軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第583話、クイント組の帰還

プラタナム号の性能は、さすがの一言だった。

ソウヤの操船の下、単艦行動の魔王軍の飛空艇を撃沈した。敵はわずかに反撃してきたものの、それが白銀の船体をかすめることはなかった。

さすがかつての勇者が乗り回した飛空艇である。

ソウヤたちは、グレースランド王国に戻り、勇者遺跡のあるスフェール渓谷にプラタナム号を停泊させた。

「おお、これが勇者の飛空艇か……!」

グレースランド王も、アダマース号より小ぶりながらも先鋭的なプラタナム号の姿に感銘を受けたようだった。

「美しい船だ」

「アダマース号も綺麗な船ですよ」

ソウヤはお世辞でも何でもなく言った。実際のところ異世界船であるアダマース号も優雅にして、輝くような船体を持っている。

かくて、プラタナム号は銀の翼商会に合流した。行商活動のメインは、これまで通りにゴールデンウィング二世号であり、ソウヤはそちらへ戻ることになる。

プラタナムは言った。

『すでに起動しているので、ディバインブレードは抜いてしまっても結構です。……それとこちらのリングをお渡しします』

「これは?」

『交信用リングです。それを身につけていれば、船を離れていても私とお話できます』

「それはいいな」

ゴールデンウィング号に乗っている時に、敵船と遭遇したりした時とか、遠隔で指示を出せるということだろう。またはその優れた索敵装置で何かを発見した時の通報とか。

『また、勇者ソウヤの位置を把握することもできます』

「発信機みたいだな……」

監視されるのは嫌だと思うが、敵地に乗り込んでいる時はナビゲーションの役に立つかもしれない。

『短距離でしたら、転移もできます』

「え……?」

いま、転移と言ったか? ソウヤは目を丸くする。

「転移はできないとか言ってなかったっけ?」

『私自身は、転移機能はないと申しただけです。クルー自体はできないとは言っていません』

「できるとも言わなかったけどな。乗員は転移できるわけだ」

『はい』

「つまり、オレをゴールデンウィング号に転移させたり、逆にゴールデンウィング号からこっちに転移させたりできるってことだな?」

『そうなります』

いちいち船同士を接舷させなくてもいいということだ。

「便利だな。凄ぇや」

『お褒めに預かり恐縮です。寂しかったらいつでもお声掛けしてください。私は暇なので』

「お前が寂しいんじゃないか」

苦笑するソウヤだった。この勇者専用飛空艇は、ずいぶんと人間らしいことを言うものである。

歴代勇者がプラタナム号を利用して、そこで人間らしく振る舞うよう経験を重ねてきたのかもしれない。

・ ・ ・

クイント王国の都観光に残った組が合流した。

「――お帰り、オダシュー。ご苦労だったな」

ソウヤは、観光組の面倒を見てもらった元カリュプス幹部に声を掛ける。

「ただいま戻りました。一名も欠員なし……なんですが」

非常に言いづらそうなオダシュー。ソウヤも、ゴールデンウィング号の甲板にいる人数に眉をひそめた。

「増えたな」

「はい……」

「オレに紹介してくれないかな。……誰だ? あの美人さんは」

見目も麗しい女性が、カーシュとエルフのダルと話し込んでいる。――どこかで見たことがあるような気がする。

「……エルフだな」

耳が尖っている。長い金色の髪、清楚な美人という雰囲気だ。

「話せば長くなるのですが――」

「後で詳しく聞くから、ここでは簡潔に頼むよ」

「……カーシュさんの恋人らしき人物が、悪徳奴隷商人で売り物にされていたのを見かけたので保護を――」

オダシューは話しづらそうだった。ソウヤは頭を振る。

「どこから突っ込めばいいんだ、その話――」

「なに、どうしたの?」

ミストがやってきた。ソウヤは眉を吊り上げる。

「まず、カーシュの恋人は10年前に死んでる」

魔族に殺された。勇者組で生き残った者はほぼ全員知っている話だ。オダシューが目を見開いた。

「そうなんですか?」

「そうだよ。……お前は聞いてなかったか?」

「ええ。それでカーシュさんとダルさん……何か事情があるような口ぶりだったのですが、そういうことなんですか」

10年前のことは知らないオダシューである。カーシュたちは話していなかったらしい。

「だとしたら、あの女性はいったい……」

「オレが聞きたいよ」

ソウヤは腕を組む。なるほど、どこかで見たことがあるような気がするわけだ。遠巻きに数回、カーシュの恋人エルフを見ていたからだ。

挨拶はしたが、それ以外に直接話した記憶がないので、ソウヤもすぐに彼女のことを思い出せなかったのだろう。

「死んだはずの恋人が実は生きていました? 悪徳奴隷商のもとにいた? それで保護? 派手にやらかしたんじゃないだろうね……?」

「それは……」

オダシューはいよいよ苦い顔になった。ミストが同情するような笑みを浮かべた。

「やらかしたのね。派手に」

「……」

「それはワタシもその場にいたかったわ」

そんないいものではないと思うが――ソウヤたちが注目する中、カーシュとダルが、件の女性と共にやってきた。

「ソウヤ」

「よう、カーシュ。……紹介してくれるか?」

自然とエルフ女性へと視線が向く。カーシュは頷いた。

「彼女はアガタ。見ての通りエルフだ」

「アガタは私の血縁にもなるのですが――」

ダルが口を挟んだ。エルフの優男は肩をすくめた。

「彼女は、記憶を失っています」