軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第97話、色々、試してみた

魔法カード(仮)の試作と試験は、連日行われた。

まず基本のカードは、投射系攻撃魔法。火の玉、氷の塊、岩の塊、電撃弾の四種が主となる。

これに風、水流、毒液、腐食液など、少々扱いの難しいものも、一応、形はできた。

それに派生して、霧を煙幕のようにばらまく魔法ができて、石の壁を形成する防御魔法、そして武器や盾を形成する魔法カードが製作された。

ただ魔力が形成したそれらは、一定時間で消滅してしまうため、あくまで戦闘時の補助的な使い方が推奨される。

「回復魔法とか、カード化はできない?」

「ワタシは、そういう魔法は知らないの」

ミストは、少しムッとした表情を浮かべた。

そもそも再生力に定評のあるドラゴンのミストである。多少の傷は、他の生物と比べても格段に早く自己治癒するし、そもそもドラゴンの厚い装甲外皮に傷をつけられる敵もそうそういない。

どうしてもというなら血を舐めたら?で済んでしまうドラゴン種に、回復魔法が発達するはずなかったのだ。

「ただ、ワタシは回復魔法とかわからないけれど、このカードにそういうイメージを注ぎ込めるなら、作れるんじゃないの?」

ミスト曰く、この魔法カードは、魔力の塊である。発動の命令を受けて、初めて魔法の形に変わるそれは、所詮は、通常の魔法と同じなのである。

「つまり、回復や治癒の魔法が使える人に、この魔法カードを作ってもらえば解決するってことか?」

「そうなるわね」

ミストは頷いた。

「あー、そうそう。ワタシがイメージを込めない、ただの魔力で作ったカードに、魔法武器よろしく魔法文字を刻めば、その魔法が使えるかもしれないわね」

「魔法文字か」

魔道具というものがある。それは魔力を秘めた媒体を介して、刻まれた魔法文字が発動することで魔法や、その他特殊効果が発動する。

それを応用し、魔力の触媒をカードそのものに置き換えれば、魔法文字で、その魔法を発動させられるということだ。

「いいぞ! 面白くなってきた!」

無限に広がる魔法カード。すべての魔法を魔法文字で再現できるなら、魔法の種類だけカードが作れるということだ。

「でも残念、ソウヤ。ワタシ、魔法文字って、さっぱりなのよね」

「……オレもだ」

ミストに至っては、普通の文字のほうも読み書きできない。しつこいようだが、彼女はドラゴンなので、人間の文字などそもそもわからなくて当然と言える。

「魔術師なら、わかるんだろうけどな」

たとえば、先日、相談した冒険者であり魔術師であるミアとか。とくに彼女は、王都の魔法学校出身だと聞いた。

――冒険者をやってる魔術師を抱き込んで、作らせてみるか……? それともオレが魔法文字を教えてもらえばいいのかな?

などと考えるが、冒険者系魔術師を使うなら、冒険者ギルドに話を通しておいたほうがいいのでは、と思った。

ギルマスのガルモーニに相談してみれば、人を紹介してもらえるかもしれない。どの道、商品化された際、冒険者も想定客層に入っている。ガルモーニには予め、知っておいてもらったほうが後の面倒がなくなるのではないだろうか。

・ ・ ・

ソウヤが冒険者ギルドに赴くと、さっそくギルド長の執務室に通された。

「よく来たな、ソウヤ。先日、お前から預かった武器、カエデに確認させた」

ガルモーニは、机にダガーや爪付き手甲を置いた。

「正体がわかったのか?」

「ああ、これはお前の言う二件目、全裸野郎と戦ったとおぼしき戦士たちの武器だが――」

あの謎のイケメン戦士――名前を知らないから仕方がないのだが、ギルマスまで『全裸野郎』などと表現した。

「カエデ曰く、こいつは、ウェヌスという暗殺組織が使っている武器らしい」

「暗殺組織……。それはまた、穏やかじゃないな」

「最近、名前を聞くようになった集団だ。金次第で貴族の暗殺だってやるっていう、現在絶賛お騒がせ中の奴らだ」

そこそこ有名な組織のようだ。もちろん悪名が轟いている、という感じだが。

「で、こっちは一件目の、謎馬車を襲撃した盗賊連中の遺留品の中に、ウェヌスの暗殺武器がひとつ混じっていた」

「つまり……?」

「どっちも、ウェヌスが関わっている事件ということだ」

ガルモーニの言葉を、ソウヤは心の中で反芻する。

「……一件目の盗賊にウェヌスの暗殺者が混じっていて、二件目で殺された連中は、同じ組織の構成員だった、と。……相手に心当たりは?」

「できれば関わりたくないんだがな。ウェヌスと最近ゴタついているのは『カリュプス』だな」

「カリュプス?」

「これも暗殺組織だ。ただし、この国の古株で、王族も贔屓にしている連中だという。だから、今までこの組織を討伐しようって話は皆無だ」

「へぇ……」

王族も利用する暗殺組織か。お国の運営には、後ろ暗い面もあるものだ。公にできない暗殺などをこなす影の集団と言ったところか。

――もしオレが勇者のままで、国から消されるような事になっていたら、そいつらが送られてきたかもしれんな。

感傷に浸ったのもつかの間、ソウヤは考える。

「そう考えると、ウェヌスの構成員を倒したらしい、あの銀髪の全裸男は、カリュプスの暗殺者だったのかもしれないな」

素性を明かそうとしなかったのは、暗殺組織に属している故だったのかもしれない。普通、自分は暗殺者です、って名乗る暗殺者はいないだろう。筋は通っている。

――何で裸なのかは、さっぱりわからんけどな!

「なあ、そのカリュプスって、人間以外……つまり獣人がいたりは?」

「さあ、俺は暗殺組織に詳しいわけじゃないからな」

肩をすくめるガルモーニ。ソウヤは言った。

「カエデは?」

「あまり、こういう話に彼女を巻き込みたくないんだが……」

ギルマスの表情は険しい。シノビであるカエデは、両親が国に関係する暗殺組織にいたとか聞いた。

――カリュプスにいたんだな……。

関係を絶っているなら、あまりその話を振るのはよくないということだろうか。

「まあ、関わらないほうが利口だよ、ソウヤ。暗殺組織同士の抗争なんてものは」

「だな……」

面倒な予感しかしない。ひとまず、その件は棚上げにしよう。そのまま忘れてしまうかもしれないが。

「ありがとう、また今度、奢らせてもらう。で、今度はこっちの話なんだが、新しいことを始めようと思うんだがね――」