作品タイトル不明
第17話 封印された庭園
「レオン様、彼らを全員怒らせてしまいましたよ! これからは気をつけてくださいね!」
カルディアからの帰り道。荷物を抱えたローシーが、心配そうな顔で言った。
今日の行動が、これからレオンにどれほどの面倒をもたらすか、彼女はよく分かっていた。エイドリアンは執念深く、器の小さい男だ。この件を簡単に水に流すはずがない。
「心配するな、大したことじゃない」
レオンは手を振り、淡々と言った。
「俺は争いを好む人間じゃないが、恐れる人間でもない。弱腰でいれば相手はつけ上がるだけだ。今日から、俺は以前のように譲歩しない」
呆然とレオンを見つめるローシーの顔には、驚きの色が浮かんでいた。
今日のレオンは、あまりにも変わりすぎていた。
「どうした?」
「もしかして……病気じゃないですか? 見せてください!」
ローシーの手がレオンの額に伸びる。
「やめろ、俺は正常だ。お前の方こそ病気だろう」
笑いながらローシーの手を払いのけ、レオンは呆れたように言った。
「へへ、病気じゃなければいいんです」
ローシーは照れくさそうに笑った。
「坊ちゃま、今日は本当に変わりましたね。七年前の坊ちゃまが戻ってきたみたいです」
「変化、か。人はいつか成長する。前を向いて生きなければならない。一生ぼんやりと過ごすわけにはいかないだろう?」
レオンは静かに言った。この数日の出来事が、彼を大きく変えた。鑑定の失敗、婚約破棄、家族の冷遇、そしてペンダントの秘密——すべてが彼に告げていた。運命は自分の手で切り開くしかないのだと。
「でも坊ちゃま、さっきの対応は本当に痛快でした! エイドリアン様のあの顔、見ましたか? 坊ちゃまを怒らせに来たのに、自分が怒って帰っていくなんて」
ローシーは興奮気味に笑った。
「ただ……」
笑顔が少し曇る。
「二ヶ月後の決闘……勝算はありますか?」
二人の実力差はあまりにも明白だ。彼女のような門外漢でも分かる。魔力値三と百四十では、まったく次元が違う。
「心配するな、問題ない」
そう言いながら、レオンの瞳に決意の光が宿った。
何があっても、この決闘には負けられない。逃げることもできない。
この決闘はレオンにとって、あまりにも大きな意味を持っていた。
尊厳。名誉。そして——未来。
「じゃあ楽しみにしていますね! ちょうど家族魔闘会の時期ですし」
「家族魔闘会?」
レオンは眉をひそめた。
今はまだ七月初めだ。二ヶ月後なら、九月初め。
「ええ、今年は前倒しで行われるそうなんです」
ローシーが続けた。
「しかも聞いた話では——アルケイオンの使者が来られるとか」
レオンの足が止まった。
「アルケイオン……?」
アルケイオン——エルシア大陸全土において最高峰とされる学府。
各国の王室や帝国とは独立した立場を保ちながら、その歴史は大陸の建国神話よりも古いとされる。国境も政治も超越した存在で、そこに属する者は「国の臣」ではなく「知の継承者」と見なされる。
入学できるのは、大陸中から選ばれたほんの一握りの天才のみ。カエルム・アルカナムのような魔法組織とはまた別の、純粋な学術と修練の最高機関だ。
「今年、アルケイオンの使者がいくつかの名家を巡回して、新たな候補者を探しているそうなんです。セレストーム家にも立ち寄ると聞きました。魔闘会の観覧もされるとか……」
「……そうか」
レオンは淡々と頷いた。
正直に言えば、今の自分には関係のない話だ。魔力値三。アルケイオンの選抜基準に引っかかるはずもない。
だがそれは、どうでもいい。
レオンの目的はただ一つ——エイドリアンを倒し、全員の前で自分の力を証明すること。
「まずは二ヶ月後だ。目の前のことを片付ける。それだけだ」
◇
セレストーム家の本邸が見えてきた頃。
レオンは突然口を開いた。
「ローシー、馬車を止めてくれ」
「え? 坊ちゃま、どうされました?」
「やらなければならないことがある」
レオンの視線は遠くの独立した小さな庭園に向けられていた。
「お前は先に戻っていてくれ。待たなくていい」
「でも……」
「大丈夫だ」
レオンの口調は固かった。
「いくつかのことは、俺が向き合わなければならない」
そう言うと、彼は馬車を降り、一人でその庭園へと歩いていった。
七年間、封鎖されていた庭園。
母が生前住んでいた場所。
ローシーはレオンの背中を見つめ、言いかけて止めた。最終的にため息をつき、御者に先に行くよう命じた。
彼女は知っていた。あそこは、レオンの母エレーぜが生前住んでいた場所だ。
七年間、あそこはずっと封鎖され、誰も足を踏み入れていない。
そして今日、坊ちゃまはついに——あの封印された記憶と向き合うつもりなのだ。
【第十七話 完】