軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第96話、魔法カードを作ってみた

ミストが作ったのは、魔力で生成したカード。材料は魔力。魔力生成で武器やら装備を作れるミストにとっては、この程度朝飯前だった。

「カード全部が魔力で、その魔力を使って魔法が発動するわ」

純粋魔力の塊である。無駄なものは一切ない。もちろん、使われている魔力の容量もあるから、威力や効果には制限がある。

だが、ソウヤが期待するものとしては申し分がなかった。

「あとは、実際に魔法を使った時の精度だな……」

攻撃魔法を発動させた時、魔法が敵に当たらないでは困る。威力や射程はどうなのかなど、実地のテストも必要だ。

食後、魔法カード(仮)の試射をやると言ったら、ソフィアもセイジも見学すると言った。

再び外へ出て、カードを試してみる。

製作者のミストが、複数枚のカードを広げてみせた。

「お試しで作ったものだから、発動する魔法はシンプルなものにしたわ。……では、ソフィア、やってみなさい」

「わ、わたし!?」

すでに期待を膨らませていた女魔術師見習いは、いきなりの指名に驚いた。

「あなたができないと意味がないでしょ。……それとも、セイジに先を譲る?」

「いえ、わたしがやります!」

ミストから、魔法カードを一枚受け取るソフィア。

「これは何の魔法?」

「火の玉を放つ魔法」

「ファイアーボールね。それで師匠、呪文は?」

「うーん、放ちたい目標に向けて『炎よ!』でも『ファイアボール!』でも、好きに言えばいいわ」

ミストは適当な調子で言った。そんな簡単なのか、と、ソウヤは見守る。

ソフィアは右手を伸ばして、何やらポーズをとっている。魔法を放つ姿勢を探っているのだろうか。

確かに、カードを持っているのはいいが、どういう持ち方をすればいいのか、説明はなかった。ソフィアがカードを持つポジションを確かめているのを、ミストは黙って見ている。作った本人も考えてなかったのかもしれない。

「我は放つ! ファイアーボールっ!」

ソフィアが叫ぶように呪文を唱えた。その瞬間、彼女の手の魔法カードが、次の瞬間、ドラゴンブレスもかくやの炎を真っ直ぐ放った。

周囲の大気がうねり、離れていたソウヤやセイジも吹いてきた熱風に驚く。

「どこがファイアーボールだ! ドラゴンブレスじゃねーか!」

これだけ威力があれば、方向さえ間違わなければ狙いをつけるまでもない。

「凄い威力でしたね」

引き気味のセイジに、ソウヤも呆れ顔で頷いた。

「見た目は派手だったな」

ソフィアは自分が放ったにも拘わらず、想像とあまりにかけ離れた炎を目の当たりにして呆けている。

ひとり満足そうに、ドヤっているミストに、ソウヤは言った。

「加減しろ。強すぎて使い勝手が悪そうじゃねぇか!」

「えー、言われた通り、魔法を発動したでしょー。何が不満よ?」

彼女の発言は実にもっともだった。一発こっきりの使い捨てで魔法が使えるカードという、ソウヤの条件を満たしている。

考えてみれば、炎の魔法とか、シンプルなオーダーを出したが、威力や範囲については特に指定していなかったのだ。常識の範囲で――使い捨てだから、大したものは作らないだろう、という思い込みを見事に裏切ってくれた。

人間の考えるそれと、ドラゴンの考える魔法に差があったということだ。種族が違えば、常識も変わる。当然といえば当然のそれを失念していたことは、ソウヤの落ち度である。

「悪かった。まさか、ここまでのものとは思わなかった」

だが、ドラゴン的には、これでも『それほど大したものではない』レベルなのだろう。

「ただ、実用化するのは、もう少し威力を落としたほうがいいな。今のは、開幕ブッパするような場面とかで使えるだろうけど、そういう機会ってあんまりなさそうだ」

「周囲の地形を変えそうですもんね」

セイジがそうコメントした。森や林で使ったら、大火事になりそうだ。

「あと、混戦だと使えないですよね」

「オレらが前で戦っている時に、あんなもん撃たれたらヤバイ」

ソウヤが首を傾ければ、ミストが「そぉ?」と少しがっかりしたような声音で答えた。

せっかく頼まれて作ったのに、思ったような反応ではなくて、落ち込んだのだろうか。ソウヤは顔を上げた。

「威力については文句なしだよな。試しで作ったにしては大したもんだな。あれはあれで使える」

「そぉ?」

ミストは心なしか嬉しそうな反応を返した。――わかりやすい……。

「威力や範囲をしぼって、バリエーションを作ろう。あまり強すぎるのを使って、周囲の目を引くのはよろしくない」

「それもそうね」

ミストは同意した。

「ま、単純に威力を下げるなら、カードを作る魔力を抑えられるから、作るほうも楽なのよね」

威力=魔力量。投入した魔力が多いほど、効果も増す。ソウヤは、ふと思った。

「魔力の量で強弱が決まるなら、作るほうもやっぱ疲れる?」

「そりゃあ、それなりのもので、数を揃えるなら、普通の人間では厳しいでしょうよ」

ミストは、ソフィアの背後から抱きつく。

「まあ、ワタシの魔力量は人間のそれとは違うけれど。今回の魔法カードの魔力の原料は、この子の放出魔力をワタシが加工したやつだからね」

それは、ソフィアにしてみれば自分の魔力で魔法を使った、ということになるのか。

ともあれ、色々試してみる。

予め用意していたものは、強力過ぎるということで保留。ミストはソフィアから魔力を頂戴し、威力抑えめの魔法カードを製作。それをソフィア、そしてセイジが使ってみて、感想をもらう。

「らしくなってきたな」

二人が火の玉や電撃弾を飛ばしているのを眺め、ソウヤは目を細める。

「ソフィアも、格好が格好だから、普通に魔法使いに見えるぜ」

「そりゃ見えるわよ。自分の中の魔力を使うか、カードの魔力を使うかの差しかないもの」

ミストはそこで表情を硬くした。

「ただカードの魔力は、発動と共にワタシが想像した魔法を発動するだけだから、カードを使うほうからは調整ができないのが難点よね」

「加減したい、それか強くしたいと思っても、カードの性能は一定ってことか」

「だから微妙な状況だと、案外使えなかったりするかもね。まあ、それは制御に未熟な魔術師にもあることだから、カードばかりの難点とも言えないけれど」

「なるほどね……」

そこで、ふと、ソウヤは思いついた。

「なあ、ミスト。この魔法カード、攻撃魔法だけか?」

「ん?」

「さっき、お前が想像した魔法が発動するだけ、って言ったよな?」

もしそうなら――

「盾とか、武器とかも魔法カードで作れない? お前、イメージで魔力を武器とかに変えることができるだろ?」