軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

狩人たちの豪華な野営

テントの設営が完了した。

岸辺の奥側、他所の岸からは見えにくい場所にしておいた。ライナが張り切って警戒用の罠を張ってくれたので、森側からの魔物に対しても十分に対処できるだろう。

「これがモングレルの作った釣り竿なんですか」

「おう、専用のガイドとリールのついた最強の釣り竿だぜ。大物を上げた実績もあるし、見掛け倒しじゃないぞ」

「その見かけがどうも頼りないように見えるのですが……この金属の輪っか、大丈夫なのですか? こんな細い場所に糸を通したら、糸に負担が掛かってしまうように思えるのですが……」

「逆だよ逆、この金属のガイドを複数用意することで糸と竿両方への負担を減らしてんだ」

「むむむ……そういうものですか……?」

モモは俺の持ってきた釣り竿に興味を示したらしく、早速餌釣りをやり始めた。

釣りそのものというより、釣り竿の仕組みに興味があるようだ。

「まあ、餌釣りの場合は簡単だな。生き餌をそこらへんで拾って針に刺したら、適当なところに投げ込んで糸を張って放置。こんだけだよ」

「何故糸を張るのですか?」

「魚が掛かったかがわかりやすいんだ。この状態なら糸も竿先も動きがよくわかるだろ?」

「なるほど……こっちの疑似餌の方はどうなのです?」

「これは疑似餌の動きで釣るものだから、餌釣りよりも忙しいな。糸を巻いて、良い感じのアクションをつけて……こっちはただ待つよりも根気が要るな」

「……ちょっとやってみます!」

「おー、良いぞ。ほれ」

どうやら餌釣りよりもルアーの方に関心があるらしい。

道具好きかい? もうそれだけで釣りの才能があるぞモモ。

「私も釣りしたいっス」

「私も……」

「ライナとゴリリアーナさんもかい。まあ今回は三本持ってきたから、好きにやっといてくれ」

「わぁい」

「何か、ば、晩ごはんが釣れるといいですね……」

いまいち今日の俺は釣りって気分でもなかったので丁度いい。

今はなんとなく、設営の準備をより入念にしたい気持ちが強かった。

「モモちゃん、そっちのルアーの巻き取り方は緩急つけると良いんスよ」

「こ、こうですか?」

「そうっスそうっス。魚の気持ちになるっスよ」

釣りはちびっ子たちに任せて、俺はもうちょい簡易サウナの方を整えるとしよう。

「うーん、見た目はちょっと下がゴツゴツしてるテントなんだけど……これで本当にサウナになるのかなー」

「でもモングレルさんの言うことの理屈は合ってると思うよ。普通のサウナでも焼け石を後から部屋に運び込むものは多いしね。布一枚で覆っているっていうのが少し心もとないけど……」

ベースのテントから少し離れた場所、湖に近い石だらけの場所にサウナ用のテントを設置した。大きめの布を長い枝のポールに掛けて空間を確保しただけの本当に簡単なものだが、中の空間が広くなるように工夫はしてある。

複数人で入って座れるように丁度良い岩や丸太を配置してあるので、中でじっくりと体を温めることができるはずだ。

「おーいウルフリック少年、レオ少年、そっちの設営はできてるかー」

「ちょっとー! ウルフリックはやめて!」

「あはは……うん、大きめの石とか枝葉とか、色々集めてきたよ。そこら中にあるから楽で良いね」

「おー、良いな。そうそう、そのくらいのサイズが良いんだ」

サウナ用の焼き石は多ければ多いほど良いからな……。

やり方そのものは冬のソロキャンでやった感じで大丈夫だろう。テントの正面側に石焼き用の焚き火を据えて、適宜あつあつの石を追加したり湖に飛び込んだりすればいい。

燃料もそこらへんの枝を拾ってればいくらでもあるから良い場所だ。

「これで完成ならさー、ご飯食べた後に一度入りたくない?」

「早速か? まぁ、飯もそろそろできるが……そうだな、今日はさっさと蒸気風呂でさっぱりして寝るのも有りか」

「やった! みんなでお喋りしながらお風呂だ!」

「ウルリカ、本当に誰かと一緒にそういうことするの好きだよね……」

「だって今までそんな機会ほとんどなかったしー」

レオが来るまでは本当に男一人だったもんな。ウルリカも寂しかったことだろう。

女所帯で男一人の疎外感は俺もちょっと想像したくないぜ。

「じゃあ早速石を温めておくかー。水鳥とか魚の処理が無い今日くらいしかまったり入れるタイミングがないかもしれないしな」

「やった!」

「え? 普段はそんなに忙しくなるの……?」

「前回は水鳥が獲れすぎて大変だったぜ……」

「シーナ団長が容赦なく仕留めてたからねー……」

大半は湖畔近くの爺さんらにおすそ分けしたが、今回もそうなりそうな予感がする。

シーナに限って“今日は全然獲れなかったわ……”なんてこともないだろ。逆にそんな日があるなら見てみたいもんだ。

「明日からは肉と魚の料理ばかりになりそうだからな。今夜はチーズリゾットにしておいたぞ」

「わぁい」

「お、美味しそうな匂い……」

「私は豚肉の炒め物作ったよー。明日が大猟だとしても鳥肉だし、豚肉だったら飽きないからね!」

ドライデンの買い出し品をふんだんに使ったので、野営飯というには随分と豪華になった。けど今回は金を使い渋る遠征ではないから良いんだ……美味い飯こそ正義だぜ。

「あつつ……美味しいね。チーズが入ってるとこういうご飯も美味しいや」

「モングレルは地味に料理も上手いんですね……」

「豚肉美味しいっス。クレイジーボアも良いっスけど、やっぱ豚肉は柔らかくて癖もないっスね」

「クレイジーボアも良さはあるんだけどな。畜産の肉にはなかなか敵わねえよ」

「お、おかわりください」

「はーい」

全員で炎を囲みながら、大きな鍋のリゾットをどんどん減らしていく。

スパイスも入れたからうめぇわ。いくらでも胃袋に入りそうな気がするぜ。

「明日の猟についてなんスけど、シーナ先輩たちの小島からは離れた方が良いと思うんスよね。逆にそこから逃げてきた鳥を狙う感じで」

「だったら私の散弾が尽きるまではライナと一緒が良いかなー。初撃をライナに任せて、飛び上がったら私がそれを狙う感じで」

「あー。良いっスねぇ」

「……この辺りの水鳥はどのくらいまで近づけるのですか? 私の闇魔法が届けば、狩猟もできなくはないのですが……」

「さすがに闇魔法の射程には入らないと思うよ。かといって、僕も何か役に立てるわけじゃないからね……ボートを漕ぐか、釣りをしているか……になっちゃうかな」

「わ、私も漕ぎ手としてなら……」

「俺は大人しく釣りしてるわ」

今回のメインはどうしても弓使いになる。ライナとウルリカがメインで動いて、俺達はその補助か釣りのどちらかだ。

まぁ良いさ。俺は最初から釣りのつもりで来てるしな。適当に魚の塩焼きを食いてえんだ俺は。

「今回は“ 貫通射(ペネトレイト) ”もあるし、前回よりもたくさんの鳥を仕留めてみせるっス!」

「おー、頑張れよライナ。シーナよりたくさん獲れるといいな」

「それは無理っス……」

一瞬で諦めるほどらしい。まぁ前回のシーナは凄かったしな……。

違法な猟法でもやってんじゃねえかってくらい獲ってたもんな。

食事を終えた後はもう薄暗くなったので、いよいよサウナに入ることにした。

わずかに明るいうちじゃないと、焼き石とかで色々と危ないからな。真っ暗になったらちょっと考えなきゃいけないかもしれない。

枝を組んで作った専用のスペースに十分に熱した丸石をゴロゴロと入れ、テント内を予熱する。まだ蒸気はないが、これだけでも十分に暖房としては機能するだろう。冬場なんかは良さそうだ。まさに温石ってやつだな。

「よし……じゃあ行くか! ウルフリック、」

「ウルリカね」

「ウルリカ、レオ!」

「はーい」

「暗くなって冷え込んできたからね……気持ちよさそうだ」

サウナに突入するのは俺達男三人である。

一応近くに女所帯がいるので、全員水着着用だ。だからまぁライナ達が一緒に入っても問題はないんだけどな。気が向いたら来れば良いさ。

水着は俺のは以前から持っていたやつで、ウルリカとレオのはアーケルシアで買った水着だ。ウルリカは女物だし、レオは軽めの上着を着ている。

いざとなればそのまま湖に飛び込めるから便利だぜ……さすがに暗い水中はなんか怖いから今日はやらんけども。

「わあ、あったかーい……暗いと思ったけど、近くで焚き火があるから意外とそうでもないね?」

「だね。こんな格好なのに、過ごしやすいや」

「よし。じゃあ早速ロウリュさせていただきますんで……」

「ロウリュっていうんだそれ」

鍋に水を汲んできたものを焼き石の近くに配置し、いざスタート。

レードルで水を掬い、焼き石にバシャーっとな。

「わ、蒸気きた」

「むわっとしたね」

「まだまだ上げていくぞー」

何度かジュウジュウと水をかけていくと、ちょっと息苦しくなるくらいの暑さになってきた。

これよこれ、この熱……思わず口数が少なくなるような熱気……俺の求めていたサウナそのものだぜ……。

「あー……体の内側から老廃物が流されていくようだ……」

「うん……公衆浴場のサウナと違って清々しいね。臭くもないし……これは良いや」

「気持ち良いねー……なんだか眠くなっちゃいそう」

常に熱源が絶えないサウナと違って、このサウナだったら入りっぱなしで寝ても茹だって死ぬことはないだろう。逆に石が冷えて凍死する危険はあるかもしれないが。

「今日は暗いし危ないからやらないけどな。暑くなったら向こうの湖に飛び込んで冷やすのが良いんだぜ」

「それは、暗いと危なそうだね……」

「でも身体も洗えて良さそう! 良いなー……私明日やりたいなぁ」

「もちろん明日もやるぞ。入れるもんなら毎日風呂入りてえからな」

「本当にお風呂が好きだね、モングレルさんは」

「きったねぇ男が芋洗いしてるレゴールの公衆浴場は嫌いだけどな」

「“アルテミス”のお風呂は良いの? 私達も男だけど」

「綺麗な男ならセーフ」

「き、綺麗って……まあ、清潔にはしてるからね。僕らは……」

この日はそんな感じで、涼しい湖畔でサウナを満喫した。

明日からは本格的な狩猟やら釣りやらになるだろう。楽しみだぜ。