軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第607話、ジーガル島、制圧

上陸部隊本営前にソウヤが駆けつけると、救護所の手前で、グレースランド王国の騎士たちが、魔獣を阻んでいた。

腕を食いちぎられる騎士、あるいは放たれた光弾に鎧ごと貫かれて倒れる騎士。ドラグゥ――その魔獣兵器は強い。

だが、そんな中にあっても、リアハは魔断剣ソラス・ナ・ガリーで、黒き魔獣を両断した。ドラグゥが角から光弾を放つが、リアハはそれを剣で弾き、いや、跳ね返して逆に一頭を返り討ちにした。

他の騎士たちも奮闘しているが、リアハの実力は一歩も二歩も上であり、彼女がいればこそ、何とか戦線が保てていた。

「リアハ!」

「ソウヤさん!」

駆けつけた銀の翼商会の面々が、横合いから魔獣を攻撃する。ミストが、ソウヤが、ガルが切り込む中、奮闘する親友を見かねたソフィアが、光の槍の魔法をシャワーの如く撃ち込んで、後続のドラグゥを削った。

素早く飛び込んできた魔獣を斬鉄で受け止め――いや、剛力に任せて地面に叩きつけるソウヤ。

「確かにそこらの魔獣よりは強いだろうが、まだ軽いな」

世の中にはもっと打撃の強いモンスターは山ほどいる。スピードがある分厄介だが、捌けないほどではない。

仲間たちが逆襲に転じる中、ソウヤはリアハに合流した。

「よく守った! 怪我はないか、リアハ」

「はい! 助かりました」

リアハは安堵したように微笑んだ。しかし一見すると、彼女の鎧や肌は血で真っ赤である。

――そのついている血は魔獣の返り血か?

救護所前では、新たな犠牲者でいっぱいになっていた。グレースランド王国の騎士たちも負傷者が多く、レーラがやってきて聖女の治癒を使っていた。

「怪我がないならいいが……大丈夫か?」

ソウヤがジェスチャーをすれば、リアハは自分の頬を撫でて、ついている血に気づき、別の意味で真っ赤になった。

「これは……その、お見苦しいところを」

「見苦しくなんてないさ。怪我がないなら、いいんだ。……よくやった」

戦いは、収まりつつあった。本営と救護所がやられていれば、上陸部隊にとっても大打撃を受けるところだったが、リアハとグレースランド王国の騎士たちのおかげで、崩壊の危機は去った。大殊勲である。

後は、あの魔獣を掃討すれば、ジーガル島攻略作戦はひと段落つくだろう。

・ ・ ・

魔獣ドラグゥの出現により、一時的に混乱は見られたものの、人類連合は、ジーガル島の攻略に成功した。

軍港敷地内に入り込んだ魔獣も、ミストやアクアドラゴンに狩り出されて、駆逐された。恐れ知らずにもドラゴンに戦いを挑んだことで、特にアクアドラゴンを大いに挑発させたらしく、殲滅させられたのだった。

「あの狼もどき、私に魔法を撃ち込んできた!」

信じられない、とばかりに憤慨していたのは、人化したアクアドラゴン。ツインテールをブンブン振り回して怒りを表現していた。

人類連合の上陸部隊は、手早く探索と、残っている敵施設の破壊を行った。破壊といっても、上空に呼び寄せた飛空艇に、攻撃目標を指示して艦砲射撃をしてもらうだけではあるが。

島に飛来した魔王軍飛空艇艦隊も、人類連合艦隊によって全滅した。艦隊にも被弾した艦はあれど、撃沈された艦はなく、完全勝利と言ってよいだろう。

「――まあ、ギリギリ沈まなかったというだけであって、長期間の修理が必要なものも少なくないがね」

ジンは、そう表現した。ソウヤのプラタナム号が、戦場をかき回しただけあって、被害を抑えることができた、という話であり、それがなければ、もっと被害は大きかっただろう。

「それでも、やはり沈没艦ゼロは、勇者ソウヤの名声を、末永く後世に語り継がれることになるだろうね」

老魔術師は楽しそうだった。

「例を出すなら、日本海海戦の東郷元帥並みに」

「オレはそんなんじゃないぞ」

そっち方面はあまり詳しくないが、日露戦争の頃の英雄を引き合いに出されても困ってしまうソウヤである。

「総指揮官ってだけであって、個々の働きがあってこその勝利だ。各グループが頑張ったからだろう?」

「そう、大なり小なり、戦果に差はあれど、皆が命を賭けて頑張った。だが歴史というのは、往々にして、それを率いた指揮官の名前が残るものだ」

勝った指揮官と負けた指揮官――そして特に名が残るのは勝者のほうである。

「日本海海戦だって、個々の戦隊指揮官、艦長、士官、下士官、水兵すべてが一丸となって戦った結果だ。それと同じだよ」

そうは言われても、自分のことはどうでもいいというソウヤだった。

地上での検分を進め、例のドラグゥが現れた森の施設にも足を伸ばした。ニーウ帝国の兵が、犠牲になった同胞の遺体を回収している。

ソウヤはジンと、魔獣の調査を進める。

「――この魔獣は敵味方の区別がついていないようだ」

「ここにいた魔族兵も、魔獣にやられているな」

放置されている魔族の死体には、魔獣に引き裂かれたり、腕や足を噛みちぎられたものも散見された。

「光弾を撃つなんて、ただの魔物じゃないぜ?」

「十中八九、兵器として改造された生物だろうな」

施設の中を歩く。魔獣はここを通って外に出たらしく、たまに出くわす死体は、すべて魔族ばかりだ。

「おそらく、これも対人類戦争に使うつもりで作られていたのだろうな。……だが敵味方の区別がつかないのでは、まだまだ実用段階とは言えない」

「でも、奴らは使ってきたぜ?」

「それだけ追い詰められていたということだろう」

ジンとソウヤは、地下の巨大飼育場に出た。ドラグゥを百以上は軽く飼育できるスペースがある。

「これが、本格的に運用できるようになったなら、魔王軍との戦いも厄介だぜ」

「施設がここだけなら、その心配をしなくて済むのだがね」

苦笑する老魔術師である。

今後のために、施設にある資料を回収した後、ソウヤたちは艦隊に戻った。上陸部隊を撤収させ、人類連合軍はジーガル島を後にした。

ジーガル島攻略作戦は、人類側の勝利で幕を下ろしたのである。