軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第539話、パーティーを楽しもう

ドラゴンたちが、夕食会に参加した。

いざという時にストッパーになりそうなジンがいない時に不安がないわけではないが、ドラゴンたちも銀の翼商会で苦楽を共にしてくれているので、呼ばないという選択肢はなかった。

「メシだメシー!」

青髪ツインテ少女姿のアクアドラゴンは、早速食事のある机へと向かう。深海を思わす青いドレスである。人型が少女体型なので、子供っぽい。

対するクラウドドラゴンは、豪勢な銀色のドレス。細かな宝石がちりばめられたそれは、明らかに高額そうだった。背中がざっくり開いているのだが、色気が半端ない。

「ソウヤ、どうだ?」

褐色肌の影竜はといえば、黒と白のシックなパーティードレス。長身ということもあり、大人な装いだ。

「驚いた。これは素敵な……お洒落なセレクトだ」

影竜らしくない。というか、普段とギャップが凄すぎた。

「ねえ、ソウヤー。ボクはどう?」

フォルスが、ソウヤの足元から見上げている。初めて着るだろう子供用のスーツ。目をキラキラさせて、全身から褒めてほしいオーラを発している。

「かっこいいぞ。もう大人の仲間入りだな」

「やったぁ!」

一度飛び跳ねたフォルスは、「食べてくるー」と、アクアドラゴンの後を追った。

「まだまだ子供ね」

そう淡々と言ったのはヴィテス。黒を基調としたワンピース。ピアノの発表会に行く子みたいな落ち着いた服装だ。可愛らしいが、ずいぶんと大人びた格好が、少しミスマッチか。似合ってはいるのだが。

「しょうがないさ。フォルスは子供だろ」

もちろん、ヴィテスも――ソウヤが視線を向けると、ヴィテスも横目で見上げていた。

「お父さん、何か言うことがある?」

「何を?」

じと目を向けられる。――ふむ。

「本日はとても美しいですよ、レディ――」

「『は』?」

「『も』。意地悪しないでくれ」

めんどくさいムーブはやめてほしい。ソウヤは肩をすくめると、ヴィテスは『やれやれ』という顔になる。

「許す」

「ありがとう」

ソウヤは会場を見回す。

「正直、立食パーティー形式だって聞いて安心しているんだがな」

「テーブルマナーを知らない人もいるから、でしょうね」

ヴィテスは冷めた目で、食事に手をつけるドラゴンたちを見やる。

「まあ、それとは別に個々に席を割り振らない事情があったんでしょうけれど」

「事情? ヴィテス先生の見解を聞こうか」

「あなたよ、お父さん」

ヴィテスはチラとソウヤを見た。

「グレースランド王としては、娘をあなたとくっつけたいのよ。席に固定したら、レーラとリアハがあなたと離れてしまうわ」

ヴィテスの視線が、グレースランド側の参加者に向く。

「いくら勇者と言えど、王族の隣の席は露骨過ぎるから」

「確かに」

普通は王族と同じテーブルにつくなど、同じく王族くらいの格がなければ難しい。それでも敢えて同じテーブルにつけようものなら、ヴィテスが指摘した通り、露骨である。

その点、立食パーティーならば、食べるタイミングも自由で配膳などで水を差されることもなく、好きな相手と自由にお話もできる。

「仲のいいところをアピールしておいたほうがいいのかな?」

「王様はそのほうが安心するのではないかしら」

私には関係ないと言わんばかりの口調で突き放すヴィテスである。

こちらの参加者がひと通り揃ったところで、グレースランド王の登場。そして王の簡単な挨拶の後、立食パーティーの形で食事会が始まった。

ここで男連中と談笑に走ったら、主催者側の期待を裏切ってしまうのだろう、とソウヤは思った。

カーシュやカマルの元勇者パーティー組の友人たちとのお喋りもいいのだが、まずはグレースランド王にご挨拶をするのが商会長というものだろう。

が、ソウヤはすぐに女性陣に取り囲まれるのである。

「ねえ、ソウヤ。あそこのお肉なんてどうかしら?」

ミストが早速、ソウヤの気を引く。レーラが口を開いた。

「ハシュラ鹿ですね。美味しいですよ」

にこにこと聖女様。ミストは鹿肉料理にわずかに眉をひそめた。

「この色のタレはあまり見たことないけれど、大丈夫?」

「ドラゴンさんたちは平気みたいですよ」

別テーブルでアクアドラゴンとフォルスが舌鼓。

「ワタシはショーユダレがいいのだけれど」

「まあまあ、ミストさん。美味しいですから」

「そうだぞ、ミスト。いつもと違う味も食べておかないと、舌がバカになっちまうぜ」

ソウヤはやんわりと言った。

同じ料理、同じ味付けばかりでは味覚がおかしくなるというのは、よく聞く話である。人は慣れる生き物だから、違う刺激はよりよく楽しむためには必要なのだ。

――頼むから、オレにここで料理させるなよ。

「あの、ソウヤさん、こっちのパイも、お、美味しいですよ……!」

リアハがやたら緊張していた。いつもと違う格好のせいだろうか、やたらと視線が泳いでいる。

――お姫様だから、こういうのは慣れていると思ってたんだけどな……。

どうもそうではないようだ。

「美味そうだ」

ソウヤはリアハお勧めのミートパイに手をつける。カリッとした焼き具合が綺麗で、最初に手をつけるのが少しもったいない感じもする。

「……うん、美味い!」

サクりとした食感にたっぷり肉が詰まっている。さすがお城の料理。

「そ、そうですか。よかった」

パッとリアハの顔がほころんだ。緊張が少し和らいだようで、ソウヤも少し安心した。

「あら、本当」

ミストもパイを食して意外そうな顔をしている。レーラが笑顔のまま、鹿肉料理を指した。

「こちらも美味しいですから! ぜひにっ!」

やたら圧が強かった。それもそのはず、その鹿肉料理はレーラの幼少の頃からの好物だったりする。

パーティーは和やかな雰囲気で進んだ。