作品タイトル不明
第173話 新作武器の使用感
本日は、ギガンの欲求不満を解消するイベントにやってきました。
見渡す限りの砂漠に、砂色の小山が五つほど見えます。遠くからなので肉眼だと小さいけれど、みんなでゴーグル越しにソレを眺めているところだ。
「ありゃぁ、マジもんのデザートデミドラゴンだな」
「うへぇ……五匹もいるっすよ」
「ねぇねぇ、まさか一人一匹ずつ斃すわけじゃないよね?」
「全部は無理ね。流石に何匹かは逃げるわよ」
「肉や皮をダメにするわけにゃいかねぇし。アントネストの魔物みたいにボコボコにしていいってんなら、一人一匹ずつでもいいかもだがな」
「連係プレイっすか?」
「そうなるな」
アントネストのダンジョンでドロップしたデミドラゴンのお肉をGGGさんたちから貰ったことがあったけど、多分アレがそのお肉の元の姿だろう。
見た目はカナヘビっぽいけど、近付いたら10トントラックぐらいありそうだ。
あんな大きさのデミドラゴンをどれだけ斃せばお肉がドロップするんだろうね?
まぁ、ここはダンジョンじゃないから、丸々一体手に入る訳だが。ボコボコにして良いってものでもないらしい。
超絶美味で高級なお肉なだけに、是非とも綺麗な状態で手に入れたいところだ。
「デザートデミドラゴンの肉が市場に出回らない理由は、普段は砂に潜っているから討伐数が異常に少ないせいなんだ」
へぇ、スリムな見た目なのは砂に潜りやすく進化してるってことか。
「ダンジョン外じゃぁ、滅多にお目にかかれねぇんだよ」
お目にかかれてもお肉のドロップ率がしょっぱいから、やっぱり市場に出回らない高級お肉なんだよね。
「じゃぁ、何で今は地上に出て来てるの?」
「メスを巡って争ってる真っ最中だからだろうぜ。見ろよ、一匹だけ高みの見物やってんだろ? ああやってオス同士を争わせて、強い個体を選別してんだよ」
「あ、本当だ。メスの前でオス同士が威嚇し合ってるっすね」
「恋の季節ってことね。私のために争いなさい。最後に生き残った強者を選んであげるわ―――って感じかしら?」
「なにそれこわい」
「お前が言うと洒落にならねぇから止めろ」
季節的には春というか、気付けばサヘールに来て秋も冬も越えていた。
俺の中では夏がずっと続いているようなもので、年がら年中暑い国なのもあって季節感がおかしくなってたよ。
だけどこうして生き物たちが春なのを教えてくれる。そんな訳で、繁殖期になると姿を現すデザートデミドラゴンを狙って、俺たちは狩りに出ていた。
というか偶然居合わせただけなんだけどね。
それというのも。
飛竜の卵が孵化する前に、仔竜のご飯を沢山手に入れなければならないからだ。
生まれたての赤ちゃんは物凄くお腹が減っているので、孵化前には大量の食べ物を集めなくてはならないらしい。
今回は孵化の前イベントとして、腕に自信のある冒険者たちが大量の肉を狩る依頼をギルドから受けていた。
これもシエラ王女様側と、カメムシ王子側で争うイベントになっているんだよね。
シエラ王女様の方は、普段は候補生や竜騎士が魔物の討伐をしてお肉をゲットしてるので、いつもは冒険者ギルドに依頼を出していない。翻ってカメムシ王子側は常に依頼を出している状態である。
お判りだろうか……。如何にカメムシ王子側がまともに仕事をしていないかを。
だが一方で、冒険者側は常に魔物のお肉の依頼があるので、ダンジョンに長期間潜らなくても済むからそれはそれでって感じなんだよな。
稼げれば何でもいいという考えが冒険者側にあるから仕方がないね。寧ろお仕事をくれてありがとうって思ってそうだ。
普段は農家から食料を提供させたり、冒険者に依頼して魔獣の肉を手に入れたり、竜騎士の候補生がお肉を狩って飛竜の食料を確保している。
アラバマ殿下は以前「大食いの飛竜に食わせるよりも、飢えた民の為に食料を確保すべきだろうに……」と、愚痴を零していた。
そういうのを聞き咎められて、シエラ王女様やカメムシ王子と険悪になっちゃったんだろう。向こうにしてみれば飛竜は大事な戦力だからな。
もっと言いようがあったんだろうけど、捻くれた物言いがクセになっちゃってるから誤解が誤解を生んで曲解されたのだろうね。
とまぁ、そんな話は置いといて。
孵化の儀式前になると、魔物の討伐も普段とはちょっと違って、ギルドに出される依頼料が跳ね上がる仕組みになっている。
冒険者にとっては普段より稼げるイベントだから、みんな挙って砂漠へと魔物狩りに出ていた。
畑仕事ばかりじゃ可哀想だしね。
冒険者らしい仕事をしに狩りにやってきたのである。
いつもはお留守番メンバーの俺とディエゴも付いてきているのは別の目的があるからだけど。
「カシム側はとにかく依頼料で差を付けて、大量の肉を手に入れようとしてっからな。これに関してはシエラ殿下は不利っつーか、今までは候補生頼みだったそうだ」
真面目にお仕事をしている竜騎士は駆り出せないからね。
まともに仕事をしていない、空を飛んでるだけのカメムシ王子の竜騎士隊は、お金に物を言わせて大量の肉をゲットしているだけである。
なので俺たちはシエラ王女様側のお手伝いとして、大量のお肉を依頼としてゲットするべく砂漠に来ていたわけだけれど。
「でもデミドラゴンの肉を飛竜のエサにするのは勿体なくないっすか?」
「ばぁか。ありゃぁ、俺らが食うんだよ」
「生まれたての赤ん坊に、贅沢させたら後が困るじゃない」
「偶然遭遇しただけで、狙った訳でもないしな」
「リオン様様だぜ」
「こんな幸運滅多にないわよ!」
「リオっちがいたからってことなんだね!」
「そういうこった」
何故俺のお陰なのか判らんけれども、ラッキーなエンカウントらしいよ?
本来なら遭遇しないであろう、希少なデミドラゴンを狙って狩りをするつもりはなかったしな。
取りあえず俺はシルバとノワルに護衛してもらいつつ待機しておく。みんなが美味しいお肉をゲットするところを見学しようっと。
えーっと。
わりかしズルイ狩り方だったけど、無事にデミドラゴンのお肉をゲット出来ました。
まずは恋の争奪戦で離脱したデミドラゴンが砂に潜って逃げるのを待ち、ディエゴが地中からゴーレムを作って邪魔をして飛び出てきたのをギガンとテオが急所狙いで襲い掛かり一体ゲット。
同じく離脱した一体をアマンダ姉さんが風魔法で空へと舞い上げ、チェリッシュが矢を放ち弱らせ、落ちてきたところを最後は巨大化したブランカがワンパンで殴り飛ばしました。見事な連係プレイですね。
こうして合計二体のデミドラゴンのお肉が手に入ったよ。やったね!
「仲間がやられてんのに、まぁ~だ争ってんなぁ、あの二体は」
「それだけ恋をすると周りが見えなくなるってことよ」
残った三体を見遣りながらギガンとアマンダ姉さんは呆れたように呟いた。
恋は盲目。命がけの恋だね。本当に命を狩られた二体をリュックに仕舞いながら、俺は世の諸行無常を感じていた。
残ったデミドラゴンは繁殖のために残しておくとする。
それと同時に今回の狩りは、別の目的があったのを思い出す。
元々の目的であった、サヘールのドワーフの鍛冶師さんに新しく作って貰った武器の使用感を試すためだ。
デザートデミドラゴンという大物をスムーズにゲットできたし、性能的には問題はなさそうだね。
「それにしても、リオンの作ってくれた魔晶石のグローブの威力が凄いわ……。普通ならデミドラゴンなんて、竜巻でも舞い上がらせられないのに出来ちゃったわよ」
「アタシのボーガンも凄くない? 連発撃ちが出来ちゃうんだよ! それも狙いが全然ぶれないの!」
正しくは俺が作ったのではなく、ドワーフの鍛冶職人さんに依頼して出来上がった武器に、俺がちょっと手を加えただけである。
ディエゴ曰く『付与加工』らしいけれど、そんな大したことはしていない。
「俺のバスターソードの切れ味も半端ねぇっす」
「こりゃぁ、火力アップ効果を武器にそのまま付与したんじゃねぇか?」
違うよー。魔力が武器にスムーズに流れるようにしただけで、火力アップはしていないから、それは武器本来の性能と持ち主の相性が良くなっただけだ。
要するに無駄に零れていた魔力や力が、武器に全て流れているってことだね。
とはいえ体幹が鍛えられてなければ、性能の良い武器に振り回されるのだが。
これもドワーフの技術と希少魔法金属、そして俺が持ち主を限定する帰属性を付与したことで発生した火力である。
問題点として挙げるなら。滅多なことでは壊れないけど、持ち主の力が成長したら武器がその力に負けて壊れるかもってところだろう。
「そんなことが可能なのかよ……」
「まぁ、出来ちゃってるんだから、出来るんでしょうね」
「余すところなく力が発揮できるってのは、まぁいいことなんだろうが……」
「壊れた時が、成長の証っすね!」
「壊さないように気を付けたいけど、壊れたらそれはそれで良いことなのかな?」
その時はその時として、己の成長を受け入れて下さい。
一応予備の武器は作ってもらっているから、付与加工はみんなの成長に合わせてその都度する予定である。
実際にドワーフの鍛冶職人さんに依頼すると、これらの武器はめちゃくちゃお高くなるところだけれど。希少魔法金属類は全て自力で手に入れていて、実質無料なのでそれ程でもないからね。
みんな稼いでるし、この程度の出費は痛くなくなっているのだ。
「ところで。ディエゴも妙なモンを作ってもらってるようだな?」
「アンタには魔力を出力するアイテムは必要ないのに、何で持ってるのよ?」
ディエゴがご機嫌で振り回している棒を見て、みんなが首を傾げている。
脳内で音楽でも奏でているのかな? 魔力は通してないから今はただの棒だけど。
これは一応、ディエゴ専用の 玩具(ガジェット) である。
指揮棒のような細い杖で、魔法使いと言えばこういう形状の杖が定番だから作ってみた。
他のみんなに武器を作ってあげているのに、ディエゴだけないのは可哀想だったからだ。無表情ながら羨ましそうに、俺がみんなの武器に付与しているのを見詰められて居た堪れなかったのもある。
「俺は電撃系のコントロールが上手く出来ない」
「そうだな」
「被害に遭ったから知ってるわよ」
レヴィアタンを斃す際、みんながディエゴの電撃攻撃の余波を食らってシビシビしたのはまだ記憶に新しい。
「だが、この 指揮棒(タクト) があればコントロールできる」
そう言うとディエゴは、だるまさんがころんだみたく徐々に近づいていたサボテンの魔物に向かってタクトから電撃を放った。
青いレーザーのような光線が、迷うことなくサボテンに真っすぐ向かっていく。
バシュッと電撃が当たると、サボテンはその場にばたりと倒れた。
「放電しなくなるのはいいな。タクトのお陰で目標へ照準を合わせやすいし」
「よかったねー」
ディエゴの杖は武器というより魔道具だからね。アマンダ姉さんのも武器ではなく魔道具類になるけれど。何故か武器扱いなんだよな。どういう区別何だろうね?
そんな訳で、魔道具としてディエゴには如意麺棒からの派生で、タクトみたいなガジェットを作ってみた。コントロールと言えばタクトだよねってことで。
因みに任意で伸びたり縮んだりするけど、あんま意味がない気がしなくもない。お遊び機能みたいなものだ。
無駄に魔力を放出しないで済むなら良いかな~程度のガジェットだからね。
武器じゃないよ。魔道具だよ。寧ろ玩具ですが何か?
それなのに、なんでみんな変な顔してんの?
「確かに便利だが、厄介な気がしてならねぇ」
「こういうのって、何て言うんすかね?」
「火に燃料を加えるとか、そういうのじゃなかったかしら?」
「知ってる~! 強い上に更に強さが加わるって意味だったよね~?」
鬼に金棒、虎に翼みたいな意味かな?
でもこれで電撃に弱い魔物はディエゴに任せられるね。良かったじゃん。
レヴィアタンみたいな魔物が滅多に出ないことを祈るけど、その時はディエゴに任せれば済む訳で。
本人もご機嫌でタクトを振り回しているので、欲しかった玩具を手に入れた子供のようで微笑ましいね!
みんなのような武器じゃなくて玩具だが、素直に喜んでくれて良かった良かった。
めでたしめでたしである。
新しい武器の性能も実感したようだし、これから本格的にお肉を調達しよう!
こうして。護衛のシルバとノワルを引き連れて、みんながお肉狩りしていくのを、俺はひたすら見守ることにするのであった。