軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編 守る者2

―フォロンダ領主視点―

アリーファの案内で、豪華な扉の前まで来る。

部屋の中からは複数の気配を感じる。

どうやら、私は王弟とその取り巻き共に見定められるらしい。

まぁ、見定めるのは私ではなく真実の輪なのだろうが。

「こちらです」

「ありがとう」

アリーファに、にこやかに挨拶をすると彼女の頬がほんの少し引きつったのが見えた。

失礼な、渾身の作り笑いを披露したのに。

トントン。

「失礼します。フォロンダです」

「来たか、入れ」

歯切れの悪い耳ざわりな声が耳に届く。

何度聞いても、この声を好きになれないんだよな。

「王弟殿下、お久しぶりでございます」

王弟の前までゆっくり歩き、軽く頭を下げる。

その私の態度に、王弟の周りにいた屑……取り巻き達が少しざわつく。

何?

頭を下げる角度が甘い?

もっと深く下げろ?

はははっ、黙れ屑どもが。

「本当に久しぶりだな。なかなか王都に来ないから、心配したぞ。まぁ、オトルワ町は大変だったみたいだからな。はははっ」

私を馬鹿にしたような笑い方に、アリーファに見せた笑みを披露する。

「ご心配をおかけいたしました」

確かに、私の失態だ。

教会の問題と父の事業の失敗、継承問題と色々あり過ぎて、町の事が疎かになってしまった。

しかも私は、あの裏切り者にオトルワ町を任せてしまったんだからな。

「本日は、どのような用件で私をお呼びになったのでしょうか?」

この忙しい時に呼び出したんだ。

それなりの理由があって欲しいもんだな。

まぁ、王弟の手首にある真実の輪で、私の事を調べるのが目的だろうけど。

「実はな、私の周りの者達が少し心配しているんだよ。そなたが、私を裏切っているのではないかと。私が大丈夫と言っても、信じてくれない。だから、こうして顔合わせをしようと思ってな。そなたと話をすれば、その心配が杞憂だと分かるだろうと思ってな」

「少し心配」ね。

俺は今まで、この王弟のために色々と手を尽くしてきた。

まぁ実際は、そう見せかけてきただけで何もしてないけど。

いや、ちょっとは動いたか。

まぁ、それはどうでもいいんだが。

王弟は見事に騙され、周りの取り巻きより少し信頼されている度合いが大きい。

そしてその事を、良く思っていない者達がいる。

王弟の権力に群がり、甘い汁を吸おうとする屑……取り巻き達だ。

「心配ですか。では誓いましょう。私は、『王家の血を受け継ぐ王弟』を、裏切る事はありません」

私が言葉を言い終えると、部屋に緊張感が走る。

王弟もその取り巻き共も、全員の視線が真実の輪に向く。

本当に、取り繕うと言う事が苦手な連中だ。

「光らんぞ」

王弟の言葉に、真実の輪は嘘を見抜くと光るのだと分かった。

視線を、王弟の手首にある真実の輪に向ける。

しばらく様子を見るが、光る様子はない。

まぁ、そうだろうな。

私は嘘を、1つも言っていないのだから。

「大丈夫では無いか! フォロンダの誓いは嘘ではない!」

そう。

「王家の血を受け継ぐ王弟」を裏切ってはいない。

ただし、「王家の血を受け継いでいない目の前にいる王弟」は裏切っているが。

真実を言っているのだから、光るわけがない。

王家の血を持っているのは、この世でたった1人、王だけだ。

2人の王子も、王の子ではない。

そして彼は子を残せない。

だから、彼が死ねば王家の血は途絶える。

そう、彼が死ねば。

彼がいつ死ぬかは、教会の化け物次第。

彼を早く、その生から解放してあげたいものだ。

「しかし、奴は!」

王弟の権力を一番利用しているマッリガ伯爵が、私を睨み付ける。

「黙れ! この真実――」

「王弟殿下!」

見かけない顔だな。

奴が、新しく王弟の取り巻きになった貴族か?

いや、どこかで見た事があるような気がするな。

何処だ?

「フォロンダが、問題ない事は分かっていた事だ」

王弟の言葉に、取り巻き達の視線が私に向く。

あぁ、悔しそうだな。

そんな物に頼るから、本当の事が分からなくなるんだよ。

馬鹿だよな。

まぁ、あなた方と違って、私は全てを隠しますがね。

少し不思議そうな表情を作り、全員を見渡す。

それにしても、真実の輪を隠しておきたいなら、もっと上手くしてほしいものだ。

全員で、王弟の手首を見ていたら何かあると馬鹿でも気付くだろう。

「失礼ですが、王弟殿下の手首のそれに、何かあるのですか?」

全員で集中しているのに、気付かなかったでは違和感を覚える。

とはいえ、何も知らない風を装うなら突っ込み過ぎても駄目だ。

あぁ本当に、もっと上手くやって欲しいものだな。

「いえ、なんでもありません。こちらの話です」

新しい取り巻きは、少し要注意かもしれないな。

今までの取り巻き達より、冷静になるのが早い。

「そうですか」

「えぇ、そうだ。俺は、グリスミア公爵だ。これから宜しく頼むな」

「こちらこそ」

グリスミア公爵か。

あっ、思い出した。

教会の上層部に、グリスミア公爵家の者がいるんだった。

奴は、グリスミアとは名乗らずリアスと名乗っていたから、最初は気付かなかった。

でもリアスの金の動きを調べていた時に、グリスミア家の人間だと判明したんだ。

教会が王弟の傍に人を送った。

これは、何かさせるためだな。

何をさせるつもりだ?

「フォロンダ」

「はい。なんでしょうか?」

「悪かったな。そなたを試すような事をして」

「いえ。信じて頂けてよかったです」

「それでだな。フォロンダには、領主会でちょっと調べて欲しい事があるんだ」

どうやら俺を調べたうえで動かしたいようだな。

しかも領主会か。

「私が出来る事でしたら、なんでも」

「ある子供を探している」

子供?

落ち着け、ゆっくりと。

「王弟殿下のお子ですか?」

首を傾げて聞くと、少し驚いた表情を見せた。

まぁ、違うのは知っているけどな。

「アハハッ。面白い事を言う」

喜んでいただけたようで。

さて、子供とはどういう事だ?

「どうやら王の私生児らしいのだ」

へぇ~。

「王の……ですか?」

「あぁ、そうだ。年齢は9歳か10歳。女の子だ。特殊なスキルを持っている可能性が高い。そして旅をしているそうだ」

これは、あの子に気付いたか?

「分かりました。領主会で、旅をしている9歳か10歳の女の子と母親を探すようにお願いしておきます」

「待て」

なぜか、グリスミア公爵が慌てた様子を見せる。

「なんでしょうか?」

「どうやら母親が死んだから1人で旅をしているそうなんだ。だから探すのは1人で旅をしている女の子だ」

教会が、何か情報を掴んだようだな。

「分かりました。領主会は冬になる前にありますので、そこで協力を仰ぎます」

ジナル達を動かすか。

いや、駄目だ。

彼等は重要な任務に就いている。

他の者で、あの子が信頼を寄せる者は。

「頼むぞ。王のお子だ。くれぐれも慎重にな」

「分かりました」

王弟は、もういらないな。

余計な事を聞いている可能性もあるから、冬の間に処理をするか。