軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談128話、敵陣先行

時間は少し巻き戻る。

ルフ・ペルスコットの命令を受けたペルスコット家の戦闘部隊は、魔王軍の地下拠点である地底城の警戒線に飛び込んだ。

彼ら魔族も、城にこもっているわけではなく、地下空間全体に目を光らせていた。それもこれも、ドラゴンを怒らせ、その報復に備えてのことだ。

人間がこの地底深くの拠点に気づくことは、ほぼないだろうと思われる。が、冒険者あたりが偶然引き当てる可能性もなくはない。それもあるから、ドラゴンだけでなく人にも警戒していたのだが……。

「――警戒、ザルだねー、これは」

若く、忍者風の男である。哨兵のリザードマンの後頭部を貫いたダガーを抜き、ペルスコットの戦闘員は視線を油断なく走らせる。

地下空間への侵入口の一つを見張っていた魔族兵の分隊は、音もなく忍び寄ったペルスコットたちに始末された。

「嗅覚や聴覚は、人間より優れているんじゃなかったのか?」

「ピンからキリまで、ってやつよ」

中年スキンヘッドのペルスコットが言った。

「人間にだってスペシャルもいれば、ボンクラもいる。それと同じよ」

「フン。ボンクラを見張りに立てるほど、ボンクラなこともない」

ニンジャは冷淡に吐き捨てた。

「しかし、こうあからさまに殺したら、敵に侵入者がいますって知らせるようなものだろ」

「お前、話を聞いてなかったの? オレたちは囮。敵に異変が起きていると知らせて、ノコノコやってきた魔族をぶち殺す!」

「あー、そういえばそうだったね。そこだけ聞いていたわ」

ぶち殺す、のところだけ。

「でも、ここの哨兵が異変に気づくまで、どれくらいかかる?」

「オレだって知らないよ。でもまあ、それを見るのも仕事のうちなんでしょ」

「フーン、面倒くさいことはお前たちに任せるね」

ニンジャは振り返る。そこには他にもペルスコットの殺し屋戦闘員が複数いる。

「カイガン、そっちはどうなっている?」

「一応、見張りは機能しているようですよ」

目を閉じている魔術師風のペルスコットは、涼やかな声で答えた。

「定期的に魔力サーチを飛ばしていますね。敵も間抜けな哨兵だけに見張らせているわけではない、というところです」

「さすが魔族の総本山ってところか」

ニンジャはバカにした調子で、そう評した。魔術師――カイガンは目を閉じたまま小首をかしげた。

「どうします? 敵のサーチは、吸収して返さないようにしていますけど、ありのままに返しますか?」

「そんなことをしたら敵にバレる」

「囮なんだから、バラしたほうがいいのでは?」

「バラ……す」

仮面のペルスコットが唐突に言った。周りのペルスコットは、顔をしかめる。

「誰だい、こんな殺人狂を陽動メンバーに入れたのは?」

「ルフ様でしょ」

「殺人狂だから、陽動メンバーに選ばれたのでは?」

「こいつは妄想と現実の区別ができていないねぇ。暗殺者としては三流」

ニンジャがそう言うと、スキンヘッドが睨んだ。

「あんたも大差ないと思うよ。……それより気づいている?」

「……」

ペルスコットたちは顔を上げる。しばしの沈黙、そして周りの静寂。カイガンは口を開いた。

「思ったより早い反応でしたね。敵も中々優秀なようで」

「本拠地なんだから、そうでなくては困るねぇ」

ニンジャが構えれば、仮面のペルスコットは指の間にそれぞれ刃物を挟んだ。片手に四本、両手で八本。

「おれ、バラ、す……」

爪付きの手甲をつけているように見えるが、指で挟んでいるだけである。

「ゴーリキがすっかりその気だけど、いいのか? 暗殺者らしくないけど」

「囮なんだから、いいに決まってるでしょ」

スキンヘッドは不敵な笑みを浮かべた。

「敵を殺せばいいのよ。それが暗殺者ってものでしょ」

「それではただの殺人鬼では……」

カイガンがツッコミを入れた。

「あくまで仕事ですよ。そんなんだから暗殺者はヤベー奴だって勘違いされるんです」

「人を仕事で殺して、ヤベー奴じゃないってのは無理があるねー」

すっー、とニンジャが、その姿を消していく。

「でも、魔族を殺したら、英雄ってそれ本当?」

・ ・ ・

ところ変わって、歩国。

ソウヤたちが城を離れると聞いて、ナダをはじめ、歩国一同は残念がった。

「もっとゆっくりしていけばよいのに……」

「悪いな、ナダ。ちょっとした野暮用ってやつだ」

魔王軍残党の拠点――地底城を魔力の流れで発見したソウヤである。まだ歩国から歓待を受けたいアクアドラゴンやクラウドドラゴンも、魔王軍残党と聞いたら飛び起きるくらいの反応で、動き出した。

その時のアクアドラゴンの言葉が――

『いつ行く? 今すぐ行く!』

魔族絶対許さない四大ドラゴンは、別の意味で活き活きし始めた。敵の拠点と聞いたら、ミストも闇竜も、すぐに行くとばかりに準備を始めたので、ソウヤもそれに倣うのである。

敵は拠点を置いて逃げない――とは思うが、そういえばあの地底城は地下を移動すると聞いたことがあるので、急ぐにこしたことはない。

「世話になったな。まあ、そのうちまた顔を出すさ」

「三年後、というのは勘弁してください。最低でも半年、いや一年に一回くらいは来てください」

「おいおい、数年、国から離れていたお前が言うのかよ」

ソウヤは皮肉げに笑うと、ナダと握手する。

「奥さんを大事にな。子供が生まれたら、また来るからさ」

ナダの隣にいる、彼の人生の伴侶となるナギが赤面する。こういうのはセクハラ――とはならない。何故なら、子供が生まれたら、名付け親になって欲しいと二人から頼まれているから。

「いい名前、考えておかないとな」

「名残惜しいですが、再会の時を楽しみにしています、ソウヤ殿」

ナダは頭を下げるのだった。