軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第627話、ツァコモス遺跡

リムが聞いた魂の悲鳴は、暗黒大陸で発生したものだという。場所が分かるというので、速度の出るプラタナム号とサフィロ号で、暗黒大陸に舞い戻った。

行けども広がっているのは、焼け野原。ファイアードラゴンと眷属たちが暴れ回った結果、暗黒大陸はさらに不毛な土地へと変わった。

やがて、真っ黒な木々がひしめく、巨大な大森林に到達した。

「この辺りは、ツァコモスというんだ」

情報畑の人間であるカマルは言った。

大陸の東北方面にある地で、闇の森と呼ばれる大森林地帯である。

ソウヤは唇の端を吊り上げた。

「この辺りには詳しいのかい?」

「魔族のいる大陸だからな。公式にはお前さんが死んだことになっている世で、魔王軍の残党が悪さしないように、調べてまわったからな」

カマルは当然という顔をした。

やがて、プラタナム号は森の奥、遺跡の上空に差し掛かる。

『生命体の反応を検知。遺跡に反応は50ほど』

「魔族かな?」

ソウヤが振り向けば、ジンは腕を組んだ。

「だろうね。我々が探している装置は、この辺りにあるだろうが、そう簡単にはいかなそうだな」

「あの……」

レーラが口を開いた。

「その装置、私たちに向けられるという可能性はありますか?」

「ないとは言い切れないが――」

「こっちの人数を考えれば、あんまり効率よくないんじゃねえかな?」

ソウヤは顔を上げた。

「プラタナム、着陸はできそうか?」

『はい、あまり上等とは言えませんが、無理矢理切り開いたようなスペースがあります』

モニターを表示するプラタナム。木々が左右に無造作に倒されている。飛空艇が6、7隻が着陸できそうだった。

ソウヤは着陸を命じて、遺跡の探索にかかる。目的は、魂収集装置の捜索。サフィロ号も降りて、エイタとリム、椿がやってきた。

「感じるわ……。魂が近くにある」

黒猫もどきのリムは、エイタの肩で目を細めた。非常に興奮しているようで、さすがにソウヤも引いた。

エイタが苦笑した。

「装置は、おそらく魂がたくさん感じ取れる場所だと思う。リムが導いてくれるさ」

「探す手間が減るのはいいことだ」

ソウヤは皮肉げに言うのだ。斬鉄を手に振り返れば、竜爪槍を持ったミストがニヤリとした。

遺跡へ向かうソウヤたち。岩山の上にあるその建物は、一見して城のように見えたが、よくよく見れば東南アジアにあるような寺院を連想させた。神殿だったのかもしれない。

長い長い石の階段。幅は広く、それを上がっていくのはひとつの禊のような気分になる。レーラなど一部が、足がつらくなるくらい長い階段を登った後、ようやく入り口についた。

夕焼け空。雲の隙間から見える空は赤い。

「行くぞ」

先導にガルとセイジが出た。入ってすぐの広間。人形のような岩飾りが、柱のように複数、並んで立っている。気味が悪かった。

ガルとセイジが左右に分かれて前へと進む中、ミストもその後について、敵が出てくればすぐに応戦する態勢になる。。

「気をつけて……。近くにいる」

警戒しつつ、ソウヤたちは、遺跡内に足を踏み入れた。

「なあ、爺さん。ここにザンダーがいると思うか?」

「いてくれれば、話が早いのだがね」

老魔術師は微笑した。

「我々が満更知らない相手でもないからね」

「魂収集装置をくれと言ったら、渡してくれるかな?」

「さあ、彼らの目的である『主』とやらを復活させたら、くれるかもしれない」

「魔王並に厄介な奴ならごめんだぞ」

ソウヤがそう言った瞬間、さっと肌が冷たいものを感じ取った。ガルやミストが身構え、ソウヤもまた気づく。――来る!

『アイ・ヤーァァ!』

甲高い奇声をあげて、灰色ローブを身につけた魔族たちが一斉に飛び出して、襲いかかってきた。

手には包丁を大型化したような片刃の剣や、斧の刃のついたナックルダスターのような武器を指にはめ、向かってくる。

しかし、ミストもセイジもガルも慣れたもので、武器を向けてきた者をあっさり返り討ちにする。

「こいつら魔術師じゃないのか?」

『ヤアァァー!』

刃を振り下ろしたローブ姿の魔族を斬鉄でホームランにするソウヤ。ジンは右手を向けて、魔族を魔力で宙へと飛ばす。

「どうかな。魔法ではなく、武器を抜いているということは、宗教関係の武装信者かも」

「なるほど、ねっ!」

迂闊に飛び込んできたローブ魔族を、一撃で叩き潰す。

「話し合いどころじゃねぇな」

問答無用で攻撃されたのでは、反撃していくしかない。――と!

雷鳴が轟き、ガルが吹っ飛ぶのが見えた。敵の魔術師!

靑いローブをまとった、オーク魔術師が、両手から青い電撃を迸らせ、仲間たちに向けて放ってきた。

セイジは剣で、電撃を弾きつつ、素早く後退して近くの岩飾りの裏に引っ込んだ。その間に、青ローブ・オークの側面に回り込んだミストが、飛びかかろうとして、電撃のフルバワーを浴びせられて吹っ飛んだ。

奇声をあげて、電撃をばらまくオーク魔術師。しかし――

「爺さん、反射くれ」

ソウヤが言えば、直後、斬鉄が青く光った。飛来する電撃を、ソウヤは斬鉄で叩くと反射魔法が作用して、電撃は跳ね返った。

『フォオォォォォー!!』

オーク魔術師が自分の電撃を浴びて、宙を飛んだ。

「さすがだ、ソウヤ」

「あんたもな、爺さん」

ニヤリとしつつ、ソウヤは進む。すると奥から、ゾロゾロと灰色ローブ魔族が駆けてきた。

「面倒くせぇ!」

ソウヤは斬鉄を思い切り振りかぶり、斜め前にあった石飾りに斬鉄の側面をぶつける。豪腕から繰り出される圧倒的パワーが石飾りを粉砕し、散弾よろしく魔族たちに突き刺さった。

やがて場は制圧された。敵は排除。電撃を食らったミストも、ピンピンしていて、ガルはレーラから治療を受けた。人間とドラゴンの再生力の違いである。

「ザンダーはいなかったな」

「奥にいるかもな」

ソウヤたちは、さらに遺跡へと踏み込んだ。