軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第74話 貫かれた誇り

審判の号令が鳴り響いた 刹那(せつな) 、アルスは 地(ち) を 蹴(け) った。 二刀(にとう) の 剣(けん) が 左右(さゆう) から 唸(うな) りを 上(あ) げ、 一直線(いっちょくせん) に 俺(おれ) へと 迫(せま) る。

速(はや) い。

視界(しかい) が 震(ふる) える。 咄嗟(とっさ) にアストラルフレイムを 構(かま) え、 炎(ほのお) を 宿(やど) した 刃(やいば) で 受(う) け 止(と) めた。

甲高(かんだか) い 金属音(きんぞくおん) が 炸裂(さくれつ) する。 衝撃(しょうげき) が 両腕(りょううで) を 貫(つらぬ) き、 骨(ほね) の 奥(おく) まで 震(ふる) わせた。

次(つぎ) の 瞬間(しゅんかん) 、もう 一本(いっぽん) の 剣(けん) が 肩口(かたぐち) を 掠(かす) める。

熱(あつ) い。

一拍(いっぱく) 遅(おく) れて 激痛(げきつう) が 走(はし) り、 肩(かた) から 真(ま) っ 赤(か) な 血(ち) が 溢(あふ) れ 出(だ) した。 制服(せいふく) の 布地(ぬのじ) がじわりと 濃(こ) く 染(そ) まる。

「く……っ! 」

膝(ひざ) が 砂(すな) に 落(お) ちる。 荒(あら) い 呼吸(こきゅう) が 喉(のど) を 焼(や) く。 鉄(てつ) の 匂(にお) いが 鼻腔(びこう) を 刺(さ) した。

アルスは俺を 見下(みお) ろし、 余裕(よゆう) の 笑(え) みを 浮(う) かべる。

「どうした? カイルやボーガン、ルシアンを 倒(たお) した 英雄(えいゆう) の 力(ちから) はこんなものか? 」

「まだだ! 」

地面(じめん) を 踏(ふ) みしめ、 立(た) ち 上(あ) がる。 肩(かた) から 滴(したた) る 血(ち) が 腕(うで) を 伝(つた) い、 指先(ゆびさき) から 落(お) ちる。

剣(けん) がぶつかり 合(あ) うたび、 火花(ひばな) が 散(ち) る。アルスの 二刀(にとう) は 休(やす) むことなく 襲(おそ) いかかり、俺はアストラルフレイムで 必死(ひっし) に 受(う) け 流(なが) す。

汗(あせ) が 額(ひたい) から 目(め) に 落(お) ちる。 制服(せいふく) が 汗(あせ) を 吸(す) い、 重(おも) くなり、 身体(からだ) に 張(は) り 付(つ) く。 動(うご) きが 鈍(にぶ) るのがはっきりとわかった。

横薙(よこな) ぎの 一撃(いちげき) を 弾(はじ) いた 瞬間(しゅんかん) 、俺は 後(うし) ろへ 跳(と) び 退(の) く。

荒(あら) い 呼吸(こきゅう) の 合間(あいま) 、 制服(せいふく) の 襟元(えりもと) に 指(ゆび) をかけた。 汗(あせ) で 湿(しめ) った 布(ぬの) が 肌(はだ) に 吸(す) いつき、 引(ひ) き 剥(は) がすとき、ぬるりとした 感触(かんしょく) が 残(のこ) る。

傷(きず) 口(ぐち) に 布(ぬの) が 擦(こす) れ、 鈍(にぶ) い 痛(いた) みが 走(はし) った。

それでも 構(かま) わず、 力任(ちからまか) せに 制服(せいふく) を 脱(ぬ) ぎ 捨(す) てる。

布(ぬの) が 砂(すな) に 落(お) ち、 鈍(にぶ) い 音(おと) を 立(た) てた。

露(あら) わになった 上半身(じょうはんしん) を 風(かぜ) が 撫(な) でる。だが 次(つぎ) の 瞬間(しゅんかん) には、 熱(ねつ) を 帯(お) びた 汗(あせ) が 胸(むね) から 腹(はら) へと 流(なが) れ 落(お) ちた。 肩(かた) の 傷(きず) からも 血(ち) が 伝(つた) い、 鎖骨(さこつ) を 越(こ) えて 滴(したた) る。

呼吸(こきゅう) が 白(しろ) く 荒(あら) れる。

「ほう? 面白(おもしろ) い。だが、 服(ふく) を 脱(ぬ) いだところで、この 俺様(おれさま) に 勝(か) てると 思(おも) うなよ」

アルスの 笑(え) みが 深(ふか) まる。

胸(むね) の 奥(おく) で 何(なに) かが 弾(はじ) けた。

「うおおおおおっ! 」

叫(さけ) びとともに 地(ち) を 蹴(け) り、 跳(と) び 上(あ) がる。アストラルフレイムを 大(おお) きく 振(ふ) り 上(あ) げ、 全力(ぜんりょく) で 叩(たた) きつけた。

轟音(ごうおん) 。

アルスは 受(う) け 止(と) めきれず、 場外(じょうがい) ぎりぎりまで 吹(ふ) き 飛(と) ぶ。 足(あし) を 踏(ふ) ん 張(ば) り、 辛(かろ) うじて 踏(と) どまった。

「ちっ! 」

舌打(したう) ち。

直後(ちょくご) 、 二刀(にとう) が 横薙(よこな) ぎに 迫(せま) る。

衝撃(しょうげき) が 腕(うで) を 痺(しび) れさせ、 汗(あせ) が 飛(と) び 散(ち) る。 剣(けん) と 剣(けん) が 擦(こす) れ 合(あ) い、 火花(ひばな) が 弾(はじ) けた。

「はぁっ……! はぁっ……! 」

肺(はい) が 空気(くうき) を 拒(こば) む。 胸(むね) が 焼(や) けるように 痛(いた) い。

それでも、 剣(けん) を 握(にぎ) る 手(て) だけは 離(はな) さない。

( 強(つよ) い……! )

汗(あせ) が 顎(あご) から 滴(したた) り、 地面(じめん) に 小(ちい) さな 水溜(みずたま) りを 作(つく) る。

俺は 無理(むり) やり 呼吸(こきゅう) を 整(ととの) え、 再(ふたた) び 突進(とっしん) した。アルスも 同時(どうじ) に 踏(ふ) み 込(こ) む。

激突(げきとつ) 。

耳鳴(みみな) りがするほどの 衝突音(しょうとつおん) 。俺の 剣(けん) が、アルスの 一本(いっぽん) を 弾(はじ) き 飛(と) ばす。

(やった……か)

だが、その 安堵(あんど) は 一瞬(いっしゅん) だった。

視界(しかい) の 端(はし) で、 鋭(するど) い 光(ひかり) が 閃(ひらめ) く。

次(つぎ) の 瞬間(しゅんかん) 、 何(なに) かが 胸(むね) を 深(ふか) く 抉(えぐ) った。

衝撃(しょうげき) 。 鈍(にぶ) く、 重(おも) く、 逃(に) げ 場(ば) のない 感触(かんしょく) 。

音(おと) が 止(と) まる。

ゆっくりと 視線(しせん) を 落(お) とす。

アルスのもう 一本(いっぽん) の 剣(けん) が、俺の 胸(むね) に深々(ふかぶか)と 突(つ) き 刺(さ) さっていた。

刃(やいば) が 鼓動(こどう) に 合(あ) わせて 震(ふる) える。

温(あたた) かい 血(ち) が 内側(うちがわ) から 溢(あふ) れ 出(だ) し、 腹(はら) を 伝(つた) い、 脚(あし) を 濡(ぬ) らし、 砂(すな) へと 落(お) ちていく。

鉄(てつ) の 匂(にお) いが 濃(こ) くなる。

アルスは 笑(わら) いながら 剣(けん) を 引(ひ) き 抜(ぬ) いた。ずるり、と 肉(にく) を 裂(さ) く 嫌(いや) な 感触(かんしょく) 。

刃先(きっさき) から 赤(あか) い 血(ち) が 滴(したた) る。それが 自分(じぶん) のものだと 理解(りかい) するのに、わずかな 時間(じかん) がかかった。

「が……はっ! 」

口(くち) から 血(ち) が 溢(あふ) れる。 鉄(てつ) の 味(あじ) が 舌(した) に 広(ひろ) がった。

足(あし) から 力(ちから) が 抜(ぬ) ける。

世界(せかい) が 傾(かたむ) き、 砂(すな) の 冷(つめ) たさが 頬(ほお) に 触(ふ) れた。

遠(とお) くで、 審判(しんぱん) が 数(かぞ) え 始(はじ) める 声(こえ) 。

一。

二。

三。

鼓動(こどう) が、 弱(よわ) くなる。

視界(しかい) が 滲(にじ) み、 空(そら) が 白(しろ) く 揺(ゆ) れる。

それでも、 指先(ゆびさき) だけが、わずかに 砂(すな) を 掴(つか) もうとしていた。