軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第174話 代理戦争というお祭り

砂漠から戻り、冒険者ギルドに依頼された獲物を持ち込むべく受付カウンターへ出向くと、満面の笑みで俺たちを迎えた者がいた。

「よーっす、お前ら! 狩りの成果はどうだった?」

「オレらスッゲェ大物を狩ったんだぜ!」

「見ろよ、このエアバッファ!」

巨大な牛の魔物を掲げて見せつけてくるグロリアスの面白トリオ。

エアレーの砂漠版であるエアバッファを数体狩ったようだ。

こちらもエアレー同様、砂漠地帯でたまに群れに遭遇する魔獣である。

やたらと好戦的で、長い角で人間を刺しに来る厄介な魔獣だ。みんなは頑張って狩ってたけど、それを遠目に眺めながら俺はディエゴと一緒にサボテンの魔物を撃ち合いっこして遊んでた。

因みに普通の精神状態だと、如意日本号の槍はダーツみたいになるので破壊力はない。

「何だ、お前らも依頼を受けてたんだな」

「護衛の依頼はどうしたの~?」

冒険者だから依頼を受けていたのだろうが、チェリッシュの言うように護衛の方はどうしたのだろうか?

「……それをお前らが言うか?」

「カーバンクルのお陰で仕事が無くなったんだよっ!」

「お陰なら良かったじゃねぇか」

カーバンクルの《《所為》》で仕事が無くなったんじゃなくて、《《お陰で》》ってところがミソかな?

「何なんだよあの従魔はよぉ」

「情報収集能力もスゲェが、危機察知能力が高すぎんだろっ!」

「おまけに幻覚で厄介な連中を攪乱するし、オレらの仕事がなくなったんだよ!」

どうやらアラバマ殿下が、カーバンクルを何匹かアマル様に護衛として派遣したようだ。

そのお陰でグロリアストリオが護衛を解任されたらしかった。

「ああ、それは俺が提案した護衛の派遣だ。フェネックだと見た目が可愛いからな。連れていても邪魔にならず癒し効果もあると好評のようだな」

しれっとディエゴが手を挙げて事情を語った。

「アレはお前が提案したのかよっ!」

「確かに人間を連れ回すより目立たねぇけどっ!」

「侍女のヤツが『むさい男共に比べて、愛らしいフェネックの方がアマル様に相応しい護衛ですわ』とか言いやがったんだぞっ!」

あの侍女さんなら言いそうだね。そしてお役御免になったと。

でもそうか。ディエゴがアラバマ殿下となんか色々企んでると思ったけど、安心と信頼のカーバンクルセキュリティを思い付いたようだ。

とはいえその護衛はかなり優秀であると同時に、アラバマ殿下の従魔だから色々と筒抜けになっちゃうっていうマイナス面もあるのだが。隠すことがなければ別に構わないんだろうけど。

アマル様もどこか抜けてるとこがあるから、気にしてなさそうだね。

そして侍女さんは可愛さで惑わされていると思われ。

思わずフェネック姿のカーバンクルとキャッキャウフフしているアマル様と侍女さんの姿が脳裏に浮かんでしまった。う~ん、メルヘン。

「まぁまぁ、良いじゃねぇか。何だかんだで王宮は息が詰まるって言ってただろ?」

「そりゃ、解放されて良かったとは思うけどな」

「オレらの目的も果たされたしなー」

「ドワーフの鍛冶師に武器を作ってもらうのが、今回の目的でもあるからよ」

「いやぁ~、流石ドワーフの武器だな! 手にしっくりくるぜ! 長い間待ってた甲斐があったもんだ」

「王族の護衛をするからつって、散々拝み倒して作ってもらったのもあるからな」

「だがこれでオレらも一流の冒険者になった気がすんぜ?」

へぇ。拝み倒したのかぁ。

俺の場合はドワーフの鍛冶師のみなさんが面白がって作りたがったんだけどね。

魔道具工房のドワーフさんと色々作って遊んでたのがバレたのもある。

スプリガンのみんなの武器を作ったのも、向こうが頼み込んできたからだもん。

それがなければ忘れていた本来の目的だった。

気難しいと噂のドワーフの職人さんだけど、陽気でノリが良いという印象しかない俺である。

「で? お前らも武器を作ってもらえたのか?」

「あ~、まぁなぁ」

「めちゃくちゃ吹っ掛けられただろ?」

「そ、そうねぇ……」

「半年待ちは当たり前のところを、二ヶ月待ちにまで縮められたのは、王族の護衛をしてっから急いでくれたのもあるんだが。見たところお前らの方も完成したのを受け取ったんだろ?」

「……いやまぁ、そうっすけど」

「しっかし、お陰で手持ち含めて護衛の依頼料も全部吹っ飛んじまったぜ」

「あ~それで狩りの依頼を受けてるんだ?」

「そうなんだよ」

「そうだぜ」

「お前らもそうだろ?」

グロリアストリオにそう言われて、俺たちは目線を逸らすように黙り込んだ。

実際にドワーフの作る武器の価格帯がよく判らないし。稼ぎの大部分が吹っ飛ぶってどんだけなのだろうか?

俺たちの方は半年や二ヶ月待ち等ではなく、制作期間も三日で他の仕事を放って真剣に作ってくれた。

希少魔法金属を思う存分使えるのもあって、職人のみなさん全員が目の色を変えて俺だ俺が作る作らせろ状態だったんだよね。

向こうはタダでも良いって言ってくれたけど、流石にそれは拙いと断って技術料は支払ったよ。

「やればできるけど、やらねぇだけじゃねぇかな……?」

「簡単に作れると思われたら、価値が下がると言っていたような気がするが……」

「こちらは魔法金属の持ち込みだったからかしら? まぁ、ブランカちゃんのお陰だけどね」

「ウキュキュ(どういたしまして)」

「好きなだけ使えるからってこと?」

「失敗しても十分な量があったからっすかねぇ?」

それもまた一つの理由だろうね。

「だが一番の理由は、リオンだろうぜ」

「だな」

「そうね」

「そうっすね」

「だよね~」

うん? なんで俺?

「ドワーフって、本当に鉱石に目がないのよねぇ」

「リオンのコレクションに目の色を変えてたからな」

「俺らにゃ色付きの石にしか見えねぇんだが……」

「アクセサリーに加工されてないと、何が何やら判んねぇっすもんね」

「あんなに名前覚えられないよ~!」

そういや魔道具師のドワーフさんたちと石拾いをしながら、鉱石談議で盛り上がった記憶がある。

その時に鍛冶師のドワーフさんもそれに加わって、意気投合したんだっけ?

休憩時間にハチミツ入り青茶やチョコレートなどの甘いお菓子を食べながら魔道具の考案をしたり、如意合金の面白さを語っていたら仲良くなった。

彫金師のドワーフさんも混じってたような気もするけど、そちらはそちらでパワーストーンのアクセサリーに興味津々だったな。

ドワーフってみんな見た目で誰が誰か判んないから、多少違う職人さんが混じってても気にならないのだ。

普段は知らない人を警戒する俺だが、専門分野に精通している人の話を聞くのは好きなんだよね。興味のある話に限るけれど。

色々な職人さんが集まってくれたので、缶詰や袋などのアルミ加工の製品も作れるようになったのは良かった。

俺一人じゃ思い付くだけで無理なことも、色々な分野の職人さんが集まればなんとかなるものだ。

アラバマ殿下には「職人たらし」って言われたけど、別に誑し込んではいない。

俺に出来ない事を出来る人に任せているだけなので、やっていることはアラバマ殿下と似たようなもんである。寧ろ殿下の方が誑し込んでると思うよ?

基本的に俺は投げっ放しだけど、殿下はちゃんとお仕事として割り振りできるから凄いよね~。真似したくても出来ないし面倒だからしないけど。

今のところ面倒な商人ギルドの方は全てアラバマ殿下のお陰で回避できている。

何だかんだで俺はこの世界でストレスフリーに好きな自由研究が出来ているので、ちらっと脳裏に掠める、もうあっちに戻らなくてもいっかな~なんてことまで考える始末であった。

いや、戻れる機会があれば戻る気でいるけどね。こっちの世界も捨て難いので悩ましいところだ。うむむむ。

「お、おい? やっぱスゲェ吹っ掛けられたのか?」

「それとも、依頼された獲物があんま手に入らなかったとか?」

コソコソ話したり、黙り込んでいる俺たちに三人が心配そうに話しかけてきた。

そういう意味ではなく、申し訳なさで沈んでいるだけなんだけれど。

「まぁそう落ち込むなって! コレから五日間はフィーバータイムだからな!」

「じゃんじゃん稼ごうぜ!」

通常より多く設定された依頼料なので、冒険者も様々な獲物を狩っている。

引き取り所では大勢の冒険者が、我も我もと獲物の査定をしているところだった。

「シエラ殿下とカシム殿下に別れて依頼を受けてっけどよ。お前さんらもシエラ殿下陣営なんだろ?」

「そうだな」

「他の冒険者の話によりゃぁ、カシム殿下側が有利っつー話だが、デザートデミドラゴンさえ狩れりゃぁ一発逆転も夢じゃねぇんだよなぁ」

「へ、へぇ……」

「勝者側の陣営の場合、更に依頼料に加算される仕組みってのは良い考えだが、毎回カシム殿下側が勝っちゃ面白くねぇもんな」

「地中に潜ってる獲物は滅多に見つからねぇし、逃げ足も速くておいそれと狩れねぇ大物だがな。またあの肉を食ってみてぇよなぁ~!」

だから頑張らなければと、グロリアストリオは俺たちに発破をかけた。

そうなんだよねぇ。今回のお肉狩りの依頼って、夫々の陣営に分かれて依頼を熟すようになってて、一種のキノコタケノコ戦争みたいなことになっているのだ。

好きな陣営の依頼を受けて、多い方が勝利みたいな感じかな?

例えるならキノコがシエラ王女様で、タケノコがカメムシ王子だろう。

ただのお祭りイベントだけど、勝者側にはご褒美があるし、狩りまくられたお肉は仔竜のご飯にもなる。そして余ったお肉は後夜祭で振る舞われることになっていた。

この季節は飛竜の孵化もあって一年で一番盛り上がるお祭りなのだそうで。

以前はただの収穫祭みたいなお祭りだったらしいけれど、シエラ王女様とカメムシ王子が第一と第二の竜騎士隊の隊長になってから新たに始まった、冒険者を巻き込んだ代理戦争のように変化したそうだ。

そうでなくとも飛竜の孵化の時期は、みんなが楽しみにしているイベントみたいだけれどね。

あちこちで屋台を出す話で盛り上がってるし、実は俺も誘われている。

「なぁ。どうする?」

「獲得数は毎日貼り出されることになってるから、負けそうになったら出してもいいかもしれないわねぇ」

「王族が関わっているから、支払いも良さそうだし悪い話じゃねぇよな?」

「今のところカシム側が勝ってるようだしな」

「最終日に一発逆転させちゃう?」

「その方がショックも大きいっすよね?」

みんな悪い顔してるねぇ。

仔竜に贅沢させたらダメだって言ってたのを忘れちゃったのかな?

とはいえ、参加者に振る舞うお肉になるなら話は別だけどね。

デミドラゴンを二体獲得しているだけに、みんな気持ちに余裕があるのだろう。

だが取りあえず出してもいい獲物を教えて欲しい。

俺の参加は今日だけなので、明日からはイツメンでお肉狩りをするんだからそれを忘れないようにね!