軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談202話、苛立つふたり

復活できる命を嫌悪する。

光の守護者は告げた。長い銀髪の美貌の戦乙女は、柔和な顔つきに反して、どこか突き放すようでもあった。

「命はそれぞれ一つしかないもの。本来、復活なんてできないもの」

「だが神竜にはその力がある」

ソウヤは言った。

「だから、ここにきた」

「そう。命を賭けて。守護者たちが命を奪うかもしれないのに、それでもここにきた。貴方は大切な友人たちを復活させるためにと言ったけれど、その言葉に嘘はないでしょう。でも……」

レイは小首をかしげた。

「貴方の友人たちは、それを望んだかしら?」

「なに……?」

「その友人たちは、貴方に自分たちを復活させるように頼んだのかしら?」

頼んでなど――ソウヤは言葉に詰まる。

誰も、一度もそのようなことを頼んだことはない。ガルやカリュプスメンバーの誰も。

かつて勇者として魔王と戦う旅をした時、仲間たちは言った。死にたくない、と。失われた命はある。助けられなかった命。それを見て、死にかけた者をアイテムボックスで保存するようになった。

そして十年の月日が流れたが、ひとりずつそうした生死の境にいた者たちを助けた。

彼、彼女らは新たな人生を歩み、得るはずだった新しい家庭を得たり、自らの趣味に生きたりもした。

生きていればこそだ。

だが、一人として死んだ時に蘇らせてくれと頼んでいた者は一人もいなかった。

しかし理由は簡単だ。誰も、死んだら生き返ることはないとわかっていたから。だから死にたくないと生に執着した。

でもこうも思う。復活する方法があったなら、果たして言わなかっただろうか? 中には、自分が死んだら――と遺言というわけではないが、冗談でも本気でも蘇らせてくれと口にする者もいたのではないか。

「頼まれてはいない」

ソウヤは答えた。

「彼らは皆、死を覚悟していた。それでも彼らは自分たちを取り巻いていた環境を潰し、仲間の命を奪った者たちを討つべく戦った」

「復讐? それは果たせた?」

「一応な。だがそれを知ることなく倒れた者たちもいる。仲間に仇を託して。それを知らずに死なせるのは……」

「不憫? それは貴方の哀れみではないの?」

レイは、ソウヤを見ていなかった。

「きっとそう、そのはずだ、そうすべきだ――全部、貴方の感想ではないかしら?」

「感想だ……?」

苛立った。その指摘で何故腹が立ったのかソウヤはわからなかった。だが人は無意識のうちにカッとなる時もある。

「その大切な友人たちは、貴方のせいで死んだの?」

「いや、オレとは直接関係のない事柄が根底にある。ただ共通の敵を持っていた。個人的に親しくもあった。仲間であるとオレは言える」

「でも、貴方は誘われなかった?」

「オレが死んだと思われていたからな」

ソウヤが生きていたら……それでもガルたちは助っ人を頼んだだろうか? カリュプスにかかわることだから、銀の翼商会の面々には声をかけなかった。そうであるならば、ソウヤが生きていて、皆がその存在を知っていたとしても声をかけなかったのではないか。

「でも頼まれていないのよね」

「何が言いたい?」

「わからない?」

レイは立ち上がった。

「貴方が復活させようとやってきたのは、その友人たちは望んでいなかったということよ」

「だから何だっていうんだ?」

「貴方のそれ、ただの自己満足でしょ」

光の守護者は背中を向けると、岩場から飛び降りた。

「私は、貴方のことを知らない。会ったばかりですもの、当然よね。貴方は本当はとてもいい人なのかもしれない。人のために自分の命を投げ出せる人かもしれない。きっとそう。正義感が強くて、仲間思い。きっと聖人のような清い魂を持っているのかもしれない」

何故かわからないが最後のは、カチンとくるソウヤ。理由がわからないが、光の守護者の言葉には端々でソウヤを苛立たせた。

「でも、私の貴方への第一印象は最悪。自己満足、偽善者、独善的、自己中野郎」

ずいぶんと好き勝手を言うものだった。こちらのことを知らない癖に言いたい放題。込み上げる怒りにソウヤは拳を固めた。

これも試練というやつだろうか。わざと挑発して、武器を抜かせるための魂胆とか。そう思った時、思考は戦闘モードに入ったようにクリアになった。

レイたちは守護者。侵入者を神竜のもとに行かせないのが目的。ジンによれば、光と闇の守護者は非常に素早く、まばたきの間に敵を倒せるのだという。怒りにかられて武器をとったら最後、そこで殺されるのではないか。

「オレも、あんたの第一印象は最悪だな」

怒りを押さえつつ、ソウヤは言った。

「初対面の人間に取るべき態度じゃねえだろ」

「そうね。そう思う。でも貴方もいけないのよ。会ってそうそう私を不愉快にさせたのだから。面白くないわ」

面白くない――それは不愉快さから出た言葉だった。決して、ソウヤの目的を嘲ったり笑う意味ではなかった。不愉快だった。だから面白くないと彼女は言ったのだ。

「いや、あんたも言葉を選ぶべきだったと思うぜ」

ソウヤは言った。レイは羽根付き兜を脇に抱えて、立ち去っていく。

「そうかもね。言葉足らずってよく言われる」

「戦わないのか?」

「神竜のもとへ行きたいのでしょう? 彼を害するつもりがないのなら、守る必要もないわ。好きにすればいい」

リアン――レイは闇の守護者に呼びかけた。

「行きましょ」

光の守護者、そして闇の守護者は姿を消した。