軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第110話 番外編4 役割分担の重要性

優秀な冒険者はフィジカル面だけでなく、知識も豊富でなければならない。

ソロで活動する者はごく僅かであり、基本的にパーティを組む方がメリットがあり生存率を上げる。パーティを組むことによって、各々の得意とすることや苦手なことを補うことが目的だ。

宿の確保や道中の食事の用意、情報収集に依頼の手続き等々―――これら全てを一人でするのは大変な労力を要する。

気の合う仲間同士でパーティを組んでいても、何れ破綻するのはそういった分担が出来ない為だろう。

いくら能力に個人差があるとしても、誰かに負担をかけて誰かが楽をする。そういう構造になった途端、パーティを組む意味がなくなるからだ。

本日は気紛れバーを開店しているので、大人組がお客さんとなっている。

明日は休養日だからね。俺も遅くまで起きててもいいのだ。(実は昼寝したから)

俺自身ダンジョンには殆ど行かないから、休養日といってもあんまり関係ないんだけどね。

そして今日は、冒険者ギルドの職員さんの教育の進捗について語っていたところ、妙な感じで話が変化していた。

「ソロの冒険者って凄いとは思うけど、一人で何でもできる人って、自分以外の人間を見下してるところがあるって思ってたのよねぇ」

「見下しているというより、見下すようになるんだろうがな」

「ディエゴも最初は、魔塔の連中と組んでたのよねぇ」

「止むを得ずだがな……」

魔術師じゃなくて魔法使いだからかな?

パーティに加えてくれる人がいなかったんだそうだ。

ダンジョンでしか手に入らないアイテムを集めなきゃいけない研究をしていたのもあって、仕方なく組んでいたんだってさ。

俺はバーテンダーとして聞き役に回って、静かにツマミや酒を出す。枝豆が減らないんだよねぇ。今日は枝豆をバター醤油炒めにしてみた。

「奴らを見限ってソロになった理由ってのが、面倒事を全部押し付けられてたからだってんだから、お察しって感じだよな」

「ソロになっていたことにも、事情があるって知って良かったわよね」

アマンダ姉さんとギガンが、ディエゴと組むことになった切っ掛けを語っている。

別に教えてもらおうとしたのではなく、酒が入ってしんみりしたからだろう。

ちょっとした愚痴がポロリと零れていた。

主にディエゴだけど。珍しいね。

でもたまにはこうして愚痴を吐き出す方が心が健康になるよ。

「奴らはやりたいことしかやらんからな。役割というのが全く判っていない」

やりたくなくてもしなければならないことがある。それはパーティを組んでいる以上、必然ともいえた。

だがそれを放棄して、出来る奴がやれば良いとディエゴに押し付けていたらしい。

例のアースドラゴン討伐の件に関してだろう。そして美味しいところだけ掠め取ろうとしたので、腹が立って決別したというのが主な理由だそうだ。

やりたいことだけをするというのは趣味の範囲であって、仕事となるとしなければならないことになる。

詳しくは割愛するけど、それらから逃れるべくディエゴは魔塔の連中を見限った。

俺も就職して最初にぶち当たったのが、ソレだった。

給料をもらっている以上、働かなければならない。でも最初は誰だって完ぺきにこなせる訳ではなく、少しずつできるようになっていくものだ。

だけど俺の就職先は、出来ない人間には無理をさせず、出来る人間に仕事を振り分けるような職場だった。

出来ないことをさも当然として受け入れ、努力もせず楽な方へ流れ、出来る人間に押し付けてくる連中しかいなかったのである。

だから一年も経たずに辞めたんだけどね!

社会不適合者(仕事が長続きしない)と言われようが、他人に利用されてそいつらの給料分まで働かされるなんて冗談じゃなかったんだもん。仕方がないよね。

「君が辞めて他の人に迷惑が掛かると思わないのか?」なんて脅しを新入社員にすんな。

心を病んで辞めていく人にすら同じことを言い放ってたからな~あのクソ上司。

注意を受けた新人の言い分(言い方がキツイ&もっと優しくしてほしい)を聞き入れて、指導している先輩にはパワハラで訴えられると脅していたし。

やるべき仕事が出来ないことを注意されて、反省するどころかなんで被害者面してんだろうと思ったけど。(傍から聞いていても真っ当な指導内容だった)

後々知ったことだけど、その仕事の出来ないヤツは人事部長の親戚だったらしく、流石に鈍い俺でも察してしまった。通りで周りがおもねる訳だよ。

その新入社員の指導を受け持っていた真面目な先輩の手が、細かく震えていることに気付いて俺はヤバいと感じた。

アレは怒りではなくストレスによる症状だと気付いて、上司にも周りにも気を付けて欲しいって言ったのに、誰も配慮しなかった。

指導する立場なんだから、当たり前だろうって言ってたよ。酷いよね。

同僚にも上司にも恵まれないと最悪な結末を迎えるんだなと悟った俺は、真面目な先輩が病気を理由に辞めたのを切っ掛けに退職を決意した。

見切りは早い方が良い。

遣り甲斐搾取という、変な洗脳をされる前に逃げたのである。

アントネストのギルマスとサブマスも苦労していたし、あの人たちにもストレスを緩和するような食材の差し入れをしておこう。

今のところローヤルゼリーが有力なので、こっそり渡しておくことにする。

少しでも若返ってくれと願いを籠めて。

そんなこんなで。

どの世界も似たような状況というものがあるんだなぁと、ディエゴたちの話を聞きながらしみじみと己の過去を振り返った。

ただディエゴの場合は俺と違って、周りがあたおか天才集団で仕事と趣味を混同しているような連中なんだけどね。

やるべきことをしないという意味では同じだから、似たような状況に陥っていたようだ。魔塔を見限った経緯が理解できるよ。

なんにしても魔塔の連中というのは、ろくでもない連中らしい。

まともな人もいるんだろうけど、おかしな連中が目立っているんだろう。

目を付けられないようにと、ディエゴが心配するのも何となく理解できた。

ディエゴもサイコパスってるけど、基本脳筋寄りだもんねー。

ホワイトサイコパスとかマイルドサイコパスって言うより《《ポンコパス》》だし。(ポンコツなサイコパスの意味。俺が勝手に作った造語である)

何でも一人で出来る天才肌ではあるけど、サボリ魔とはいえ自分に与えられた仕事は確り熟すもんな。

その仕事というのが主に俺の面倒なのだが、テオやチェリッシュにも色々教えている。主にフィジカル面ばかり重要視されがちな冒険者だけど、知識がないといくら強くなっても窮地に陥るからな。

生存率を上げるためには知識は重要なのだ。

この前なんか、似たような薬草を二人の前に置いて、どっちが毒草か当てるゲームをしながら教えていた。

チェリッシュは見事に引っ掛かって、毒草(腹下し)を口にして悶えてたよ……。

それを見たテオは真っ青になって、人の振り見て我が振り直せ状態になった。

身を以って学ぶいい機会になったと思われ。

あの二人は大人組に聞けば簡単に教えてもらえると高を括っていたところがある。聞くだけで覚えようとしないから、強硬手段に出たらしいよ。

だから俺も真面目に、この世界のことを勉強しようと思った出来事である。

興味がないからって見聞きしないと、とんでもないことになりそうだし。

戦い方はアマンダ姉さんやギガンの役割で、知識不足を補う役目はディエゴ。

だから俺はみんなの体調管理と、強い身体を養う栄養面を担っている。

若者二人は成長こそが役割なので、足を引っ張らずに頼れる存在になるべく頑張っているのだ。

「ところで、プロテインの開発はどうなったんだ?」

相変わらずクソ不味いプロテインを飲まされているテオを見て、ギガンが俺に訊ねた。

「ん~かいはつちゅう?」

だって一番味を誤魔化せるカカオが手に入らないのだ。

ココアやチョコ味が一番人気あるしねぇ。

コーヒーやフルーツ味のフレーバーも作ってみたけどいまいちだった。

バニラ味は匂いだけ甘くて気持ち悪くなったそうだ。

「アタシ、それ飲むのイヤだからね!」

「そうだね」

チェリッシュはニキビができやすいから、プロテインは体質的に合わないんだよね。ニキビの元となる毛穴詰まりが起こりやすく、プロテインは皮脂分泌を促進するから飲ませないようにしている。

女の子だからそこは俺だって気を遣うのだ。

オデコのニキビを気にしていたのも、試しに飲ませた所為でもある。

「カカオがほしーなー」

カカオの栽培条件は、年間の平均気温が27℃、年間の降雨量が最低1000㎜以上なければならない。それにこの世界では希少性の高い薬という扱いなので、滅多に市場に出回らないのだ。

俺の世界でも昔は不老長寿の薬として王侯貴族しか口にできなかったそうなので、この世界でも同じ貴重品らしいよ。(コーヒーは何故か安く手に入る)

甘味を抑えれば確かに薬としての効能はあるしね。

アントネストのダンジョンでも、流石にカカオはドロップしなかった。

バニラはあるのにねー。

「リオンはカカオが欲しいのか?」

「うん」

「ならば、南の方に行けば手に入るかもしれないぞ?」

「ほんと?」

ディエゴの話によって、俺は南の地域に興味が湧いた。

暖かいところで栽培されるカカオがどうしても欲しい―――ような気がしたのだ。

カカオポリフェノールの効果が脳裏に浮かぶ。

過剰摂取は良くないけど、適度であれば抗酸化作用による脳卒中や心臓病のリスク軽減、血行が良くなることで基礎代謝が向上して疲労回復にも効果があるし、それらを含めて老化防止にもなる。ここが不老長寿の薬とされる所以だろう。

うむ。やはりカカオは必要だ。

おいしくてつよくなるパーティにするためには、是非ともカカオを手に入れなければならない。

だから南(砂漠地帯)に行くことに反対しなかった。

途中で発見できるかもしれないしね。

そうして俺は今日も自分の与えられた役割を全うするべく、せっせとみんなにおいしくてつよくなる食事を作る。

たまに趣味や実験に走るけど、それもみんなのためなので許して欲しい。ひいては俺のためでもあるけれど。

段々フィジカルお化けみたくなってるけど、別に問題はない。望むところである。

このパーティに保護されたことで、単純に美味しい食事を作ればいいのではなく、ちゃんと身体に良い食べ物を考えながら作るようになった。

これも俺の成長の証だろう。

以前は協調性のなさを指摘されることがあったけど、この世界に来て大分改善されたように思うし。パーティメンバーがみんな良い人ばかりだからだろうけど。

パーティで活動している以上、やっぱ役割分担って大事だよね。

だから漫然と与えられた仕事だけを熟すのではなく、更に技術を磨いて行こうと俺は決意するのであった。

俺の料理の腕を向上させてくれる切っ掛けとなった、美味しい料理のレシピノートを譲ってくれたぶどうの樹の奥さんにも感謝をしなければ。

お礼として、定期的に旅先で手に入れた珍しい物を贈っておこう。

シュテルさんには何時も利用されている気がするけど、ルンペル商会経由で届けてもらえばいいもんね。(無償で)

こっちだって利用できるときは利用してやればいいのだ。ふはははは!