軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第273話、都市遺跡へ移動

ウィスペル島。ある程度、都市遺跡に近づいたところでゴールデンウィング二世号を降りる。

また迎撃に飛空艇が上がってきても困る。2隻程度なら撃退する算段はついていたが、偵察情報だと、最低でも5隻が確認されていた。さすがに、直接乗り込むのは無謀以外の何物でもない。

船を降りたら、これまたある程度は浮遊バイクで近づく。ちんたら歩いていると時間がかかるからではあるが、果たして人形側は、地上をどの程度見張っているのか。

空は警戒して、地上を無警戒ということはないだろう。

ソウヤはコメット号を操り、都市遺跡を目指す。潜入調査チームは、ほかにミスト、ライヤー、ダル、ガル、リアハ、ソフィアだ。

カーシュやフィーア、ほかカリュプスメンバーは、ジンと共に船で待機だ。

ライヤーは古代文明知識、ミストはドラゴンとの交渉役。ダルはヒーラーで、ガルは前衛と索敵要員。リアハは、カーシュら盾組がいないので前衛寄りの援護、ソフィアは攻撃魔法と使い魔偵察などを担当する。

灰色の大地を疾走することしばし。ミストの気配察知も、ソフィアの使い魔偵察にも敵と呼べるものは引っかからなかった。

「まさか、このまま無警戒ってことはないだろうな」

空を飛んでいたら飛空艇で襲ってくるというのに、地上からは見張っていないということがあるだろうか?

「出てこないにこしたことはないんじゃないか、旦那」

ライヤーが浮遊バイクを運転しながら言った。

「そもそも、潜入しようってのに、こんな都市遺跡から遠い場所で連中が出てきたら目も当てられねえんじゃね?」

「……だが、飛空艇で迎撃された辺りには、こちらも到達している」

すでに人形たちのテリトリーではないか、とソウヤは思う。それでも浮遊バイクを降りないのは、ミストやソフィアの警戒に引っかからないからではある。

「あの、ソウヤさん!」

リアハの声がした。彼女はソフィアの運転する浮遊バイクの後ろに乗っていた。リアハは、まだ浮遊バイクの扱いに慣れていない。

「ひとつ聞いてもいいですか?」

ソウヤは頷いて、うながす。リアハは言った。

「人形たちは、『魔力れーだー』とかいう索敵方法を使ってますよね? もう私たち、見つかっていませんか?」

「いい質問だ。オレもレーダーの専門家じゃないから、詳しいことは説明できないんだが、基本的に、電波なり魔力なり飛ばして、その反射を受け取ることで位置がわかる代物だ」

一応、ジンに説明を聞いたのだが、専門用語はよくわからなかった。ソウヤでさえそれなのだから、レーダーの知識のないリアハや仲間たちでは、余計にわからないだろう。

「これは遮蔽物のない空や海の上では広い範囲を調べられるが、地形が複雑で高低差がある地上だと、それが難しい。地形の陰には電波が届かず、手前の障害物で反射してしまうからだ」

「それはつまり、地形に沿って隠れながら移動すれば、れーだーに見つからない?」

「障害物が多い地形だと、反射する物体が多すぎてそうなる。……逆に真っ平らな場所なら、丘とか山の上にレーダーをおけば、地上でも見張れたりするのかなぁ」

そこまで詳しくはないソウヤである。

――赤外線のセンサーとかだと、レーダー関係なく見つかるんだろうけど。あるのかな、そういうのは。

「まあ、そんなわけで、地上ではむしろ、肉眼での監視所とかが脅威だな。用心してくれ」

ソウヤたちの浮遊バイクは、斜面や起伏を盾に、都市遺跡を目指した。

しかし、幸いなことに、道中に人形やゴーレムに襲われることはなかった。

「マジで、地上を警戒していないってどういうこと?」

都市遺跡が見える位置まで進出したソウヤたちは、さすがにここから先は浮遊バイクは使わなかった。

「この島に来るには、空からしか侵入できないから、じゃないですか」

適当な調子でダルが言った。

「ウィスペル島でしたっけ? 海に面している岸が全部、断崖になっていて、船からでは上陸できないせいかもしれません」

「あー、そういえば」

ライヤーがポンと手を叩いた。

「島の上空に侵入した時、見える範囲は全部崖だったぜ、たしか」

あれでは海上船で乗りつけられない。

「だから、人形たちも空からの侵入だけ警戒しているということか」

海に囲まれている島である。その海岸からでは船で上陸できないなら、空から侵入するしかない。……しかし周囲全部が崖だとすると、変な島だなぁ。

それはともかく、ここからは都市遺跡まで徒歩で移動である。今までは警戒されていなかったが、この先もそうとは限らないので、索敵は念入りに進める。

そうこうしているうちに時間が経ち、夜となった。

・ ・ ・

「こういう時、アイテムボックスって便利よね」

ソフィアが、銀の翼商会、野外食の串焼き肉を食べながら言った。

うっすらとした月明かりの下。明かりは点けられないが、最低限の光源の下、都市遺跡のすぐそばまで来ることができた。

「片手で食べられるっていいですよね」

リアハはソフィアに同意した。

「人形たちにはニオイがわからないみたいだし……」

ソフィアは遠距離視力の魔法で、都市遺跡の様子を眺める。

「でも、不思議ね。人形とかゴーレムって、眠らなくてもいいはずなのに、使い魔飛ばして見た昼間と比べて、出歩いているのが少ないわ」

「ゴーレムだって魔力を消費しますからね」

ダルが両手に串焼き肉を持って、やってきた。目にほのかな魔力の光が浮かんでいるところから、彼も遠距離視力の魔法を使っていた。

「活動する予定がなければ、石像みたく待機しているでしょうよ」

「何にせよ、外にいる奴が少ないのはありがたい」

ソウヤは腹ごしらえを済ませると、いよいよ石の壁に囲まれた都市遺跡を睨んだ。

「皆、食い終わったな? ……ソフィア、使い魔での監視、まだ大丈夫か?」

「ええ、他に魔法とか使っていないから、まだまだ余裕よ」

「そいつは結構。これから町に入る。上空からの監視と、通報をよろしく。ミスト、ガルは先導」

行け、と合図すれば、漆黒の戦乙女と、美形の暗殺者が都市遺跡の入り口へと近づいた。ソウヤも残りのメンバーに合図しつつ、前進した。

ライヤーが、ぼやく。

「昼間に来たかったな。これじゃ、遺跡の様子もわからん」

「暗視の魔法は使えないのですか?」

ダルが突っ込めば、ライヤーは口元を歪めた。

「情緒ってもんがあるだろ?」

「そういうものですか?」

「わかんないかなぁ」

意外そうな顔をするライヤー。聞いていたソウヤだが、正直、よくわからなかった。