軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日談113話、都の裏で

「端的に言ってしまうと……」

ナダは、ソウヤに面と向かって告げる。

「あなたは、やはりおかしい!」

魔王の戦いで瀕死になったのはわかる。相手は魔王だ。勇者とて無傷では済まないのだろう。

しかし、その後、ドラゴンの血でハーフドラゴンになった。人間が半分とはいえ、ドラゴンになったのだ。

それ自体、驚きは隠せないが、状況からみてもまだ許容はできる。ドラゴンの血には、治癒能力があって、嘘か本当か、寿命が伸びるとか不老不死になるとかいう伝説もあったりする。突然変異でドラゴンになってしまった、というのも、百歩譲ってあるかもしれない。

だがその後、伝説の四大ドラゴン、アースドラゴンの後継に選ばれたのは、さすがに謎過ぎる。

生粋のドラゴンでもない元人間を、いきなり大地属性代表ドラゴンにしてしまう。……しかもトップのアースドラゴンがそれを認めたと言ったら、大地属性ドラゴンたちも、特に反発もなく、それで通ってしまったというのだからわけがわからない。

人間の王族にたとえれば、よりその異常性がわかる。顔見知りという理由だけで、平民を次の王様に指名するようなものだ。これを人間社会でやったなら、非難囂々、驚天動地の大騒ぎとなろう。

「どうしてそうなった……」

「オレにもわからない」

ソウヤは快活に笑った。細かいことを気にしていないというのか。あるいは、これが勇者の器量というものか。来るものは拒まず、受け止める。

ナダは、商会に属した頃より、矢面に立っても堂々と受け止め、進み続ける勇者の背中に頼もしさと羨望の感情を抱いていたが、ソウヤは相変わらずのようだった。

それはそれとして、ここしばらくは、魔王軍の残党絶対殺す集団となったドラゴン族の代表として、討伐にあちこちに出没していたという。

「いやだってね、ドラゴンたちがそれぞれ勝手に残党狩りやってたら、世界が滅ぶだろう?」

あはは、と軽く言うソウヤであるが、その言葉の意味を考えれば考えるほど、実はこの勇者、魔王軍残党だけでなく、ドラゴンからも世界を守っている、いや守り続けているのでは、とナダは思った。

そう思った時、ナダは泣いた。

「ソウヤ殿……」

「おいおい、いきなりなんだ?」

大の大人が泣き始めて、ソウヤは困惑する。ナダは鼻をすすった。

「魔王から世界を守って死んだとされながらも、この三年間、陰で世界を守り続けていたのですな……。あなたこそ、本物の、勇者だ――」

「何か感動ポイントがどこかわからんが、死んだことにしたのは体のことでリハビリしていただけで、それがなければ、生きてましたって出てたぜ?」

「では、今はもう世界には――」

「あー、いや、そういや、まだ知らないな、うん」

ソウヤは視線を逸らした。

「知っている人はいるけど、まだ世間では死んだことになっているわ。……魔王軍の残党を片付けてからの方が、いいかなーと今は思ってる」

勇者が、魔王を倒したのに残党を追っている、と世間が認知したら、まだ魔族が何か暗躍しているのではないか、と人々が不安を抱くのではないか。

「そーいうところなんですよぉ、あなたは!」

うおおっと、ナダは大泣きした。周囲の目が気になるソウヤ。少し離れて都観光していたドラゴン一同は、他人のフリを決め込み、それぞれ明後日の方向を向いている。

「まあ、それはそれとして、だ。ナダ、オレたちは、この歩国で、残党が何かをやらかそうとしているというフォルスからの念話を聞いて来た」

「おおっ、そうでしたか。魔王軍の残党狩りにソウヤ殿が来てくれたなら、鬼に金棒――と」

後ろのドラゴン一同を見やり、ナダは現実から目を背けたくなった。彼女たちが残党と遭遇したら、歩国が滅びてしまうのではないか、と一瞬でも思ったのだ。

もちろん、本人たちの前でそれは言えないのだが、アクアドラゴンやクラウドドラゴンが出向いている時点で、ドラゴン族が本気で『残党滅ぼすべし』と考えているのが理解できた。

「しかしソウヤ殿、魔王軍の残党が何を企んでいるのか、まったくわからないのです。グーファイで聞いたのは、人類側を惑わそうという嘘の計略だったのでは、とも思えてきた次第で」

あまりに平和な歩国を見ていると、そう思えてくる。嘘に踊らされただけではないか。これが嵐の前の静けさでないことを祈りたいが。

「――と思うだろ?」

ソウヤは真顔だった。

「正直、ナダの言う通り、残党が何をやろうとしているのか、あるいはやっているのかの情報がほとんどないから、こちらでも調べてみた。これを聞いたら、たまげるぞ」

「……魔族がすでにこの都に入り込んでいる、と」

「城にいる王族が、全員魔族に入れ代わっていた」

「っ!?」

がたん、と思わず席を立つナダ。声が出ないということはあるのか、と一瞬脳裏をよぎった。

「グーファイじゃ、姫様一人が入れ代わっていたって話だけど、ここでは全員」

「ソ、ソウヤ殿! 皆、無事なのですか?」

「城の地下にいる。だがこの地下がな……すげぇダンジョンみたいになっているんだが、ナダは何か知ってるか?」

「地下……!」

何か知っている、どころではない。これは歩国の王族とそれに近しい者しか知らない秘密。ふらっとやってきた勇者が普通に知っているはずがないものだ。

「ソウヤ殿、何故、地下のことを――」

「あ、これは王家の秘密だったか? すまんすまん。オレ、アースドラゴンの力を受け継いだから、大地とか、地下のものとか『見る』ことができるんだよ。その過程で魔族を探していたんだけど、それで城に奴らがいて、その地下で何かやっているのがわかったんだよ」

種明かしをするソウヤ。にわかには信じられないナダだが、ソウヤは城の地下にある迷宮の存在を言い当てた。彼には見えているのだろう。

ナダは席につき、一息ついた。

「ソウヤ殿、地下のことは、お察しの通り、我が国の機密。他言はなされないよう」

「心得た」

ソウヤは頷いた。

「で、残党の狙いってのは、その地下の機密に関わることと見て、間違いなさそうか?」

「おそらく、そうでありましょう」

ナダは眉間にしわを寄せた。

「何故、奴らが我が国の秘密を知ったかはわかりませんが、放置はできません」