを浮かべた。

「買い物? ……ならお前だけ行け。こいつは残れ」

エイドリアンは横暴だが、ローシーがレオンの専属侍女であり、家の用事を任される立場であることは理解していた。だからローシーは止めない。ただ、レオンだけはじっと睨みつけたまま離さなかった。

「でも……」

「何がでもだ。さっさと行け」

「お前もその程度か」

レオンは冷笑した。

「七年前は、こんな口の利き方はしなかったはずだが?」

エイドリアンがレオンを敵視する理由は明白だ。七年前、レオンはまだ家族の誇りだった。魔力値は既に四十七に達し、一方のエイドリアンは三十前後で停滞していた。年齢が近いこともあって常に比較され、それが面白くなかったのだろう。

ずっと溜め込んでいた鬱憤を、レオンが落ちこぼれた今になって倍返しにしているだけだ。

「七年前の話を持ち出すのか? 忘れるなよ、今のお前は魔力値三の落ちこぼれだ。落・ち・こ・ぼ・れ」

「それがどうした。今のお前を相手にする程度なら、十分だ」

冷たく鼻を鳴らして、レオンは言った。

正直に言えば虚勢だ。エイドリアンの魔力値は百四十。実力の差は歴然としている。だが往々にして横暴な人間というのは、こういう二流どころだ。本当に実力のある者——長兄ティモシーが、こんな醜態を晒したことがあるか?

「なんだと……?」

エイドリアンの顔が紅潮した。一歩前に踏み出し、レオンに掴みかかろうと手を伸ばす。

「失せろ」

低く鋭い一喝。レオンは全身の力を込めて、エイドリアンの伸ばした手を叩き払った。その衝撃でエイドリアンがよろめく。

「どうした? ここはセレストーム家の正門だぞ。手を出すのは家規違反だ。処罰されるのは、お前の方だろう」

セレストーム家の家規は明確だ。演武場以外の場所での武闘は禁止。エイドリアンが普段横暴に振る舞えるのも、あくまで口先だけの挑発に留まっているからだ。

「この野郎……!」

家規のことを突きつけられ、エイドリアンは喉を詰まらせた。行き場のない怒りが、目に見えて膨れ上がっていく。

「度胸があるなら演武場に来い! 魔力値三がどこまで粋がれるか、見せてもらおうじゃないか!」

レオンは少し黙った。

脳裏に、昨夜の光景が蘇る。ペンダントが星光を吸収する。神秘的な液体が生成される。薬草が瞬く間に成長する。

もし——もしあの薬草を利用して実力を上げられるなら?

二ヶ月の時間。魔核を凝結するのは不可能だ。だが魔力値を三から三十、四十まで上げることは——不可能ではない。

「いいだろう」

レオンは淡々と言った。

「二ヶ月後、演武場で待ってる」

「二ヶ月? ははは! 安心しろ、忘れないさ。全員の前で恥をかかせてやる!」

エイドリアンは大声で笑い、満足げに手を振って取り巻きと共に去っていった。

三人の背中が遠ざかっていくのを見て、ローシーが緊張した面持ちでレオンを見つめた。

「坊ちゃま……本当に……二ヶ月後……」

「大丈夫だ」

レオンは静かに首を振り、胸のペンダントに手を当てた。

「行こう。街に行くぞ」

噂はたちまちセレストーム家中に広がった。

四男レオン。魔力値三。次男エイドリアンの挑戦を受けた。二ヶ月後、演武場で決着をつける。

全員がこれを笑い話として受け取った。

「レオンは気でも狂ったのか?」

「追い詰められて自暴自棄になったんだろう」

「二ヶ月後は見物だな」

議論の声が、屋敷のあちこちに響く。

誰もレオンに期待していない。

全員が、彼の惨めな姿を楽しみにしていた。

カルディアの街は、活気に満ちていた。

街道の両脇には商人が行き交い、様々な露店や店舗が軒を連ねている。オルハイム王国北部の要所として、この商業の町は確かに繁栄していた。

だが今のレオンには、そんな景色を楽しむ余裕はなかった。

まっすぐ薬材店に向かい、手持ちの資金をほとんど注ぎ込んで必要なものを買い揃えた。

数種の普通の薬草の種。

いくつかの基礎的な錬金材料。

そして一冊の『魔力修練基礎理論』。

これらはすべて、これからの二ヶ月間の修練に必要なものだ。

「坊ちゃま、もしかして……本気で二ヶ月後の決闘に備えるおつもりですか?」

買い物を終えた帰り道、ローシーが思い切って尋ねた。

「ああ。本気だ」

「でも……エイドリアン様は魔力値百四十で……」

「ローシー」

レオンは足を止め、彼女の方を向いた。

「俺を信じてくれ。俺はもう、七年前のあの諦めたレオンじゃない」

ローシーは彼の瞳を見つめた。そこには、以前には見たことのない光が宿っていた。

「……はい、坊ちゃま。私は坊ちゃまを信じます」

自室に戻ったレオンは、窓辺に立っていた。

夕暮れの光が部屋に差し込み、手にしたペンダントを淡く照らす。

二ヶ月。

ペンダントは七日ごとに一滴の神秘的な液体を生成する。二ヶ月で、約八滴。すべてを薬草の催熟に使い、服用すれば——魔力値を引き上げることも不可能ではない。

もちろん、これは理想的な計算だ。実際にどんな問題が待ち受けているか、今はまだ分からない。

だが何があろうと。

「二ヶ月」

レオンは拳を握りしめた。

「どんなに苦しくても、必ずやり遂げる」

窓辺から遠くを見つめた。

「このレオン・セレストームが——どこまでやれるか、見せてやる」

【第十六話 完】