軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第608話、戦勝の流れ

人類連合、魔王軍ジーガル島を攻略!

その報は、大陸中を駆け抜けることになった。

ジーガル島攻略作戦を終えて帰還した各国の連合艦隊は、一度それぞれの国に戻った。勝利の報告は、各国それぞれが大々的に発表したことで、ソウヤたち銀の翼商会も、各国からの戦勝会やら式典に引っ張りだことなる。

「……」

「そんな憂鬱そうな顔をしても駄目ですよ」

レーラが、ソウヤをなだめるのである。

「勇者ソウヤの復活――あなたは一度亡くなったことになっていたのですから」

「おかげで、色んなところから何かしらの招待が来ているよ」

ソウヤは、あからさまな溜息をつくのだった。

エンネア王国で、銀の翼商会として活動する際、勇者と同じ名前の別人で売り込んでいたソウヤである。

今回のジーガル島攻略は、その勝利を喧伝し、人類側に魔王軍の脅威を知らせ、対抗するための団結を促すものとして重要だった。

だから、ソウヤは本物の勇者として、今後活動しなくてはならなかった。もう別人です、は通用しないのだ。

「エイブルの町に、バッサンの町、ルガドークもか……? まあ、色々」

うわぁ――ソウヤは頭を抱えるのである。行けば、ジーガル島攻略の顛末も聞かれるに違いない。

艦隊の総大将として戦いました、大勝です、なんて。自慢しているようで、ソウヤの性に合わなかった。

「今回のことで、大陸の中小国も、人類連合に参加を表明しているとか」

レーラがお茶を淹れてくれる。ソウヤは一息入れる。

「耳が早いな」

「最近は、通信機のおかげで、国からも知らせが入るようになったんですよ」

――グレースランド王かな……。

ソウヤは凝りをほぐすように首を回す。

「ジーガル島の攻略で、魔王軍って存在が広く知られたってことだからな。十年経って魔王軍が再び動き出したって」

危機感。前大戦の記憶が、人々を動かしたのだろう。それも、すでに戦争は始まっているって。

今回の攻略作戦に参加した国には、無償でトルドア船を2隻プレゼントすることになっている。

すでにリッチー島へ戻ったジンが、それらの船を用意し、それぞれの国に届ける準備を進めている。

レーラが向かいの席に座った。

「参加表明した国からも、飛空艇の購入希望が来ているそうですね」

「ああ、殺到している」

国だけでなく、個人のお金持ちからも、銀の翼商会に小型の飛空艇でも、という問い合わせがきていた。

「オレらが古代文明の飛空艇墓場を見つけたってさ」

「墓場……ですか?」

小首を傾げるレーラ。

「うん、墓場。現代の飛空艇がほとんど発掘品だからな。そんな大量の飛空艇が眠っている場所なんで、誰が呼んだか、墓場なんだってさ」

勇者ソウヤの知名度が復活すると同時に、銀の翼商会もそれに引っ張られる格好で有名になった。

行ったことのない国々にも知られた結果、貴重な飛空艇を買える商会として、問い合わせが集中している。

唯一無二の品を扱う商会が有名になれば、何もしなくてもお客のほうからやってくるのだった。

「またまた儲かってしまうなぁ」

ソウヤは目を細めるのである。商会メンバーの給料は若干アップ。だがボーナスという形でドカンとお支払いする。

このあたり、きちんとしておかないと、毎月の給料がこんなにある、と勘違いされて、元に戻った時に不満を抱かれてしまう。人間は損得にうるさいのだ。

「そんなわけで、各国は魔王軍対策のために軍備を整えたりするんだが、オレたち銀の翼商会は、飛空艇や通信機などの注文に対応しないといけない」

ぶっちゃけ忙しい。一戦終わって、次までのんびり休養とはいかなかった。

「商会を名乗っている以上は、ここが稼ぎどころではある」

「商会としてはよいことですよね」

レーラはニコニコしている。

「でも、ソウヤさんは、あまり嬉しそうではない。何か気掛かりでも?」

「気掛かり? そりゃね」

飛空艇などの商品の『仕入れ』については、ジンとリッチー島の遺産のおかげで全然問題はない。

クレイマン王の遺産――というか、あの王様は、保存品を引っ張り出しているだけでなく、その豊富な資財を用いて、新しく生産しているのではないか、とソウヤは疑っている。

「商会としてはいいんだけど、勇者としてはね……。魔王軍、そして魔王の動きが気になる」

ジーガル島の大軍港を落としたくらいで、人類への報復を諦めるほど柔な魔王軍ではない。まだ見ぬ戦力を以て、魔王軍は侵略の準備を進めている。

魔族同士の内乱を収めたら、次は人類なのだ。

・ ・ ・

暗黒大陸上空。天空城の玉座に腰掛ける魔王ドゥラークは、部下であるブルハから報告を受けた。

「ジーガル島がやられたか」

「はっ。すでにウェルド大陸では、人間どもは連合を組み、有力な飛空艇艦隊を整備しております」

忌々しいことに、ジーガル島を攻め落としたことを声高に叫び、人間たちは士気を上げている。

「大陸侵攻軍はどうした?」

「恐れながら。壊滅したものと思われます。現在、現地に偵察員を派遣し、確認中です」

「そうか……」

ドゥラークは、それ以上は言わなかった。

魔族統一を果たしている間に、人間たちは先手を打ってきたのだ。後手に回っている上に、現状、ドゥラークが指示しなければ報復もできないことに、ブルハは内心悔しさを感じていた。

「よい。いずれ雌雄を決するだけのこと。今は、それでよい」

ドゥラークは、やはり現時点での反撃を命じなかった。