作品タイトル不明
第538話、パーティーで着飾ろう
グロース・ディスディナ城で、銀の翼商会の面々を招いての夕食会が開かれる。
建前は、銀の翼商会と大きな商談――飛空艇関係がうまくいったことを祝うというものだが、レーラとリアハがお世話になっていることの感謝も含まれている。
グレースランド王国の王族や一部臣下も参加しているが、実質、主役は銀の翼商会であり、商会メンバーの慰労会が正しい。
上から下までさまざまな身分の者がいる銀の翼商会である。儀礼などをほぼ無視し、自由に飲み食いできるよう立食形式が取られた。
なお、希望者にはパーティー衣装の貸し出しも行われた。ソウヤも、商会の長ということで正装はしたが――
「自分で言うのも何だが、似合わないな」
「僕も落ち着かないです」
セイジが苦笑する。小柄な彼も今回はビシッと決めている。城の着付け係に手伝ってもらったが、しかし違和感が凄い。
カリュプス組のオダシューも苦笑いした。
「どうも窮屈でいけませんなぁ」
オダシューの場合は体が大きいというのもある。だが一方で。
「……」
「ガル、お前なに? いるだけでカッケぇってズルくない?」
イケメンは何を着てもイケメンなのか。カーシュやカマルなども正装がこなれていて似合っている。だが、そうでない者もいて。
「お前らは、なーんか胡散臭いな」
「それは酷くありませんか、ソウヤ」
エルフの治癒魔術師のダルは、穏やかに、そして胡散臭い微笑を浮かべた。
「そうだぜ、旦那。決めるところは決めるんだぜ、おれも」
ライヤーは襟を正した。
――何か詐欺師めいて見えるのは、顔のせいか?
ひどい感想を抱くソウヤである。そして違和感と言えば、もうひとり。
「見慣れたローブ姿じゃないと、印象変わるんだな、サジー」
「そうでしょうか?」
王都魔術団で、唯一、銀の翼商会に残されたサジーは首をわすかに傾げた。
――魔術師って体型じゃないんだよな、こいつ。
パッツンパッツンに見えるのは気のせいか。サジーは緊張しているセイジに声を掛ける。
「私はこの手の会にはよく参加しているので、何かあれば言ってください」
「は、はい。お願いします」
ソフィアのお兄さんは、妹の恋人に優しい。
なお、コレルは、従魔といられないならパスと言い、リザードマンのフラッドも辞退した。
サフィロ号の面々も、警戒のために船に待機するということで、参加しない。
「それでは皆様、会場へどうぞ」
係の者が呼びにきた。
ただメシを食うだけなのに、何で緊張しているんだ――と思いつつソウヤは男性陣を引き連れて、パーティーホールへと移動した。
そして、別の入り口から、女性陣がやってきた。
ヒュウ、と誰かが口笛を鳴らした。――誰だよ、行儀悪いヤツは!?
「これはまた……」
オダシューが呟く。
「綺麗どころばかりですな」
「ハーイ、ソウヤ。どうかしら?」
先頭きってやってきたのはミスト。ふだんから黒いドレスっぽい姿なのだが、今日は一段と黒く決めてきた。
「似合っているよ、ミスト」
「ありがと。あなたは……まあ、うん。まあまあかしら」
「正直な感想をありがとう」
「ソウヤ様」
「レーラ……」
ソウヤは息を呑んだ。聖女として教会を思わす姿はどこにもなく、プリンセスと呼ぶにふさわしい美少女がいた。若草色のドレスは、あまり飾り気がないが、シンプルに美しかった。
「見違えた」
「まあ。……似合ってますか?」
「とても」
ソウヤの返事に、レーラははにかんだ。
そしてレーラの隣には青色のドレスをまとったリアハがいた。長い金色の髪を後ろで結び青いリボンがついていた。
「リアハもよく似合っているよ」
「そ、そうですか……」
恥ずかしいのか小さくなるリアハ。いつも騎士姿だから、最強装備であるドレスの破壊力は別の意味で凄まじい。
「どう、セイジ!」
ソフィアは深紅のドレスをまとい、セイジに披露していた。ドギマギしているセイジ。サジーが淡々と言った。
「少し、胸もとを見せすぎではないか?」
「兄様には聞いていないわ! ね、セイジ、どう?」
「ににに、似合って、るよ……」
「まっすぐ、私を見なさい!」
恋人があまりに美人だから、照れまくっているセイジ。そして彼の緊張が伝染したのか、ソフィアもまた顔が羞恥に染まっていく。
ソウヤは会場を見渡す。
魔法格闘士のティスは、ヒラヒラのドレスが気にいらないのか、渋い顔をしている。その隣にいるカエデは紺色のドレス姿だが、お人形さんみたいに可愛いかった。
いっぽう、女騎士メリンダは、カーシュとカマルに絡まれていた。
「似合うじゃないか、メリンダ」
「カマル、あなたの顔と言葉が一致していないみたいなんだけど?」
「私は何も言っていないぞ」
「見世物を見るみたいな目をしているわよ?」
「ひどいな。私の目は元からこうだ」
「ふたりとも、やめないか」
カーシュが割って入る。元聖騎士も苦労する。――なお、他人事ではなかった。
「ソウヤ、来てやったぞ」
影竜とフォルス、ヴィテス、そしてクラウドドラゴン、アクアドラゴンが、それぞれ人型で参加したのだ。