軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談160話、バァ金属を手に入れて

バァ金属を探したら、宇宙船を見つけた。

「オレも自分で何を言っているのかわからんのだが――」

「ソウヤ。これは宇宙船じゃない。そう見える気持ちもわからなくもないが」

異世界トラベラーであるジンは指摘した。ソウヤは手を振る。

「最初にそう言っていたもんな。覚えているよ」

驚きを表現するちょっとした冗談だ、と言いつつ、ソウヤは地中にぶっ刺さっている空中船を見つめる。

「鉱物の状態で探せばよかったのかなぁ。金属で探ろうとしたから、こんな形で見つかった、と……」

「で、発見したこの空中船、どうする?」

老魔術師は尋ねた。

「君が第一発見者で、ここは所有する国も個人もいない絶海の孤島だ。異世界の冒険者ルールを持ち出すわけではないが、君の好きにしていいものだ」

ジンはグルリと空中船のまわりを歩く。

「表面の装甲板を剥がして、武器に加工してもいいし、船を修理して自家用車代わりにしてもいい。技術なら私が持っている。浮遊島に運び込むこともできるが?」

「うーん……」

ソウヤは腕を組んで唸る。見守っていたフォルスが首をひねった。

「何を悩んでいるの?」

「ん? こいつな、一応この世界の歴史的なオブジェクトなんだよ」

「オブ……なに?」

フォルスは眉をひそめる。若い彼には難しい言葉だったらしい。

「物体とか対象とか、そういう意味だよ。それはともかく、この空中船がここに墜落しているというのは、遥か昔のことなんだろうけど、この世界の歴史において重要な意味を持つ……かもしれないし、そうじゃないかもしれない」

「どういうこと?」

「見る人によって価値が変わる代物ってことさ」

「ソウヤ」

ジンが口を開いた。

「一応言っておくが、この船は本来はこの世界の物ではない」

「わかっているよ爺さん。でもこの世界に、異世界から流れ着いた船が墜落したっていうのは、この世界における出来事の一つだ。その手の分野の研究者や学者にとっては、歴史の一ページに残るようなことなんだよ」

「それで?」

ジンは片方の眉を吊り上げた。

「この歴史的資料になるかもしれない空中船をどうするつもりなのかな?」

「ああ、そうだったな。……オレは、こいつをこのままにしておきたいと思ってる」

南海の孤島でずっと見つからずに放置されていたものだ。これからもずっと見つかることなく、自然と一体になるかもしれない。

だが、それでもいいと思っている。

「こいつから装甲板を剥がすとかはやめておく」

「そうか、わかった」

ジンはあっさり引き下がった。この老魔術師はいつも若者の選択を尊重するのだ。

フォルスは首を横に振る。

「なんかちょっともったいない気もするな」

「なに、また探せばいいさ。世界は広いんだ」

空中船に背を向け、空洞から外へと歩き出すソウヤ。フォルスも歩きながら言う。

「どうかなー。これ、とっても希少なんでしょ?」

「そうさなぁ……」

ソウヤは視線をさまよわせる。

「でも、ロッシュヴァーグも、小石くらいとはいえバァ金属を手に入れたし」

「ちょっといいかな、ソウヤ」

「なんだい爺さん」

ソウヤが顔を向けると、ジンは自身の顎髭を撫でつけた。

「お探しの金属は、あくまで自分で見つけることにこだわるか?」

「いいや」

時空回廊の奥に行くための武器が必要というだけである。神竜に会う前に立ちふさがる守護者と戦う時、ソウヤは壊れない武器を欲しているのだ。

「ガルたちを甦らせるのが本筋だ。バァ金属が手に入るんなら、俺は市販品だって構わないぜ?」

一般には売られていないが。

「そうか。それなら、私がバァ金属を用意しよう」

「なに?」

その申し出にはさすがにソウヤも驚いた。

「持っていたのか!? 前に聞いた時は――」

「手元にはなかったよ。あの空中船があった異世界で会ったのが私にとっては最初なんだがね。ずいぶん昔なので苦労したが、あれの作り方を思い出した」

なかったのは本当だが、作れるのだから話は変わってくる。

「作れるのか?」

「自慢じゃないが、私はその金属で戦艦一隻を作ったんだ。とても頑丈で、いいフネだったよ」

昔を懐かしむジン。ソウヤは口をあんぐりと開ける。

「せ、戦艦ね……。そりゃあ、それからしたら剣の一本や二本、なんでもないか」

「君が直接加工するわけではないからな。私が作ってもいいが……いや、ロッシュヴァーグ氏に依頼するんだよな? なら、彼にも加工方法について教えておかないとな」

「爺さんは何でも知っているんだな」

「伊達に長生きはしていないよ。私が何年生きているか知っているか?」

「知らない。だけど数千年前のカイザードラゴンってのがあんたの変身だっていうなら、四桁歳、ひょっとして五桁言っているかも。……どうだ?」

「さて、私も覚えていないよ。大昔過ぎてね」

ジンは笑った。

「些末な話だよ。世界の創造から終焉。その途方もない年月からすればね」

・ ・ ・

クレイマンの浮遊島に戻ったジンは、さっそくバァ金属を生成し、ソウヤのもとに届けた。

「これ、本当に作ったのか?」

「じゃあ、どこで手に入れたと?」

ジンは意地悪く言う。

「さあ、これを持ってロッシュヴァーグ氏のもとに行ってきなさい。仲間たちを復活させるんだろう?」