軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編 守る者

―フォロンダ領主視点―

「旦那様、表情がやばいです。目が死んでいます」

馬車の中。

これから王弟に会うのかと思っていると、目の前に座っているアマリから声が掛かる。

視線を向けると、嫌そうな表情で私を見ていた。

「アマリ。君は私のメイドだよね?」

彼女のその態度に、ついため息を吐きながら質問をしてしまう。

あぁ、失敗した。

「当然の事をなぜ今更? 頭、大丈夫ですか?」

やっぱり、こうなるよな。

それにしても、いつも思うんだが。

「だから、その態度! メイドとしてどうなんだ?」

「……失礼いたしました。旦那様が心配のあまり言葉が過ぎました」

その間が気になる。

「はぁ」

「本当ですよ? そんな事より、旦那様。周りを嗅ぎまわっていたネズミ達ですが、全員の裏が取れました。やはり教会が旦那様に目を付けたようです。ネズミを処理するのは教会に隙を見せる事になるので、今はまだ泳がせています。ですが、いずれ役目を終えて消えるでしょう。その後ですが殺しますか? 処理しますか? 処分しますか?」

「アマリ、結果が全て同じような気がするんだが」

殺すも処理も処分も同じだろう。

「いい加減、ちょろちょろと鬱陶しいです。それに屋敷内の情報を持っているネズミですから、消し去った方が良いかと思いまして」

「まぁ、そうだな。利用できるような情報は見せていないが、もしもと言う事があるからな。処理しようか」

「はい。あの屑どもは、綺麗さっぱり消し去りますね」

にこやかに言うアマリに、ため息が出る。

今日のアマリは、ちょっと機嫌が悪い様だ。

いつも以上に毒が凄い。

彼女の機嫌を悪くするような事が、あったかな?

「そういえば今日の朝、私の命を狙った者が屋敷内に出たんだったな」

「ふふっ」

あぁ、それで機嫌が悪いのか。

屋敷内に入られたのは、久々だったからな。

警備に穴があったのか。

もしくは、誰かが手引きしたのか。

まぁ、執事長に任せておけばその辺りは大丈夫だろう。

そういえば、襲って来た者はどうなったんだろう?

「あれは?」

「自白剤を使用して尋問しています。全ての情報を聞き出すのは、もうしばらくかかるでしょう。ただ、あれを寄こした者は、これから会いに行く者の取り巻きのようです」

「ふ~ん。これから会いにね」

つまり王弟が今回の事に関わっている可能性があるという事か。

あ~、会いに行くのが本当に面倒くさい。

「旦那様、さっきより表情が死んでいます」

「大丈夫。着いたら気を引き締めるから」

ここ最近、教会の動きが活発になったお陰で疲れているんだよな。

なのに、急な王弟からの呼び出し。

本当に、面倒くさい。

自分で王弟の下に付くと決めたが、予定を崩されると苛立ちしかないな。

そろそろ切り捨てたいが、替わりの隠れ蓑が無いからな。

「そろそろ、切りませんか?」

「んっ?」

アマリを見ると、にこりと笑みを浮かべる。

そういえば彼女はあれが、大っ嫌いだったな。

「切るなら、処理はお任せください」

「駄目だぞ。まだあれには、王弟という地位にいてもらわないと」

現王に不満を持つ者を集めるには、王弟が最適だ。

あれは、今もまだ王になる事を諦めてはいない。

うまく隠しているつもりのようだが、隠しきれていない。

だから、現王に不満を持つ貴族達が集まっている。

現王を引きずり落とし、王弟を王にするために。

まぁ、本当の目的は自分達の地位を盤石にして権力を手に入れ甘い汁を吸うためだが。

今の王では、それは無理だからな。

あの王弟なら、言葉巧みに幾らでも操れるだろう。

少し利口で、とても愚かだから。

王には子供が3人いると言われているが、その内の2人の王子は駄目だ。

傀儡にするにも、ある程度は利口でなければならない。

が、2人の王子は残念ながら、少しも利口ではないからな。

それを分かっている貴族達は、王子達に近付きもしない。

傍にいるのは、本当に残念な者達ばかりだ。

そういえば、第1王子が送り込んできた間者も、随分と間抜けだったよな。

処分する前に、酒に酔って階段から落ちて亡くなるんだから。

「まだあれに利用価値はありますか?」

「あぁ、まだあるな。隠れ蓑にもなってくれているしな」

王弟の権力を、利用しようとする貴族達は多い。

彼等は単純なので、ある意味とても扱いやすい。

ほんの少し甘い情報を流すだけで、犯罪と知りながらも手を出してくれる。

もしバレても、王弟が守ってくれると思っているからな。

あれにそんな力は無いというのに。

脇が甘いというか、先を考える想像力が無いというか、抜けているというか。

まぁ、そのお陰で証拠もばっちり掴めるんだが。

権力を手にして甘い汁を吸おうとする者達や、王弟が守ってくれるだろうと簡単に犯罪に手を出す者達。

王弟と言う地位には、本当に色々な屑が集まってくる。

「あれを潰す時は、周りも一緒にだ」

残すと面倒になるからな。

「分かっています」

アマリが真剣な表情で頷く。

本当に、出来たメイドだよな。

ちょっと、切れると暴走気味になるけど。

コンコン。

あ~、着いてしまった。

本当に、面倒だ。

「旦那様。表情、表情」

「あぁ、そうだな」

一度目をつむって、深呼吸をする。

気持ちを切り替えて。

「よしっ。行こうか」

「その変化は、さすがですね。感心します」

アマリもたいがいだと思うけどな。

さっきまでは表情豊かだったのに、今では全く表情が読めない作り笑い。

この作り笑い、いつものアマリを知っている私としては、少し怖い。

馬車を下りると、王弟の傍に控えている者が頭を下げた。

名前は、アリーファ。

女性だけど、男性として王弟の傍にいる。

と言うか、王弟は気付いていないからな。

アリーファが女性だと。

ちなみに、彼女は王弟が殺したある男の妹だ。

こちら側に引き込んだ人物で、彼女の兄の事件は今も調査中。

どうも、王弟以外にも関わった者がいるようなんだよな。

それが誰なのか、未だに不明。

「お待ちしておりました」

「ありがとう。案内を頼む」

「はい」

少し前を歩くアリーファを見る。

やはり身長が私とそう変わらないみたいだ。

そのお陰で細身でも、男性だと誤魔化せているんだよな。

「あれが真実の輪と言うマジックアイテムを手に入れました。新しく来た貴族が献上した物です」

真実の輪か。

それは、嘘を見抜くマジックアイテムだな。

また厄介な物を手にしたな。

「ありがとう」

まぁ、とりあえず全力で対応しますか。

新しく取り巻きになった貴族を調べる必要もありそうだしな。