作品タイトル不明
第451話、木材調達のアイデア
物を作るには、当然ながら材料がいる。
無から物は作れない。形あるものは、何かしらの素材が必要なのだ。
「ちょっと、マズイことになるかもしれない」
ゴールデンウィング二世号に戻ったソウヤたち。
「オレたちが船を何隻作ろうが、それはまあ大した問題にはならない。が、その後、必ず飛空艇の建造ラッシュが始まる」
それに伴い、船を作るための資材が集められ、消費される。飛空艇でもっとも使用する素材といえば木材だ。
ドワーフたちのテリトリーであるルガードーク。金属については、彼らドワーフの地下鉱山から調達できる雰囲気だ。
しかし地下に木はほとんど生えない。例外はあるが、基本、地上で切り倒さないと調達できない。地元だけで足りなければ、よそから調達しないといけなくなるだろう。
「深刻に考え過ぎじゃないか?」
話を聞いたライヤーが言った。
「世界には森なんて掃いて捨てるほどあるんだぜ? なんなら大海の孤島にでも行って、そこの木を切って運べばいいんじゃね?」
「それを、俺らで売るわけか……」
ソウヤは自嘲した。
「いいアイデアだ。オレたちは儲かる」
「だろう?」
「だが、お前、それをたとえば、大精霊のいる島でやる勇気はあるか?」
物事にはバランスがある。大量に欲しいからと環境のことも考えずにやれば、必ず痛い目に遭うのだ。
「じゃあ、手間は掛かるが、数本だけ切って場所を変えるというのは?」
一気に切らず、少しずつ別の場所で切ればいい、という案。こちらが各地を飛び回る必要はあるが、数本ずつなら環境にさほど影響を与えない。
「人が住んでいる土地だと森は領主のもので、勝手に切り倒せない。じゃあ、人がいなければいいかというと……他の種族のテリトリーだった場合、騒動に発展するかもしれない」
間違ってもエルフのテリトリーでは木は切れないだろう。パッとみて、この森は誰も、どの種族も関係していないと判別がつくものでもない。
「ひとつ、アイデアがある」
ジンが口を開いた。
「ダンジョンの木を手に入れればいい」
「ダンジョン!」
ライヤーが大きな声を発した。
「おいおいジイさん、マジで言ってる?」
「大マジだよ」
老魔術師は真面目な調子で言った。
「ソウヤも経験があると思うが、ダンジョンには、地下とは思えない異常環境となっているところもある」
「ダンジョンの中にジャングル!」
ソウヤは勇者時代の冒険を思い出した。地下ジャングルなんてワードは、この世界で初めて聞いた。
「なるほど、ダンジョンか……」
「あそこの植物は異常な速度で再生する。それこそ外の世界ではあり得ない成長だ。そこの木をどんどん切り倒しても、さほど時間もかからず元通りになる」
「何かすげぇ環境だな、ダンジョンって」
ライヤーが反応に困ったような顔をする。
「木があるダンジョンなら取り放題じゃねえか?」
「冒険者ならね」
ジンは腕を組んだ。
「モンスターが出現する危険な場所だから、一般人が伐採に行ける環境ではない。見返りはあるが、その分リスクも高い」
しかし――ジンはソウヤへと視線を向けた。
「モンスターを蹴散らし、倒した大木をアイテムボックスに収納できる冒険者なら、狙ってみる価値はあると思うね」
何より競合が少ない。冒険者ならばダンジョンの中のものは自由に所有することができる。誰彼の領地だ、所有物だなどと気にしなくてもいい。
命の危険に晒されることを除けば、冒険者にとっては宝の山である。
「結局、ダンジョンでの仕入れから始まって、そこに戻るわけだ」
「ん? なんだボス?」
「いいや、独り言だ」
アイテムボックスを活かして行商をやろう――そう思って始めたことを思い出すソウヤ。仕入れはダンジョンという原点に懐かしさをおぼえる。
木材の需要が高まるのを見越して、市場に極端な影響が出る前に物を手に入れておこう。
「よし、じゃあ早速、検討といこう」
・ ・ ・
ソウヤが飛空艇関係であれこれやっていた頃、他のメンバーはさぞ暇をしていただろうと思ったら、そんなことはなかった。
「こいつら、本当勉強熱心だな」
魔術師組は、飛行石研究組と魔法鍛錬組に分かれて活動中。
戦士連中は、クラウドドラゴンとアクアドラゴンと模擬戦やらトレーニングをしていた。
――なんて幸運な連中だ。
「始めは魔法格闘士のティスくらいしかドラゴンと組み手をしていなかったんですがね」
カリュプスメンバーのオダシューは苦笑した。
「ですが、例のドラゴンブレス騒動で距離が縮まったようで、だいぶドラゴンに慣れてきましたね」
カリュプスメンバー、戦士組はもちろん、カーシュやメリンダら勇者パーティーメンバーである騎士もドラゴン相手に力を試している。
「まあ、クラウドドラゴンはこちらにも付き合ってくれるんですが、アクアドラゴンは完全に遊んでますね。時々、怪我する奴が出てくる……」
「大丈夫なのか、それ?」
「レーラ様やダル様が治癒してくれますから。治癒魔法の使える魔術師連中も、実践で治癒魔法が試せると言ってました」
「ダルは働かせていいが、レーラにはあまり負担をかけるなよ」
ソウヤが眉をひそめれば、オダシューは背筋を伸ばした。
「はっ、もちろんであります! ……とまあ、レーラ様が積極的にやりたがっているので、お止めもできませんが」
背筋を曲げて苦笑するオダシューである。
「それで、ボス。おれらに仕事ですか?」
「結構、暇しているんじゃないかと思ったが、割とみんな忙しそうだ」
「仕事とあれば、すぐにでもかかりますが」
「仕入れさ」
ソウヤはニヤリと笑みを浮かべた。
「ダンジョンに潜って木を切り倒して木材を大量に獲得する」
「木材……ですか」
オダシューは不思議そうな顔になる。
「お宝探しならともかく、木が欲しくてダンジョンに潜るとはあまり聞きませんなぁ」
「穴場だろ」
「確かに」
オダシューも共犯者の笑みを浮かべた。
「実戦演習にもちょうどよさそうです。皆、実際に腕試ししたい頃合いでしょう」