軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談190話、吹き抜ける突風

人間であったとしたら、頭を吹き飛ばされれば命はない。

だが人の姿をしていても人間ではない水の守護者はその頭を再生してみせた。

「とはいえ、遠隔ではこれは痛いな」

ディーネの体が崩れる。

「まあ、一応仕事はしたってことで、ここは一つ」

バシャリと水となって消える水の守護者。

『バイバイ! アディオス!』

声も遠ざかり、そして何も感じ取れなくなった。岩を打ちつけて痛む体をさするソウヤは振り返った。

「なあ、爺さん……。これ説明できる?」

何やら事情を知っているようなジンに尋ねる。クラウドドラゴンが、壁に叩きつけられ伸びているアクアドラゴンを回収している。

「ディーネの残滓、分身体と言ったところだね、見たところ」

ジンは歩き出した。

「偽物という言い方は適切ではないかもしれないが、水の守護者ディーネの本物とは、私は別の世界で出会っている」

「何か知ってるようなことを言っていたもんな」

ソウヤも、時空回廊の先へと進み出す。

「あちらの世界の守護者は、世界の守り手。危機が訪れれば、それから世界を守るために戦う存在……だったと思う」

老魔術師は懐かしむ。

「二度ほど会ったが、彼女たちは精霊のようなものであり、不老の存在だった」

「彼女たち?」

「ディーネは水の守護者と名乗っていただろう?」

ジンは自身の顎髭を撫でつけた。

「他に火、土、風。それと光と闇がいたかな。この世界の四大竜と同じく、火、土、水、風の四大属性、それを持つ四姉妹。その一人がディーネだった」

「四姉妹!」

あのディーネの他に三人の姉妹がいる。ソウヤは首をかしげた。

「ちなみに、彼女は何番目?」

「三女だ。……その情報はいるのか?」

いらないと思うソウヤだが、複数の姉妹兄弟と聞くと、順番がどうなのか無意識に気になったりしないだろうか?

「それで、本物ではないが異世界の守護者がここにいる。それはどういうことなんだ?」

「それがわからない」

ジンはきっぱり告げた。

「彼女とこの時空回廊の接点がわからないんだ。そもそも世界が違う」

「あんたの意見は?」

「ここにいる神竜と、別世界の守護者が過去に会っていて、ここの番人に自分の分身を置いた説」

どうしてそうなったかはわからないが、ここの守護者として加わっているということは、神竜とそれなりの関係を結んでいることにもなる。

「あとは考えにくいが、ここの神竜の眷属だった説。……それがどうして別世界を守っているのか説明がつかないから、おそらく違うだろうが」

「よくわからないけれど――」

ミストが後ろから言った。

「ここの守護者をやっていて、ワタシたちの前に立ち塞がるなら、返り討ちにするしかないってことね」

「そういうことだな」

ソウヤは立ち止まる。

正面に強いプレッシャーを感じた。例のティラノサウルスっぽい守護者の姿はない。だがそこに何かがいる。

「爺さん……。さっきの、四姉妹って言ったな?」

「言った。……たまたま一人がここに流れついて分身体を置いていった、と思いたかったんだが」

ふっと風が舞い、先ほどのディーネによく似た戦乙女が現れた。銀髪ショートカット。白銀の鎧の差し色は紫。腰に二本の剣を下げている。

「なんだよ、ディー姉はやられちまったのかよ。ダッセ」

男勝りな戦乙女だった。ソウヤは斬鉄を構えつつ、言った。

「爺さん、彼女は?」

「風の守護者、シルフィだ。彼女は素早いぞ。気をつけろ」

ジンが答える。対する風の守護者は、そっと腰に下げた二本の剣を抜いた。

「お前らに恨みはねえが、これも契約なんでな。邪魔させてもらうぜ!」

トルエノ!――シルフィが叫ぶと、突然大型バイクが彼女の足元に現れた。爆音を響かせ、青いボディのバイクがシルフィを乗せて走り出す。

「バイクだぁ?」

騎馬武者よろしく突撃してくる。激しく電撃がスパークし、触れるのも危なそうな姿に、ソウヤは右に、ミストは左に飛んで躱した。ジンは、二歩横に動いて、衝突を避ける。

剣をそれぞれ持っていたシルフィは、そんな老魔術師を見やり、「チッ」と舌打ちした。ハンドルに触れずに、しかしバイクはまるで馬のようにシルフィの意思通りに動く。

――あのバイク自身、意志を持っているのか?

そうでなければ、そもそもあのようにバイクは走れない。アクセルはハンドルのほうについているものだ。それともアクセルが足のステップにでもついている仕様だったりするのだろうか。よくは知らないが。

「ミスト、大丈夫――」

呼びかけるソウヤだが、シルフィとバイクが向かってくるのが見えて、すぐに立ち上がる。

「オレかよ!」

向かってくるバイクはまたも電撃をまとう。どうせこの守護者も先ほどの水の守護者と同じだろう。人間でもなく、分身というのであれば良心も痛まないが、さすがに電気をバリバリとまとっている相手に殴りにいって感電は、ソウヤとしても願い下げだった。

――アーススパイク!

地面から鋭角に尖った岩を出現させる。ディーネの大波を防いだ岩壁も一瞬、脳内をよぎったが、バイクの体当たりで砕かれるのを想像してしまったので、逆にバイクを破壊する方向で岩の柱を突き立てた。

「くそっ!」

シルフィが悪態をつく。瞬時に滑り込むようにバイクを倒して、岩の突起の下を潜る。だが代わりに柱と地面にバイクがはまり、身動きがとれなくなる。

「やるじゃん!」

シルフィは素早くバイクから脱出すると、柱を迂回してソウヤに双剣で斬り掛かってきた。ソウヤも斬鉄を振りかぶる。

「近接戦なら負けねぇ!」

裂帛の一撃は風の守護者の剣にぶつかり、彼女の体を容易く弾き飛ばした。

軽い軽い。軽すぎて手応えを感じない。まるで羽毛みたいで吹っ飛ばした感覚がないソウヤだった。

想像通り、シルフィは距離を置いて、何事もなかったように着地し、好戦的に歯を剥き出した。

だがそこに割って入る者があった。クラウドドラゴンである。灰色髪の女性姿のドラゴンは、目から稲妻を走らせ、電光石火の一撃で風の守護者に殴りかかった。