軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

料理と演奏と禁断の酒宴

そろそろ暗くなりそうな頃合いだ。

今日も色々遊んだが、今のところ釣果はいまいち。ザヒア湖に来たからには前ほどの……とは言わないものの、一匹くらいは大物って言えるような魚を釣りたいもんだが、さて。こればかりはデカめのルアーを何度も付け替えたりしないとわからない部分もあるからなぁ……。

「おかえりー、ライナ。モングレルさん。なんか獲物手に入ったー?」

「ライナが猫耳つけるから逃げちまったよ」

「ちょっ!? 何言ってんスか!? 関係ないっスよ! ……たぶん」

ベースキャンプのある岸辺に戻ってみると、ウルリカとレオは木皿に盛られたスープを飲んでいた。

老魔女の杖を刻んで入れた鳥肉のスープのようである。うーん……硬い食感がスープの中で浮いてそうな感じがする。

「二人とも、少し早いけど夕食にしたら?」

「そーだよ。せっかく遊びに来たんだから、少しは楽しないとね!」

「確かに息抜きの側面もあるけれどね……ウルリカ、鳥を撃つのも練習の一環なのよ? それを忘れては駄目」

「は、はぁーい……団長は堅苦しいなー……」

「聞こえてるわよ!」

シーナとモモはまだ何やら調理を続けている。燻製だから即席のものにしてもまだもうちょっとかかるんだろう。

けど何を作っているのかは謎だ。楽しそうにやってるのが妙に怖い。

「このスープもシーナが手ずから作ったものだ。ライナ、モングレル。お前たちも食べておけ」

「おう……それ美味いのか? なんか見慣れないものが色々と入ってるけど」

「……食べればわかるだろう」

ナスターシャは無言でスープを差し出してくる。だから怖いって。お前も内心ちょっと評価に困る味って思ってるんだろ。

もしかしなくてもシーナってメシマズ属性持ってる? いやこの世界じゃそこまで珍しい属性でもないかもしれんけどさ……。

「まぁまぁ、モングレル先輩。シーナ先輩はこういう工夫を凝らした料理をよく作るんスよ」

「レシピを軽視して創作料理に走るタイプか……まぁ食えないってほどではないだろうから、食ってみるか」

というわけでスープを試しにスプーンで一口。ぱくり。

……うん。

案の定なんというか……老魔女の杖のしっかりした歯ごたえがスープに合っていないというか……。刻んで入れてあるタケノコも細かくしてくれたのは嬉しいが、ザクザクした歯ごたえがあっさり塩味のスープに噛み合っているかと言われるとちょっと違う。

多分これあれだな……塩味とか鴨の出汁とかがもっと強めに出てくれてたら、ラーメンのスープとしては結構良いんじゃないかとは思う……。

どっちかといえばポタージュ的な……シチューみたいな汁物に向いてるんじゃねえかなぁ。

ちなみに具の中で一番美味いのはリードダックの肉である。

「……温かい汁物を食べるとなんか安心するっス」

「良いコメントするじゃねえかライナ……」

「うーん……私も一人で狩りをしてた時期はこういう有り合わせの食材でスープを作ったりもしてたんで、懐かしい感じの味と思えば……」

多分“アルテミス”の現役メンバーで一番料理ができるのはウルリカなんだろうな……まぁ食えりゃ良いって考え方も有りだとは思うけどよ、どうせだったら美味いものを食いたいだろう。ウルリカ一人だけじゃ野営の時大変じゃねえのかね。

「ふふふ……モングレル! ライナ! そちらのスープはあくまで前菜ですからね……! 夕食時の頃には、もっと美味しい料理を食べさせてあげますよ! シーナさんもついてますからね! 上品な味に仕上がるはずです!」

「あらあら……モモったら、私はそこまで褒められるほどのものじゃないわよ。お店で出せるような味には程遠いし……」

ほんとにな。悪いけどさっきのスープみたいなクオリティの飯が店で出てきたら俺は多分二度目は行かねえよ……。

「ゴリリアーナさんは釣りか……いつの間にか竿二本体制になってやがる……」

「す、すみません。使いすぎでしょうか……?」

「いやいや、そんなことねえって。使ってなかったしな。好きなだけぶっこみしててくれ」

「はい……! 大物、狙いますね……!」

さて……みんな思い思いのことをしてるんだ。俺も気になってた物を使わせてもらおうか。

「レオ、このカリンバ使っていいか?」

「これ? うん、良いよ。けどモングレルさん、これ使ったことある?」

「ないけどまぁ、原理は簡単だろ。それっぽーくやってみるさ」

カリンバは薄く細長い鉄板を弾いて音を出す小型の楽器である。構造がシンプルなのと小型なので携帯しやすいのが強みだ。

オルゴールのような澄んだ音なので、なんとなくヒーリングミュージックとかが合いそうな楽器だ。いや、俺の偏見も入ってるかもしれんけど。

「なになに? モングレルさんそれ演奏するのー?」

「演奏できるんスか?」

「まぁまぁ、こういう楽器ってのは手探りで音を出しながら調子を掴んでいくもんなんだよ」

「なんか適当じゃない……?」

初見の楽器なんてそういうもんだろ。

どれどれポロロンっと……おー、まぁまぁ。音は綺麗だな。音階は……まぁ揃ってるんかな?

さすがはサングレール製。音楽関係の道具は結構しっかりしてるんだよな……。

「適当に鳴らしているだけでも音色が綺麗だから、僕は結構気に入ってるんだよね……あ、でもモングレルさんのそれは結構音楽になってるかも……?」

「音色が綺麗すぎて鍋とか適当なの叩いてるだけじゃなんか合わないんだよねーこれ」

「あーそうかもな」

なんとなく探り探りで音を鳴らしていく……が、これあれだな。それぞれの鍵盤にコード記号書き込みたくなってくるな……まっさらじゃわかりづれぇ……。

たどたどしく演奏をすることはできなくもないが、こっちもこっちで人様に聞かせられるクオリティではないな。

こんな演奏じゃライブチケット買わせらんねえよ……。

「いやー操作は指で弾くだけだから簡単ではあるな。けど練習はしなきゃ駄目だこれ」

「ううん、すごいよモングレルさん。よくすぐに使えるね」

「楽器をやってる人は他のもわかるもんなんスかねぇ」

「似たような楽器であれば、多少の心得はあるようだぞ。私もさほど詳しくはないのだが。私の知り合いはハープがメインだったが、リュートも弾けていた」

ハープをメインでやってる奴は只者じゃねえんだよなぁ。そいつ絶対貴族とか裕福な奴だろ。そしてナスターシャも多分貴族関係なんだよなやっぱ。あんまり隠している風でもないが。

「それにしたって一朝一夕じゃ成らないってことだな」

「あれ、モングレルさんもうやめちゃうんだ?」

「おー、ちょっくらサウナ楽しんでくるわ」

「薪を適当に集めて、石を火にかけて……暑くなったら湖に入って、出てを繰り返して、最終的に整っちまうんだ」

「何が整うんスかね」

俺も何が整うのかは知らん。整ったことないし……。多分バグみたいなもんだろ。

「えーじゃあ私も入ろうかなー……けどこの冷たそうな湖に入るのかー……」

「モモちゃん湖入った後めっちゃ寒そうだったっスね……」

「なあに、その前にぐでんぐでんになるまでサウナで暖まっておけば問題ねえよ。……そうだライナ、今日は他のメンバーも多めだし酒盛りでもしちまうか」

「えっ! お酒飲むんスか!」

「この辺はしっかり魔物対策はしてあるからな。安全面は心配いらんだろ」

ライナは一瞬だけ悩むようなジェスチャーをしてみせたが、本当に一瞬だけだった。

「いいんスか! 楽しそうっス!」

「あーあ、体に悪そー」

「悪いぞ?」

「悪いんだね……」

「まぁだから程々にな。つーか酒なんてものは体に悪いんだよ。楽しむ時くらい最大限楽しんでなんぼだろ!」

「わかるっスよ先輩。私にはわかるっス」

「……ライナ、貴女本当に飲み過ぎるんだから、最低限の節度は保ちなさいよ!」

お目付け役のシーナは料理に釘づけだ。今がチャンスだぜ。

俺と一緒に心臓と血管に深刻なダメージを与えに行こうじゃないか。

「ふむ。では私が念の為にライナの監督役になっておこう」

「……えっ? ナスターシャ先輩?」

「ライナはしっかりしているが、私もシーナと同じで、ライナの酒癖に関しては心配しているからな」

なんだと……つまりあれか……ナスターシャも一緒にサウナに入るってことかい……?

「それに、単純に私もサウナに入りたいのだ。即席のサウナがどのようなものか、試させてもらおうか」

……当然水着は着るんだろうが……。

俺としては、そうですね。常に体を清潔に保つ意識は素晴らしいことだと思いますよ。

是非ともナスターシャさんも一緒にサウナに入るべきだと思いますね……。

「ていっ!」

「痛っ!?」

蹴るなよ! 俺は純粋にみんなの健康を想ってるだけだぞ!

「モングレル……貴方……ナスターシャに不躾な目線を送ったら、テント越しでも矢が飛んでくると思いなさいね」

「あっ、はい」

シーナの能力の詳細がわからないから冗談に聞こえねえよ……。

でもチラ見だけは許してくれ。