軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第453話、おかしな話になってきた……

ソフィアとセイジがギクシャクしているらしい。

ミストの話は続いた。

「セイジとトゥリパは、あくまでお勉強の最中だったし、ソフィアはセイジと和解したかっただけだった。この遭遇は不幸な偶然だった」

「修羅場に勘違いされただろうけどな」

ソウヤはテンションが低くなる。

「ソフィアは、当然ながら誤解したんだろう?」

「ええ、当然ながら」

自分の時は逃げたくせに他の女とはするのか、と烈火の如く怒ったらしい。

「ソフィアは自分の部屋に戻ったんだけど大泣きしちゃってね。リアハとレーラが慰めたんだけど……」

「うまくいかなかった?」

「結論から言うとそうなるわ」

ミストは口元を歪めた。

「セイジの話を聞こうと、レーラとリアハは言って、一度はソフィアも納得したんだけどね」

ここで聖女とお姫様姉妹が出てきた。

「ただ、ソフィアは本人を前にしたら拗ねた子供みたいになっちゃって顔を逸らして、逃げたわ」

謝ろうと思っても、当人を前にしたら何故かうまく話せなくなるという現象。ソフィアの場合、素直になれなかったのだろう。年上だから変にお姉さんぶっているところがあるから。

だが結果として――

「弁明の暇さえなかったか……」

セイジの性格である。おそらく誤解を解こうとしたはず。謝ろうとしたが噛み合わず、かえってこじらせてしまったのかもしれない。

「で、ここでさらに面倒なことに――」

「まだあるのか」

ソウヤはゲンナリした。悪いことは重なるとはよく言うが。

「ほら、セイジって人気者でしょう。彼を狙っているコがもうひとり」

「……ティスか」

12歳、魔法格闘士の少女。こっちに手を出したら、ちょっとよろしくない。格闘バカというか、割と世間の常識とはズレている子という印象がある。

「まさか、セイジのところに押しかけたか?」

「正解」

ミストの答えにソウヤは天を仰いだ。ソフィアと関係が怪しい時に、これは非常にまずい。

「ティスはセイジのもとに殴り込んで『ソフィアを泣かせるとは何事だ』と胸ぐらをつかんだらしいわ」

「……え?」

ソウヤは耳を疑った。押しかけたと聞いて、無知ゆえの大胆な色仕掛けでも仕掛けたのかと思いきや、ソフィアのために抗議に行ったように受け取れた。

――なんか、思ってたのと違う……。

「何かよくわかんないコなんだけどね、ティスって。ただソフィアのことは『姉さん』呼びで慕っているみたいよ」

「姉さん?」

変なところで繋がりができていた。てっきり、セイジを巡る恋のライバル的にバチバチやっているのかと思っていたソウヤは、完全に肩透かしをくらった。

「すると、三角関係でもなんでもなかったり?」

当人たちの間で納得しているということかもしれない。

「いや、ティスはセイジと結婚するつもりでいる。えーと、第二夫人って言うのかしら?」

「第二……」

「ソフィアが第一で、ティスは第二ね。ソフィアはソフィアで、慕ってくれている妹分を可愛がっているそうよ」

女同士でギクシャクはしていないようだった。仲良きことは喜ばしいが、これをソフィアの父イリクはどう受け止めているのか。

ソウヤは心配になったものの、そもそも自分は部外者であることを思い出し、それ以上詮索するのはやめておいた。

人の家の話に、好奇心で首を突っ込むものではない。

「とはいえ、これ一度、見ておいたほうがいいかな……?」

銀の翼商会のボスとして。

「一応、確認するが、誰か怪我したとか、そういう段階ではないんだな?」

「ええ、ティスがつかみかかった程度。それ以上の大事にはなっていないわ」

それはよかった、とソウヤは思う。さすがに殺傷に発展する事態はご免である。

「えっと、まとめると、ソフィアとセイジは今ギクシャクしている……それでいいんだな?」

「そうなるわね」

ミストは頷いた。

最初からそうだった気もするが、周りが関わったことで回り道をした気分である。

「……まあ、様子は見るが、結局当人同士の問題だからな」

ソウヤは頭を掻いた。

「ここからよっぽど悪化しない限りは、オレの出る幕ではないと思う」

大丈夫だよな、と確認すれば、ミストは首肯した。

「一応、セイジとトゥリパの間に関係はなかったって当人たちが理解したからね」

つまり誤解はすでに解けているということだ。

「ただ、周囲を巻き込んで騒がしてしまった分、ちょっと気まずいってだけよ」

「なら、ますますオレが首を突っ込むことじゃないな。知らせてくれてありがとう」

「どういたしまして」

ミストはすました顔で答えたが、ふと上目遣いの視線を向けてきた。

「ねえ、ソウヤ。あなたは人間、ワタシはドラゴン。そこは理解しているわね?」

「もちろん」

黒髪美少女の姿をしているが、ミストは正真正銘のドラゴンである。人化の魔法を解けば、神々しいまでに白いドラゴンとなる。

「ちなみに、ソウヤはドラゴンがどうやって子供を作るか知ってる?」

卵で――という話ではないだろう。

「オスとメスが肉体的接触をして子供を作るとかいうやつじゃないのか?」

言われてみて、そういえばドラゴンの子作りがどうやるのか知らないことに気づく。影竜は卵で子供を産んだが、父親のことは欠片も聞いたことがない。

……嫌な予感がしてきた。

「ドラゴンは生殖にオスはいらないのよ。時が来たら、自然と卵を産むの」

ミストの発言にソウヤは素直に驚いた。そういえば元の世界にも、相手がいなくても子孫を残せる生物がいたような。爬虫類や両生類、魚などと聞いたことがあった。いわゆる単為生殖。

「ドラゴンもそうなのか……」

知らなかった。すると、影竜も母親はいても父親は初めからいなかったことになる。

「それでね……」

ミストは控えめな調子で言った。

「ワタシは他の種族のそうした行為について、ちょっと興味が湧いたのよ。ソウヤ……ちょっとワタシとヤってみない?」