軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

でっかく生きろよギルドマンなら

秋から冬にかけて落ちた枝を拾い集め、燃料にする。

湖の水際にある大きな丸っこい石で囲んだ即席のかまどは、大量の薪によって景気よく燃えていた。

燃やすのはサウナ用のデカい丸石。蓄熱性に優れたこの石の塊をサウナテントに持ち込むことで、長時間の暖かい室温が実現するのである。

もちろん一個や二個そこらを入れた程度で暖まるもんでもないけどな。何個も長時間熱して、そいつを大量に置いとかないといけない。

で、まあ熱源の確保ができれば最低限サウナはできるんだが、魔物の跋扈する異世界ではそれだけだとちと危ない。

テントの周囲にしっかりと縄張りを構築して、最低でもゴブリンなどの魔物の接近を感知できる工夫は必要だ。なにせほぼ裸なんでね。しかも今回は酒まで飲んじまうんだ。酔っ払ってふわふわした頭で魔物に対抗するのには、結構なリスクがある。近くのベースに人がいるとはいえ、完全にそっちに頼りっきりというわけにもいかん。

「まあ、入り口近くに武器を置いとけばなんとかなるだろう。俺らにできるのはこのくらいだ」

「この位置なら何かあった時にすぐ応戦できるんスね」

「剣士だったらな。ライナみたいな弓使いは……一応ナイフで応戦してみるか?」

「いやーキツいっス」

と、最悪の事態を想定しておくのはここまでだ。

俺らは嫌な気分になるためにここにいるわけじゃない。

「よし……じゃあ早速、入ってみるか!」

「わぁい!」

ババーンと服を脱ぎ放ち、水着になっていざ突入!

手には酒! さあ、今日は不健康なサウナを満喫するぞ!

「あっちー」

「おふ、やっぱりここ顔が暑いっス……!」

「まだまだこんなもんじゃねえぜ……ほーれ、蒸気追加だ」

「ぶぇー」

ライナの水着はアーケルシアへの旅行で買った、紺色の海獣の革を使ったものだ。

学校のスクール水着を上下にセパレートしたみたいなやつである。ライナの体格も相まって、本当に生徒っぽい感じがする。……いや、どっちかといえば陸上のユニフォームの方が近いか? いずれにせよ生徒っぽいが。

蒸気を浴びて汗を流すライナは、丸太椅子の上で心地よさそうに目を細めている。

「あー……外は結構涼しいのに、テントの中は暖かい……最高っスね……」

「中はちょっと狭いけどなー。三、四人入ったら満員だ」

「でもこうやってモングレル先輩と一緒にサウナに入れるなんて思わなかったっス。お店じゃ無理っスね」

「外で自分たちでやるからこそだな」

これも一種の混浴か……。そう思うと、ライナ相手でもちょっと意識しそうになってしまうな……?

ムワァとした蒸気の向こうで、顔に張り付いた髪もどこか色っぽく見える……ような気がする!

「何より……湖で冷やしておいたこのお酒っス! サウナに入りながら冷たいお酒を飲む……一度やってみたかったんスよね!」

「おっと、色気っぽく見えていたものがどっかに霧散していったな……」

「え?」

「いいや、花より団子ってことだぜライナ。酒盛りすっか!」

「酒盛りするっス!」

お互い小さなコップを取り出して、ライナが持ってきた酒をトクトクと注ぐ。

蒸気に乗って花開くように届くこの香り……これは。

「コーンウイスキーか!」

「っス! 普通のウイスキーよりも安くて買いやすいんスよねこれ」

「ライナもこういう高い酒を自分で買うようになっちまったかぁ……シーナの心配もわかるぜ俺は」

「それ飲んだらモングレル先輩も同罪っスよ。お説教は禁止っス」

「……確かにそうだ。よし、罪に乾杯」

「乾杯!」

ゴチンと盃を突き合わせ、一口。……かぁー、ストレートはキツいが……良いねぇ。

「こっちの水でちょっと加水しておくか……よし、こんなもんで丁度いい。雪のようにピュアな酒だぜ……」

「ぷはー……うーん、自分で稼いだお金で飲む高いお酒……最高っスね……」

「立派なギルドマンになったなぁ、ライナも……」

「ふふん。そうっスよ。私だってもうシルバーっスからね」

誇らしそうに胸を張る姿は完全に陸上部の後輩って感じだったが、こんな見た目でも弓の技術で言えばレゴールでもかなり高い方なんだから凄いよな。人は見かけにはよらないってやつだ。

「シルバーになったら護衛任務が結構稼ぎ良いんスよ。指名もされやすいし、良いこと多いっス」

「シルバー2には上がれそうか?」

「いやぁ2は遠いっスね……シルバーになると数字一つ上げるのも大変みたいで……実績と回数と、あとは試験も難しそうで……」

「シルバーは特に戦闘能力を深く審査されるからなぁ。ちょっと腕を鈍らせたら、ブロンズに降格なんてことも珍しいことじゃない」

「うぇー」

「“レゴール警備部隊”の爺さん連中にブロンズ3が多いのはそういうことだ。真面目でも身体が追いつかないとブロンズに落とされちまう。だからライナもこれから、シルバーから落ちないように気をつけるんだぞ。まあ、真面目にやってるから無駄な心配だろうけど」

「っス! いつも鍛錬してるっス! いつの日か、ゴールドに上がれると信じて……!」

「その意気だ。夢はでっかく持たないとな」

地道な練習を積み重ねていけるライナの性格は、こういう時に輝くんだろうな。

焦らずやっていって欲しいもんだぜ……。

「よーし、ライナに気合い入れてやるか……じゃーん」

「あ、それ身体を叩く枝っスよね」

「さっき見つけたローリエの枝だぜ。ほーれ良い香りになれ」

「あざーっス」

ローリエの枝でベシベシとライナの背中を叩いてやるが、俺はこいつの効果はよくわかっていない。血行促進的なアレなのかね? 使う枝もこれでいいのかどうか……まぁローリエなら身体に良さそうだし大丈夫だろ。

「はぁー……良い香りっスね、先輩……?」

「おお……」

「……先輩?」

紅潮した頬と、うっとりした表情。子供っぽいところの多いライナだが、落ち着いている目つきはちゃんと年相応というか、大人っぽさがある。

俺はライナのことを小さな親戚の子くらいに思っていたんだが……成長してこいつも、結構美人になったというか……。

「ふむ、杖はここに置けばいいと。で、入り口はここか? 入らせてもらうぞ」

その時、ナスターシャがサウナテントに入ってきた。

「デッッッッ」

「おお、凄まじい熱気だな……本当にサウナそのものだ」

滑らかな白銀色の革で作られたビキニ。……に、収まりきらない豊かな胸。

ナスターシャは普段から露出のある服を着ないわけではないし、なんなら海の時にもこの水着姿は見たことあるが……こ、この狭い空間で間近に見るとこれは……凄まじい迫力だぜ……。

「やっぱ夢はでっかくねえとなぁ……」

「ていっ! ていっ!」

「あーライナ、もっと背中側も満遍なく叩いてくれ」

「ていていていていっ!」

「そこそこ」

何かに抗議するようにローリエの枝ではたいてくるライナをよそに、対面に座るナスターシャをどうしても見てしまう……。

うーん、確かにギルドの男たちがアミュレットにするのも頷けるレベルの巨乳だわ……いや胸しか見てなかったけど、全体的に男の欲望の具現化って感じだわ。豊満な体型というか……。

「さっきシーナに釘を刺されたばかりだというのに、その視線か。シーナは一本くらいなら本気で撃ってくるぞ」

「おっと。そいつは困る」

「モングレル先輩、熱波あげるっス。ふんっふんっ」

「あちあち、あちちち。ライナこっちに風送ってくんな」

「おお、暑い……」

ナスターシャを見すぎるとシーナから矢が飛んでくる。わかってはいるのだが、大迫力の胸を伝う汗に動きがあるとなぜかそっちを見てしまう……男って不思議だね……。

……しかし女二人と一緒にサウナに入るってのも、なかなかない経験だよな……。

この体験談をギルドで漏らしたらその瞬間に十人くらいから囲まれてボコボコにされそうな気がするわ……。

「モングレル先輩は大きい胸好きっスよね……! やっぱり大きくないといけないんスか!?」

「いや別に、俺は別に……そこらへんの派閥には属してないぞ。全ては美しさってやつだよ」

「じゃあナスターシャ先輩のは?」

「いやこれはな……デカいのはデカいのでいいというか、それはそれとしてありがたいもんなんだよライナ……」

「派閥に属してるっス!」

「いやいやそうじゃねえんだこれは。例外的に派閥を超えたものがあるんだって男には」

「男は馬鹿だな」

それは否定しない。派手なサイズひとつで男のIQは半減するからな……。

「でもウルリカ先輩もレオ先輩もナスターシャ先輩にそういう目は向けないっスよ」

「む、確かに」

「あいつらが例外なだけだろそれは。例外で人を殴るのは良くないぞライナ」

「なんかモングレル先輩からいつにない必死さを感じるっス……」

「ここでの受け答え如何で矢が飛んでくるかどうかが変わりそうだからな……必死にもなるぜ俺は……」

ちびちび酒を飲みつつ、蒸気を足して顔に浴びる。うおー……健康と不健康が同時に襲いかかってくる。特に不健康は循環器系を集中攻撃してる感じがするぜ……。

「こんな極限の環境でも酒盛りとは……なんだか、蒸気に酒気が混ざっていそうだ。熱のせいか、ひどく匂い立つ……」

「飲んでる私達は気づきにくいっスけど、やっぱ匂いするんスね」

「アルコールは揮発しやすいし、この暑くて狭い空間だもんな。酒の弱い奴がここに入ったら危ないかもな」

「ウルリカ先輩は禁止っスね」

間違っても酒でロウリュなんかしたら駄目だろうな。ウイスキーくらいの度数になると普通に危なそうだ。

「……うう、そろそろ私、外の水に入ってくるっス」

「お、水風呂行くか」

「水風呂っていうか湖っス」

「俺も行くぜ。ドボンと入ってあれだ。冷えたら上がってもう一度サウナに入るんだぞ」

「まぁ気持ちよさそうっスけど……」

良い感じにホクホクしたところで、テントを出て湖へ。サウナテントの前は丸石が多くて入りやすい水辺になっているので、そのままザブザブと……うおおお……つめてぇー!

「つ、つめたい……けど、さっきまでの暑さで耐えられる感じっス!」

「おおおー……ど、どうだライナ! 整ってきたか!?」

「全然意味わかんないっス!」

そうだな。俺もまるでわからん……。

あ、でもこれ段々と適温になるというか……水の冷たさに慣れてくるというか……この感じは結構心地良いな……。

いや……でもうん、サウナで付与された熱オーラは完全に剥がれたわ!

「っしゃ、もういっちょサウナだぞライナ!」

「……ほぅー……」

「……あれ? なんかすげぇ心地よさそうに浸かってるけど……もしかしてライナそれ整ってる……? 整ってるってやつか……?」

「あー……良いっスねぇ……」

すげぇなんか良い感じに浸かってない……?

……俺ももういっちょ入ればわかる感覚だったり……いや一度出ると無理だこれ。もう一回入ろうって気になれねえ……何故だ……。

くそっ、もう一度サウナだサウナ!