軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

公爵夫妻の攻略法 其の二

ブラッドさんが正式にルーカスの側近復帰&アロガンシア公爵夫妻への対策要員加入――サイラス君が速攻で許可を取りに行ってくれました!――となり。

とりあえず、今後の方針と言うか、どういった方向でアロガンシア公爵夫妻を締め上げるかを話し合うことになりました。

ブラッドさんは『家が没落したり、本人達が死ななければいい』と言っているので、かなり心強い。

多少の悪評と言うか、醜聞と言うか、まあ、その、社交界で噂になることは仕方ないんじゃないかなー? くらいのことを言ってくれているので、かなり余裕ができたと思う。

だって、キヴェラ王って愛妻家じゃん?

ルーカスは弟王子達をめっちゃ可愛がってるじゃん……?

それだけではない。……どう考えても、第二王子殿下と側室様には迷惑がかかるのよ。

特に気の毒なのが側室様で、『自分の兄夫婦が迷惑をかけて、皆様に申し訳ない……!』という心境で落ち込んでいるらしい。

勿論、王妃様ともう一人の側室様が慰めてはいるんだけど、前回の一件は端から見ると、実家を任せた兄が妻を制御できていないようなもの。

しかも、あの公爵夫婦の役割――王家の血を残す、というやつですね!――を、知らない人達もいるので、そういった人達から見ると、『第二王子殿下は大丈夫か?』という疑問も湧く。

今はまだ、こそこそと噂されている程度らしいけど、このまま放置すると第二王子殿下の派閥の皆様が殺気立つ可能性・大。

そして、追加で今回の一件なわけですよ! そりゃ、キヴェラ王も覚悟を決めるわな。

私が歓迎されるわけですね!

前回の一件の噂も落ち着かないうちに、これですからね!

……。

さりげに、キヴェラ王も不幸の星の下に生まれたりしてない?

本人は自国どころか、各国の王達からも警戒される才覚をお持ちですが、周囲の人間達のせいで苦労しまくってないかい?

……多分、キヴェラ王でなければ、キヴェラは今頃、潰れているんだろうな。

冗談抜きにそう思う、今日この頃。国の存続って大変だ。

で。

キヴェラ王って苦労人なのねー、と思いつつ、今後の方針を話し合いたいと思います!

生憎と、私にはそんなシリアスストーリーは関係ないので、今回のミッションは『アロガンシア公爵夫妻を黙らせろ』(意訳)オンリー。

正直、『失・せ・ろ♡』という心境ですが、何か?

はは、私に人の心がない? 相手は一応、貴族としては最高位?

適任ではないか! 奴らには常識がないが、私には柵がない!

我、異世界人ぞ? 魔導師という名の化け物ぞ?

『ついうっかり』遣り過ぎても、最高権力者が握り潰してくれますわー♪

「ブラッドさん、ブラッドさん」

「何かな? 魔導師殿」

「一応、聞いておきますけど。ブラッドさん的には『どうなるのが理想』?」

遣り方は私に一任されているとはいえ、折角、まともな息子さんがいらっしゃるのだ。

公爵の仕事を肩代わりしてもらうことになる(意訳)可能性もゼロではないので、一番の被害者、もとい一番影響を受けそうなブラッドさんの意見を聞いておきたかった。

「うーん……あくまでも理想、として聞いて欲しいんだけど」

ブラッドさんは一瞬、困ったような表情で首を傾げ、考えを纏めている模様。

さすがにルーカス達も下手な言葉は言えないと判っているらしく、若干、すまなそうな表情だ。

で す よ ね 。

どう転んでも、ブラッドさんには何らかの形で飛び火する。弟さんのためにも、知らんぷりはできまい。

すでに家を出ているのに気の毒だけど、公爵夫妻を黙らせる以上、ブラッドさんと弟さんの負担になることは確実だ。

弟さんは第二王子殿下の側近としての仕事もあるから、公爵家の維持はブラッドさんの負担が大きくなるだろう。

そこに加えて、ルーカスの側近に復帰したことで、頭の足りない貴族達から何かしら言われると予想。

やっかみなのか、野次馬根性的な心境なのかは判らないが、絶対に、一定数は煩い羽虫(意訳)が湧くのであ~る!

って言うか、私もそういった輩を散々撃退してるから。

経験者は語るってやつですよ! なお、魔王様の教育方針は『撃退』一択。

「さっきも言ったけれど、できるだけ『アロガンシア公爵家』に醜聞を持たせたくないんだ。望むのはそれだけど、難しいことも理解してる」

難しいよね、ごめん……と小さく呟き、ブラッドさんは小さく私に謝った。

「以前の一件もあって、弟は第二王子殿下に付いていて貰いたいんだ。私もルーカス様の側近に復帰すると言っておいてなんだけど、暫くは公爵家の仕事を優先することになると思う」

「気にするな、ブラッド。王家としても、アロガンシア公爵家が傾くのは困るんだ。寧ろ、俺が命じようと思っている」

「……ありがとうございます、ルーカス様」

ルーカスの言葉に、ブラッドさんは微笑んで一礼した。

……ルーカス、こういった気遣いができるから、慕ってくれる配下が多いのかも。

部下なのだから、仕えて当然! みたいな考え方をする王族や貴族って、一定数居るからね。

主と配下の微笑ましい遣り取りにほっこりしていると、ブラッドさんが遠慮がちに口を開く。

「母は……未だに『強国キヴェラの王族』という意識が強いから、割と好き勝手に振る舞うところがある。だけど、それを甘受してきてしまった貴族達にも問題があると私は思う」

「逆らわなかった、と?」

「うん。身分的にも、王族しか叱れないからね。だから、反発に慣れていないと言うか……気に食わなくても、手を出すまでいかない可能性があるんだ」

なるほど。私が『向こうから手を出してもらう』と言ったから、そこが問題だと、ブラッドさんは思っているらしい。

「あ~……反発してきた奴を脅威に感じるとか、そういった意味で?」

「そんな感じだと思う。自分の優位性を維持できないと悟ると言うか……意外だけど、手を出すことはなかった気がするんだ。言葉はきついんだけどね」

「なるほど。確かに、反撃オンリーの私だと、手を出してくれなさそう」

すでに揉めたものね、私。公爵夫人に、危険人物認定されていてもおかしくはない。

公爵夫人、ルーカスに食って掛かる気の強さはあれど、意外と打たれ弱い面もあるらしい。

へぇ……つまり、『少しの工夫が必要』ってことですな。

追加情報として、『格下の人達は、自分に意見できないと思っている節がある』と。

まあ、キヴェラ内だったらそうなるだろうな。キヴェラ王の妹姫だし、立場的にも強かろう。

「判りやすい問題行動――これは暴力行為などに限定しますね。そういったことは起こさないと見た方が良いですか?」

「無理だと思う。身分や言葉で圧倒するのが常だから、よっぽど理性が利かないような状況でもない限り、手は出してこないと思った方がいいね」

ほほぅ……『理性が利かないような状況』ね。

ああ、そうだ。一つだけブラッドさんに確認しておくことがあるんだった。

「ブラッドさん、アロガンシア公爵家内の使用人達は掌握してます?」

「え?」

「人目があると、理性が利かない問題行動を起こしてくれなさそうなんで……公爵家内で締め上げようかと」

目撃者ゼロを狙おうと思うのですよ。それには公爵家の使用人一同の協力が必要だ。

公爵夫人はともかく、公爵の方は慕っている人とか居そう。もしくは、家に忠誠を誓っている人とか。

私だとどう頑張っても無理だけど、ブラッドさんならば、使用人達を協力者にできないだろうか。

「新しく雇われていなければ、多分、大丈夫だと思うよ」

「お、可能です?」

「そもそも、この案件は家の醜聞や処罰を回避するためのものなんだ。陛下からのお達しということも含め、こちら側にできると思う」

よっしゃー! これで私が何をやらかそうが、余計な醜聞は防げそう♪

「……アンタ、何かを思いつきましたね?」

「勿論♪ ……いや、本人達に恥ずかしい思いをさせるなら、周囲の目がある方がいいんだけどさ? 多分、それだと手を出すことまでしてくれないと思うんだよね」

「まあ……今の話を聞いていると、そんな感じですね」

「だから、私個人に喧嘩を売ってもらおうと思うんだ。その前準備はもうできてる……って言うか、前回の夜会があるから、大丈夫」

意味が判らないのか、サイラス君だけでなく、私以外の全員が困惑気味。

うん、これは男には判らないかもしれないね。だけど、多分、公爵夫人は乗ってくる。

「公爵家という『自分のテリトリー内』で、徹底的に格下扱いされたら、怒りそうよね?」

「……。言いたいことは判るが、お前が相手では警戒されるだけじゃないのか?」

ルーカスの疑問、ごもっとも!

しかし、それは『魔導師』が警戒されるのであり、『見たこともない令嬢』ならば、まず間違いなく警戒心ゼロだろう。

だって、王族でもない限り、公爵夫人の方が強いから。

身分的にも、権力的にも、普通ならば負けはしない。

「ってことで! おめかしするので、ブラッドさんは公爵家までエスコートしてくださいな♪ あ、顔を認識し辛くなる魔道具を使うし、髪と目の色も変えますから、多分、私だと気付かれない」

私の唐突なお願いに、ブラッドさんは僅かに目を見開き。

「それは……楽しいことになりそうだね」

それはそれは楽しそうな笑みを浮かべた。おお、遣る気だ!

ふふ……自分のテリトリー内に、息子が見知らぬ令嬢を連れて来たら……女主人たる公爵夫人はどんな態度を取るだろうね~?

私をブラッドさんの恋人か何かと勘違いしてくれれば、始まると思うんだ……異世界版・嫁(仮)姑戦争が!

公爵夫人の性格上、絶対に、マウント取りに来ると思うんだ。そこで徹底的に貶されれば、理性の糸が『ぷつっ』と切れてくれるかもしれないじゃないか。

「ブラッド……楽しそうにしているが、一応、お前の親なんだぞ」

「嫌ですね、ルーカス様。私は魔導師殿と今後も良好な関係を築くべく、両親に紹介するだけですよ?」

「そうそう! ただ、言葉がちょっと足りなくて、公爵夫妻が勘違いする可能性があるかもね?」

「はは! 折角だから、装飾品でも贈ろうかな」

意味が完璧に通じているらしいブラッドさんは、非常にノリノリである。

この分なら、当日も理想的な協力者を演じてくれることだろう。……ちょっと、楽しみ。

……おい、残りの野郎ども? ドン引きするでない! これはお仕事!