軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第452話、こんなことになっていた

「ねえ、ソウヤ、ちょっと聞いてくれる?」

唐突にミストに絡まれた。

「どうしたんだいきなり?」

まさにいきなりだった。彼女はソウヤの背中から抱きついてきたのだ。

アイテムボックスハウス環境内で、幹部連中を集めようと思っていた矢先である。

「ソフィアがね、セイジとヤろうとしているのよ」

「やろうって……何を?」

何となく男と女の関係を想像してしまったソウヤ。あの二人は付き合っているが……まさか。

「わかるでしょ?」

「いわゆる、肉体的な?」

「そう」

ミストも直接的接触中。ソウヤは首をひねる。

「まあ、二人とも若いんだし……。セイジが十六だっけか」

いささか若過ぎな気がしないでもない。

「で、ヤろうとしている、ということはまだシテないと」

「この前、王都でデートに出かけたのよ」

ミストは言った。買い物だと聞いている。

「で、関係の進展を狙ったみたいなんだけど、うまくいかなかったみたい」

「そうなのか」

野次馬根性はないので、ソウヤは淡泊な反応になる。

「そうなのよ。あれ以来、二人は顔を合わせると気まずくなっているみたいでね」

「……あれ、うまくいかなかったって、関係にヒビが入るほどやばかったのか?」

エッチなことしましょ、でうまくいかなった程度に思ったが、もっと深刻なように聞こえる。

「あの二人、あれでそっちのことはウブなのよね。ソフィアは、殿方はそういうのが好きだからって聞いて、頑張って勉強してセイジを誘うつもりだった」

「ふむふむ……」

相手にもっと好かれようとしたようだ。強気でプライドの高いところがあるソフィアにしては、かなり歩み寄りな姿勢を見せていると感じた。

「でも、セイジがね。性的なものを感じたら、途端に逃げ腰になったようなのよ」

逃げ腰とは――ソウヤは眉をひそめる。

――色仕掛けなどに弱そうだもんなぁ、アイツは。

だらしない、という意味ではなく、普通に免疫がなくてテンパるタイプという意味で、である。

「妙に真面目だからな……」

「そうなのよ。『ボクらにはまだ早い』とか、『結婚前にそういうことするのはよくない』とか云々」

ミストは渋い顔になった。

「セイジらしいじゃないか」

ソウヤは微笑した。結婚するまでしません、なんて古風ではあるが、イリクが聞いたら一安心するのではないかと思った。

しかし、ミストは納得していないようだった。

「ヤりたい時に、ヤればいいのに」

「ドラゴンさんは直球だな」

それはそれとして――

「ソフィアとセイジが、いまもギクシャクしていると?」

「そう。それで周りが絡み出したからね」

嫌な予感しかしなかった。ソウヤは眉間にシワを寄せた。

「あまり聞きたくないが……何があったんだ?」

「まず、セイジが周りに相談したの」

男連中に、女性との付き合い方を聞いたそうだ。わかる話である。

「最初はカーシュだったわ」

聖騎士様は、女性とのデートやプレゼントの選び方、エスコートの仕方などをレクチャーしたらしい。

「でも、それは参考にはなったみたいだけど、セイジが本当に聞きたかった部分ではなかった」

「お肌の触れ合いだもんな。……カーシュは何て答えたんだ?」

「『そちらの方面は、私の口からは言えない』と断ったそうよ」

肩をすくめるミスト。

――カーシュはきっとドーテーなのだろう。

高潔なる騎士様の中でも、とにかく真面目な男である。

「次はカマルだった――まあ、正確には相談中に通りかかった、というところだけれど」

「カマルか……」

猛烈に嫌な予感がした。あの男は諜報畑の人間であり、しかもあのルックスだから経験豊富だ。

「話を聞いたカマルは、よしわかったと言うと、夜の店に行くぞって誘ったらしいわ」

「――『お前を男にしてやる』だろ?」

勇者時代、この手の相談を受けたカマルは、騎士アンドルフや魔獣使いのコレルを夜の町の連れ出していた。

「で、セイジは?」

「当然、断ったわ。ソフィアがいるのに、別の女性を抱くのはちょっと、って」

「あいつも真面目だからな」

「むしろ、ライヤーやジンのほうが夜の町には乗り気だったみたいね」

「……」

閉口するソウヤである。ライヤーはわからなくもないが、老魔術師があれでノリノリだったというのが想像つかなかった。

――皆、男だったんだなぁ……。

「それで、セイジはどうした? 他に誰か相談したか?」

「オダシューとガルに」

ここでいつも訓練を一緒にやっているカリュプスメンバーが出た。オダシューの解決策は、カマルと同じく夜の町で経験を積ませることだったらしい。

「ガルは?」

「トゥリパに頼んで、そっちの知識を教えるつもりだったみたい」

カリュプス組の女性メンバーにヘルプを頼んだという。ソウヤは一瞬正気を疑った。

「トゥリパに話したのか?」

「彼女、そういうことならと協力を申し出たみたい。実際、服は脱いでも、直接するつもりはなかったみたいだから、あくまで勉強の一環として」

――どういうことなんだ……?

ソウヤは困惑した。ミストはお構いなしに話を続けた。

「で、夜にセイジの部屋で秘密のレッスンをしようとしたんだけど……。折り悪く、そこへソフィアがやってきたのよ」

「うわー……」

――修羅場じゃねえか。

絶対、勘違いされるやつだと思った。

「なんで、そのタイミングでソフィアがきた?」

「気まずい関係を解消したくて、謝りに行ったみたいよ。そしたら下着姿のセイジとトゥリパと遭遇よ」

「……」

ソウヤは頭を抱えた。ミストは言った。

「この話にはまだ続きがあって――」

「まだあるのか?」