軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談201話、光と闇

炎の守護者は去っていった。

通っていい、ということなのだろう。ソウヤは自分たちがこれまで通ってきた道を見やる。

「クラウドドラゴンは、まだ戦っているのか」

風の守護者シルフィとの戦いは続いている。意識を向ければ、気配を感じた。ジンはそちらに視線を向けつつ言った。

「甲乙つけがたい、というところなのだろう。実力は拮抗しているが……」

「が?」

「性格の問題だな。クラウドドラゴンは大丈夫だろう」

老魔術師は歩き出した。

「油断さえしなければ、だが……彼女に関してはその心配はないだろう」

「彼女とは、どっちのことを指しているんだい?」

ソウヤは皮肉げに尋ねる。クラウドドラゴンと風の守護者、双方とも女性である。

「クラウドドラゴンの方だ。風の守護者とも知り合いではあるが……」

そう言って、いやとジンは顎髭を撫でつけた。

「ここでの守護者たちは本人ではなく、分身あるいはコピーのようだ。私のことを知らないみたいだし、知り合いではないかもしれないな。私が知っているだけで」

ソウヤたちは先へと進む。

「あんたの知り合いの……知っている守護者たちはこれで四人出てきた。水、風、大地、炎の四姉妹。あれで全部だな?」

「四姉妹というのはそうだが、あと光と闇の守護者がいる。……まあ、彼女たちも分身としてここにいるのなら、という話だが」

ジンは遠くを見る目になる。

「いるのかな。いないのか……。できればいてほしくないなぁ」

「あんたがそう言うってことは、相当なんだな。ヤバそ?」

「君は、光や影を掴むことができるか? それが答えだよ」

老魔術師は気配に気を配る。

「彼女らが本気を出したら、瞬殺だろうね。さすがに何の考えもなしに本体を晒したくはないよ」

「ねえねえ、お爺ちゃん」

ミストが悪戯のばれた子供のように上目遣いを寄越した。

「そういうの、ソウヤの世界で言うところのフラグって言うんじゃないかしら?」

「嫌なフラグだ。あー、まったく嫌な予感がしてきた」

「それもフラグだぞ、爺さん」

通路が開ける。広い空洞に出た。以前、神竜のもとから帰る時に通ったソウヤだが、この地形はまったく覚えがなかった。神竜までの道も行きと帰りでは違うのか――ソウヤはそんなことを思うが、その思考はすぐに放り捨てた。

柱のような岩が立っていて、そこに銀髪の美女がいたからだ。

一人は座っていた。長い銀髪、白銀の鎧。アクセントカラーはパッと見、白なのか銀なのかわからない。戦乙女を思わす羽根兜はつけていなかった。

そしてもう一人は、白銀の鎧に黒のアクセントライン。こちらもロングの銀髪だが、機械的に無表情。座っているもう一人の後ろに立って、入ってきたソウヤたちを見下ろしている。

「噂をすれば、ってやつか」

ソウヤは口元を引きつらせる。

「光と闇の守護者って、彼女たちか?」

「そっくりよね。双子?」

ミストが言えば、ジンは首を振った。

「私の知っている光と闇の守護者は親子だったんだがね……。顔は同じなんだが、私の知らない守護者かもしれない」

「人が来るなんて、久しぶり……」

座っている守護者が、膝の上に乗せている羽根兜に手を置きながら、やんわりとした調子で声をかけてきた。

「ここへは何をしに来たのかしら?」

「目的など一つしかないと思うが?」

ソウヤは、語りかけてくる銀髪の守護者に返した。死者を蘇らせる――それ以外の目的などあるのか?

「どうかしらね。親しい人を復活させようとしているのかもしれない。物見遊山かもしれない。神竜を害そうとしているのかもしれない……」

詩を詠むように、とうとうと彼女は言葉を紡いだ。神竜を殺す?――ソウヤは愕然とする。

「神竜を狙う奴なんているのか……!?」

「いるのよ。神竜を構成する体は、他にはない希少性がある。その血や肉にも不死性があるとも言われている……。本当かどうかは知らないけれど、何らかの力があるのは本当でしょうね」

どこか投げやりにも見える。ジンが口を開いた。

「君は、レイか?」

「ええ、レイ。光の守護者」

彼女は、すっと微笑んだ。

「私を知っているのね。でも、私は貴方を知らないわ」

「だろうね。私の知るレイとはまるで別人のようだ」

そう言うと、ジンは後ろに控える闇の守護者を見た。

「君はリアンか?」

「……」

闇の守護者は答えない。光の守護者――レイは言った。

「彼女に名前はないわ。強いて言えば、闇の守護者。それ以上でもそれ以下でもない。……でもそうね」

レイは頭を上げて、後ろの闇の守護者を見た。

「リアンだって。いい名前じゃない。『無』だって。リアン、リヤン……ちょっと発音が難しいかな?」

「……気に入った?」

闇の守護者はボソリと尋ねた。レイは笑う。

「ええ、可愛いと思う」

「では、リアンで」

闇の守護者は小さく頷いた。

どういうこと?――ソウヤとミストは、ジンを見た。

「私の知る彼女たちは、闇の守護者はリアンと呼ばれていたんだよ。おそらく、彼女たちは私の知っている守護者とまったく別の時間軸なのだろう」

それで――レイは、三人を見下ろした。

「最初の質問に、まだ答えてもらっていないのだけれど」

穏やかに、しかしその瞳は氷のように冷たかった。

「答えてもらっていいかしら? 一応、私たちはここの番人なの。目的のわからない人を通すことはできないわ」

「それは……そうだな」

ソウヤは頷いた。正しく番人だ。

「大切な友人たちを、神竜にお願いして復活させる。それが目的だ」

「死者の復活……」

レイは顔を上げた。

「ここに来る理由としては真っ当なものなのだけれど……。面白くないわ」

「なに……?」

面白くない、だと?――ソウヤはその言い分にカチンときた。命の話をしている。自身も命をかけてこの場にいる。

「私は、人の命はかけがえないのないものだと思っている。だからこそ、復活できる命を私は嫌悪する」

レイは言った。