軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第103話 それぞれの想い

夜明け前。東門の外。

探索隊の隊員たちが、一人また一人と集まっていた。二十人余り。吐く息が白い。二月の朝はまだ暗く、松明の灯りが石畳の上に橙色の影を落としていた。

レオンが門を出ると、エヴィゥがすでに隊列の中ほどにいた。銀色の髪を一つに束ね、紺色の旅装に身を包んでいる。腰に細身の剣を佩き、背には小振りの革袋を負っていた。貴族の令嬢にしては軽装だが、動きやすさを優先しているのが見て取れる。

エヴィゥはレオンに気づくと、軽く手を上げた。

「おはよう。——来ると思っていた」

「なぜだ」

「あなたが断る理由がないもの。遺跡、好きでしょう」

エヴィゥは微かに笑った。穏やかで、気負いのない笑みだった。

レオンとエヴィゥは、学院でもう何度か話している。最初に言葉を交わしたのは図書館だった。レオンが旧帝国の刻印術に関する古い文献を読んでいた時、隣の席に座ったのがエヴィゥだった。彼女は同じ書棚の文献を探しており、二人は自然に会話するようになった。

レオンにとって、エヴィゥは数少ない——友人と呼べる相手だった。

互いに気を遣わない。余計な詮索をしない。知識の話をすれば噛み合う。ただそれだけの、心地よい距離だった。

レオンの中で、エヴィゥはそれ以上でも以下でもなかった。

◆◇◆

「いつディートリヒと知り合ったの?」

隊列が動き始めると、エヴィゥはレオンの隣に並んで歩いた。澄んだ目がレオンを見つめている。——まるで見透かそうとするかのように。

「知り合いというほどじゃない。図書館で一度話しただけだ」

レオンは肩をすくめた。

「それだけで参加を許されたの?」

エヴィゥは少し驚いた顔をした。彼女とディートリヒは幼い頃からの知り合いだ。親密とまでは言えないが、関係は悪くない。ただ、ディートリヒは高慢で自負心が強く、同年代の者をほとんど眼中に入れない男だった。もちろん、不快な人間というわけではない。そうでなければ、エヴィゥもわざわざ接触しようとは思わなかっただろう。

レオンのこれまでの行動を思い返して、エヴィゥは納得した。レオンがどうやってディートリヒを説得したのかはわからないが、レオンはそういう人間だった。どんな状況でも、何とかしてしまう。

◆◇◆

エヴィゥがレオンと並んで歩いているのを、レイノルドは隊列の後方から見ていた。

銀色の髪が朝風に揺れている。エヴィゥが何かを言い、レオンが短く答え、エヴィゥが小さく笑う。——その一つ一つの仕草が、レイノルドの神経を逆撫でした。

レイノルドにとって、エヴィゥの笑顔は自分にだけ向けられるべきものだった。

あの出来損ないが、本来自分のものであるべき場所を奪っている。

レオンは死ぬべきだ。——レイノルドの目が暗く沈んだ。遺跡の中で何かが起きても、不思議ではない。だがこの件は、絶対にエヴィゥに知られてはならない。

レイノルドは隊列の後方を歩きながら、心の中でレオンへの報復を練り始めていた。

◆◇◆

隊列は王都の東門を出て、グラウシュタイン山脈の山道に入った。

アルトハイム遺跡に到着するまで、片道三日はかかる。道中は野営を重ね、場所によっては魔獣の襲撃に遭う可能性もあった。

だがレオンにとって、危険の察知は前世からの本能だった。二度目の人生で培った経験と、オグリから叩き込まれた戦闘感覚があれば、二つ星後期であっても、一般的な魔獣に後れを取ることはない。

二十人の隊員の実力は、全体として悪くなかった。四つ星が六人。残りの大半が三つ星以上だ。

エヴィゥも三つ星に達していたが、そのことは公にしていなかった。他の隊員は知らない。

全員の中で——星の数が最も低いのは、レオンとレイノルドだった。

◆◇◆

十時間以上歩き、山道を抜け、日が傾き始めた頃、隊列は平坦な開けた場所に出た。

ディートリヒは周囲を見回した。高い木々が聳え立ち、外からは見えにくい。天然の遮蔽物としては申し分ない。

「今日はここで野営する」

ディートリヒの声に、隊員たちが荷物を下ろし始めた。

レイノルドがエヴィゥのそばに歩み寄った。

「エヴィゥ、俺の近くに陣を取れよ。何かあった時に守ってやれる」

「結構よ」

エヴィゥの白い顔に、かすかな不快が浮かんだ。彼女はレイノルドの近くに陣を取るつもりなど毛頭なかった。以前のいくつかの出来事以来、レイノルドの印象は最悪にまで落ちていた。

エヴィゥは数人の女性隊員と共に陣を取った。レオンはエヴィゥの近くに陣を張りたいとは思わなかった。——正確には、そんなことを考えもしなかった。レオンは隊列から少し離れた木陰を選び、荷物を下ろした。

◆◇◆

その時だった。

木陰に向かおうとしたレオンの前に、一つの人影が現れた。——いや、現れたというより、ずっと近くにいたのに気づかなかった。

紫色の髪。銀縁の眼鏡。澄んだ灰色の瞳が、おどおどとレオンの方を窺っている。

ミラ・ヴェステンドルフだった。

司書見習いの少女は、記録帳を胸の前にきつく抱えたまま、レオンの数歩手前で立ち止まっていた。唇がかすかに動いているが、声が出ていない。——何度か声をかけようとして、そのたびに躊躇っているようだった。

「……あ、あの……レオン様」

ようやく出た声は、ほとんど消え入りそうだった。

レオンはミラを見た。——この少女のことは覚えている。

今、目の前に立っているミラは、あの時と同じように肩を縮めている。だが目は違った。怯えではなく、何かを伝えたいという意志が、臆病な表面の下で揺れている。

「レオン様に……わ、渡したいものがあって。……迷惑じゃなければ、その……」

ミラは記録帳の間から、折り畳まれた羊皮紙を取り出した。両手で差し出す。指先が震えていた。目はレオンの顔を見られず、羊皮紙の端をじっと見つめている。

「い、遺跡の地下構造に関する……古い記録で……。レオン様が前に話していた、練兵場の地下の話に……関連する記述が、学院の書庫に……」

声が途切れた。喉が詰まったように、ミラは俯いた。紫色の髪が顔の両側に垂れて、表情を隠す。

「……ごめんなさい。うまく説明できなくて……」

レオンは黙って羊皮紙を受け取り、広げた。——目が鋭くなった。

旧帝国時代の排水路の設計図だった。練兵場の地下に、帝国図書院と直結する排水路が存在する。——レオンがオグリの知識から推測していた構造が、この設計図で裏付けられている。

「どこで見つけた」

「が、学院の第三書庫……です。古い地方行政の記録に紛れて……誰も、気づいていなくて……」

ミラの声はほとんど囁きだった。レオンに見つめられていることを意識して、顔がみるみる赤くなっていく。眼鏡を押さえる手が、無意識に震えている。

レオンはミラを見た。——あの日、書庫で泣いていた少女が、自力でここまで辿り着いた。レオンの推論を聞いただけで、膨大な書庫の中から、誰も気づかなかった設計図を見つけ出した。あの臆病な外見の奥に、司書見習いとしての確かな能力が隠れている。

「……助かった」

短い一言だった。だがレオンの声に、いつもの素っ気なさとは違う響きがあった。

ミラの目が大きく見開かれた。——褒められるとは思っていなかったのだ。口がぱくぱくと動いたが、声にならない。顔が耳まで真っ赤に染まった。

「べ、別に……そんな……レオン様とエヴィゥ様には、あの時……助けていただいたから……せめて何かお役に立ちたくて……でも、こんなことしか……あの、その……し、失礼します……!」

ミラは早口でそれだけ言うと、ほとんど逃げるように踵を返した。数歩走ったところで——木の根に躓きかけて——慌てて記録帳を抱え直し、顔を伏せたまま自分の陣に戻っていった。

レオンはその背中を見て、わずかに首を傾げた。

(……何なんだ、あれは)

◆◇◆

エヴィゥは少し離れた場所から、その光景を見ていた。

ミラの姿はすぐにわかった。あの紫色の髪と銀縁の眼鏡。——ソフィアに虐められていた、あの司書見習いの子だ。

ミラが顔を真っ赤にして何かをレオンに渡している。レオンの表情が——ほんのわずかだが——いつもと違う。あの素っ気ない少年が、誰かに対して礼を言っている。

あの日、書庫でミラを助けたのは、レオンとエヴィゥの二人だった。だがミラが今、わざわざ何かを届けに来たのは——レオンの方だった。

エヴィゥは自分でも気づかないうちに、じっとその光景を見つめていた。

(……あの子、レオンのことを)

胸の奥で、何か小さなものがちくりと刺した。——だがエヴィゥはその感情に名前をつけなかった。

◆◇◆

夜が深くなった。

虫の声が、密林の中に響いている。

レオンは木陰に腰を下ろし、ミラから受け取った排水路の設計図を広げていた。松明の灯りの下で、線の一本一本を目で辿る。

(——排水路の入り口は練兵場の北東隅。幅は人一人が通れる程度。途中で二回分岐し、帝国図書院の地下倉庫に繋がっている)

『ほう。あの嬢ちゃん、なかなかやるではないか』

オグリの声が頭の中に響いた。

(ああ。あの推論を聞いただけで、ここまで辿り着くとは思わなかった)

『お前の推測を裏付ける設計図を、膨大な書庫から独力で見つけ出した。——司書見習いの能力を侮るなよ、小僧。知識の海から必要な一滴を掬い上げる能力は、戦場で敵の急所を見抜く能力に等しい』

レオンは薄く笑った。師匠は相変わらず大袈裟だ。

『それより、ルートを確認するぞ。入り口は練兵場の北東隅。分岐は二箇所。一つ目を左。二つ目を右。壁に旧帝国の方位標が刻まれておるはずだ。北を指す矢印に従え。図書院は練兵場の真北に位置する』

(方位標が消えていたら?)

『空気の流れを読め。地下倉庫には換気のための通気孔があるはずだ。わずかに風が吹く方向が正解だ。——叩き込んでおけ。地下で迷えば死ぬぞ』

レオンは設計図の分岐点に印をつけながら、オグリの指示を頭に刻み込んだ。

これで、テラフォーマーの回収ルートが確定した。

練兵場から地下に潜り、排水路を通って帝国図書院の地下に入る。他の隊員が図書院の正面から入ろうとして旧帝国の防衛刻印に阻まれている間に、レオンは裏口から目的の品を回収する。

(——後はセレーネのサーキットを治す道具を手に入れて、無事に帰るだけだ)

レオンの頭にあるのは、それだけだった。

設計図を畳み、目を閉じた。サーキットの中で、天道流の制御術が脈動する。二つ星後期の器に、星苔の回復薬剤の効果が浸透し、魔闘会で負った損傷が確実に修復されていく。クリストフから吸収した魔力も、少しずつ同化が進んでいる。だが三つ星の壁はまだ遠い。

『焦るな。今の器で無理に突破すれば、サーキットが歪む。遺跡から帰ってからでも遅くない』

(……わかっている)

『わかっておらん顔をしておるから言っておるのだ。——寝ろ。明日も長い』

レオンは薄く笑った。師匠の小言は、いつも正しい。

闇の中で、レオンのサーキットが微かに青い光を放った。やがてその光も消え、密林は静寂に沈んだ。

◆◇◆

同じ頃。

王都アルテリア。ヴァルトシュタイン侯爵邸。

セレーネは窓の外を静かに眺めていた。

午後、侍女から報告を受けた。レオンがディートリヒの探索隊に加わり、アルトハイム遺跡へ向かったと。エヴィゥも同行していると聞いた時、セレーネの胸に小さな翳りが差した。——レオンは自分に何も言わずに行ってしまった。

だがすぐに、自分を戒めた。あの少年はセレーネの治療のために動いている。テラフォーマーを手に入れるために。余計な感情を抱く資格など、セレーネにはない。

「お嬢様、侯爵様がお呼びです。——評議の間へお越しください」

侍女が駆け込んできた。声が切迫している。

セレーネは眉をひそめた。何が起きたのかわからない。だが嫌な予感がした。立ち上がり、杖をついて廊下を歩いた。足の痛みは半分になったとはいえ、長い廊下を歩くのはまだ辛い。

◆◇◆

ヴァルトシュタイン侯爵邸。評議の間。

侯爵エルヴィンが上座に座り、その両側に六人の中年の男女が並んでいた。いずれもヴァルトシュタイン家の分家当主や重臣たちだ。侯爵家ともなれば、傘下に複数の男爵家や騎士家を抱えている。彼らは名目上エルヴィンの臣下だが、実質的には家中の発言権を握る勢力だった。

「お父様、お呼びでしょうか」

セレーネは侯爵に軽く頭を下げ、列席者たちに目を走らせた。

「座りなさい。——聞きたいことがある」

エルヴィンの顔には、隠しきれない不快が残っていた。セレーネにはすぐにわかった。また叔父たちだ。エルヴィンが侯爵位を継いで以来、三人の叔父が常にエルヴィンと対立してきた。

分家筆頭のヴィルヘルムが、穏やかな笑みを浮かべて口を開いた。

「セレーネ姪よ。聞けば、先日星苔を大量に購入したそうだね。五千ポンド。今や星苔の価格は百倍以上に跳ね上がっている。金貨にして五万枚以上——いや、まだ上がり続けている。これだけの財があれば、我がヴァルトシュタイン侯爵家の再興も夢ではない。姪がこれほどの貢献をしてくれるとは、まことに侯爵家の誇りだ」

セレーネは即座に理解した。

ヴィルヘルムはどこからか星苔の件を嗅ぎつけ、父に圧力をかけて、星苔の利益を侯爵家のものにしようとしている。

エルヴィンが不機嫌なのも当然だった。セレーネが個人の資金で購入した星苔だ。侯爵家が口を出す筋合いではない。

だがヴィルヘルムは引き下がらない。セレーネに釈明を求め続けた。

セレーネは背筋を伸ばした。華奢な体に似合わない、凛とした声が評議の間に響いた。

「ヴィルヘルム叔父上。私が自分の資金で星苔を購入したことは、侯爵家の問題ではありません。叔父上がご自身のお金で薬草や武具を購入された時、侯爵家に上納されましたか?」

「なっ——」

ヴィルヘルムは目を見開いた。いつもは穏やかで従順なセレーネが、これほど鋭く反論してくるとは思わなかった。

ヴィルヘルムが知らないのは、セレーネの中で小さな変化が起きていたことだ。レオンと出会ってから、セレーネは一つのことを悟っていた。——不公平なことに対しては、立ち上がらなければならない。あの少年は、誰よりもそれを体現していた。

エルヴィンはセレーネの言葉を聞き、わずかに安堵の色を浮かべた。

「ヴィルヘルム。セレーネの言う通りだ。これは侯爵家の臣下の義務ではない」

だがヴィルヘルムは退かなかった。

「これは普通の話ではない。金貨数万枚——いや数十万枚の価値だ。侯爵家が抱えている困難を一気に解消できる。我々はもう、あの家に頭を下げなくて済むようになる」

ヴィルヘルムはセレーネに目を向けた。誘うような口調で続けた。

「もしセレーネが星苔を侯爵家に提供してくれるなら——あの縁談の件も、白紙に戻せるかもしれない」

嘘だった。ヴィルヘルムはそんなつもりはない。まず星苔を手に入れてから考えればいい。縁談を白紙にできるかどうかは、相手の家次第だ。

残りの五人の列席者たちも、ヴィルヘルムに同調した。星苔がセレーネ個人の手にあれば、彼らには何の利益もない。だが侯爵家に提供されれば、全員が恩恵を受ける。普段エルヴィンの味方をしている二人の分家当主ですら、この件ではヴィルヘルム側についた。

エルヴィンは苦い顔でセレーネを見た。——申し訳なさそうな目だった。

◆◇◆

セレーネの胸の奥で、悔しさが込み上げた。

なぜ侯爵家が困難に直面するたびに、犠牲になるのは自分なのか。他の者たちは何をしているのだ。

だが——レオンが星苔をすべて引き取ってくれていたことが、今この瞬間、セレーネを救った。

セレーネは真っ直ぐに前を向き、はっきりと言った。

「あの星苔は、ある方に委託されて購入したものです。星苔の価格が上がる前に、すべてその方にお渡ししました。購入資金もすでに返済されています。——ですから、あの星苔はもう私の手元にはありません」

「——何だと?」

ヴィルヘルムの顔が、みるみる険しくなった。

エルヴィンがセレーネを見た。

「セレーネ。それは本当か」

「はい」

セレーネは迷いなく頷いた。

「星苔は確かに、もう私の手元にはありません」

ヴィルヘルムの目が暗く光った。

「その相手の名は。どこの家の者だ」

「お約束しています。——秘密を守ると」

セレーネの声は静かだったが、揺るぎがなかった。

レオンの名前を、誰にも明かすつもりはなかった。どれほどの圧力をかけられようとも、この秘密だけは守り通す。——それがセレーネにできる、唯一の恩返しだった。

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