軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第272話、人形は生きている?

ウィスペル島に都市遺跡が存在した。そしてそこには人形とゴーレムが住んでいる。

「人形たちの都市」

リアハが不安げな顔をすると、ダルは逆に目を輝かせた。

「それはぜひ見てみたいですねー」

「我々は、クラウドドラゴンを探している」

ジンは腕を組んだ。

「観光目的で来たわけではない」

「わかってますよ」

苦笑するダルがライヤーに視線を向ければ、彼も肩をすくめた。遺跡と聞いて、俄然好奇心が疼いているのだろう。

「その都市遺跡が、先の敵性飛空艇の基地でもあるなら、避けていくのがいいだろう」

老魔術師は言った。

「使い魔で偵察したが、地上に墜落した飛空艇の残骸を複数発見した。こちらが近づけば、彼らは攻撃してくる」

「目的がクラウドドラゴンである以上、今回は回避だな」

ソウヤは言ったが、ミストは困ったような顔になる。

「ところが、そうもいかないのよ」

「どういうことだ?」

「その都市遺跡、クラウドドラゴンのテリトリーなのよ」

それを聞いた瞬間、一同がしんと静まり返った。

「つまり……?」

「クラウドドラゴンの住処に行って確認するには、都市遺跡に侵入しないといけない」

「爺さん、近づいたらどうなるんだっけ?」

「十中八九、攻撃されるだろうね」

「なんてこった……」

ソウヤは首を振った。

「ミスト、魔力眼でクラウドドラゴンの巣の中は見れないのか?」

「濃厚な魔力が漂っているせいで、魔力眼では視界ゼロ」

ミストがお手上げという仕草をとった。

「霧竜であるワタシが言うのも何だけど、魔力眼では霧の中にいるみたいな状態。ほとんど見えないわ」

濃厚な魔力がカーテンのようになっているようだ。ソウヤはジンを見たが、発言する前に否定された。

「ミスト嬢が無理というほどの魔力が漂っているなら、使い魔では厳しいな。魔力に溺れて、制御不能になる恐れがある」

魔力に溺れる、とか、よくわからない表現をされた。専門家の意見としては不可、ということなのだろう。

オダシューが発言した。

「しかし、何故そんなに魔力が漂っているんです?」

「世界には、魔力の流れというものがあるのよ」

ミストは答えた。

「龍脈とでもいうのかしら? まあ、とにかく強い魔力の流れがあって、往々にして強いドラゴンとかは、その流れの上とか近くをテリトリーにするものよ。だから、別に不自然ではないわ」

「なるほど」

オダシューは納得したようだった。ソウヤは頭をかく。

「結論としては、クラウドドラゴンの安否確認のために、人形たちの町に行き、巣の中に入らないといけないってことだな」

「飛空艇の例もある。人形やゴーレムに察知されないように行動する必要があるだろう」

ジンが、改めて指摘すれば、ミストは鼻をならす。

「邪魔するなら叩き潰せばいいでしょ。相手は人形でしょ?」

まことにドラゴンらしい強行説。ジンは顎髭に手を当てた。

「人形やゴーレムを、命ある者として扱うか、物として見るか、にもよる」

「どういうことです?」

オダシューが首をひねった。

「人形やゴーレムって人工物だから、命はないのでは?」

「そう、それが問題だ」

ジンが頷いた。

「人形やゴーレムたちを、この町の住人とするか、ただの警備システムとして見るか、ということだ。前者ならば、それはひとつの種族として見るべきだし、後者ならばミスト嬢いわく、破壊もいいだろう」

聞いていたメンバーが皆、要領を得ない顔になった。

――ひょっとして、爺さんの言っている意味を理解しているのってオレだけか?

乱暴な言い方をするなら、人形やゴーレムをAI、人工知能として見て、そこに人権を認めるかー、みたいな話をしているのだ。

そもそも、AIと言っても、異世界からきたソウヤとジンにしかわからない概念ではある。

――前者だとするなら、そこに乗り込んで破壊とか、完全にこっちが悪党になっちまうよな。

いわゆる侵略に破壊行為。

「現物を見てみないことにはな」

ソウヤはそう判断した。

「もし、人や亜人みたく、意思を持って生活しているというなら別だが、与えられた命令に従い行動しているだけなら、遠慮はいらないと思う」

「……そうだな。これは私の考え過ぎだったかもしれない」

ジンは頷いた。

「とはいえ、都市にいる人形やゴーレムの数が数だから、まともに正面からやり合うのは無謀ではある」

「都市を奪回するとか、そういうことをしに来たわけじゃないからなぁ。あくまでクラウドドラゴンが目的だ」

ソウヤが視線をやれば、そこは認めるらしくミストも首肯した。

「やっぱり、極力戦闘は避けて忍び込むのが最善だろう」

「仕方ないわね。で、どうする? 全員で行く必要はないと思うけど?」

潜入調査チームを編成しよう。全員で移動するのも手だが、人数が増えればその分、忍んで近づくのは難しくなる。

ソウヤは一同を見回した。

「オレが行く。クラウドドラゴンがいた場合の交渉にミストも必要だ。で、目的の場所が遺跡の町ってこともあるから、ライヤー」

「おう、遺跡には興味があるからな、任せてくれ」

「遺跡調査が目的じゃないんだぞ」

「わかってるよぅ」

で、ライヤーを連れていくとなると――

「正直、爺さんにも来てほしいんだが、船のことがわかる人間を残しておきたいところではある。何かあった時に対処できるように」

「心得た。船は私がみておこう」

「本当は、鑑定が使える爺さんにもいてほしいんだがね」

「念話でやりとりはできる。何かあればアイテムボックスに持ち帰ってくれ」

ジンはそう言った。話を興味深そうに聞いていたダルが手を挙げた。

「ドラゴンの巣穴に行くほうに志願しますよ。治療魔術師を連れていかないのは、ナンセンスだ」

「本当は、おめえも遺跡が見たいだけじゃねえの?」

ライヤーがからかうと、エルフの治癒魔術師は肩をすくめた。

「貴方ではないんだ、そんなわけないでしょう」

――いーや、その顔は珍しもの見たさだろう。

付き合いから、ダルの考えが想像ついてしまうソウヤである。だが、確かに回復手段の持ち主としてエルフの魔術師は頼もしい戦力だ。