軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第17話、エイブル町ダンジョンに行こう

まずは、情報を集めるのが基本だ。

エイブル町のこと、ダンジョンのこと、各種商売、何か不足しているものがあるか、あるいは余っているものはあるか、などなど。

幸い、ギルドフロア内に冒険者たちの酒場があるので、聞く相手には困らない。酒代を奢ってやれば皆、親切に教えてくれた。

この町のことについては、冒険者たちの町であるということ。ダンジョンに潜るための装備や食料、薬、鍛冶など、ひと通りのものが揃っている。

話を聞いた冒険者が、エールのおかわりを注文しながら言った。

「鍛冶屋も多いからな。ドワーフがやっているところもあるし、種族嫌いでもなきゃ武器のメンテに利用するのも手だな」

背は低いががっちりした体を持つ亜人種族『ドワーフ』。この世界には人間の他にも、さまざまな亜人種族がいる。勇者時代に、バックアップに優秀なドワーフがいた。懐かしい。

「他には……そうだな、モンスター肉を出す料理屋がある」

「モンスター肉だって?」

「そうだ、ダンジョンで討伐したモンスターの肉を素材にした料理を出す店があるんだよ。知ってるか? これがなかなかイケるんだ」

男は脳裏にその料理を思い浮かべたのだろう。思わず垂れたヨダレを拭う。

モンスター肉のうまさがわかっている人間がいて、ソウヤは少し嬉しくなった。最近食べたベヒーモス肉も、ちゃんと血抜きして処理すれば、上質な肉になる。

現に、俺の隣で酒をゴクゴクと飲んでいるミストさんも、元々肉食ではあるが、ベヒーモス肉はお気に入りのご様子だ。――おいおい、少しペース早くね?

「だが、ダンジョンが近いと言ってもな、持ち帰ることができる肉の量って限られているから、慢性的にモンスター肉不足だけどな」

冒険者の男は首を振った。

確かに、多くの冒険者は、倒したモンスターの特徴的部位や高く売れそうな部位を優先するから、肉は大抵打ち捨てられる。アイテムボックスのような容量無限の魔道具があれば話は別だが。――俺が、アイテムボックスに入れて、その店に肉を売ることもできるかもな……。

「――行ってモンスター肉料理があればラッキーってな」

「なあ、モンスター肉を持っていけば、料理作ってもらえたりする?」

「ああ、よっぽど嫌われない限りは作ってくれるだろうよ。ギルドでも肉収集のクエスト出しているから、やってみたらどうだ?」

「そうか、ありがとよ。確認しておくわ」

そして肝心のダンジョンだが――ソウヤが水を向ければ、彼は答えた。

「入るのは冒険者なら誰でも入れる。それ以外は、冒険者の連れがいない限りは、基本断られる。危ないからな!」

がはは、と男は笑った。エイブル町のすぐそこにダンジョンの入り口があって、そこには見張り所があって、出入りを確認しているらしい。

「ギルドの専属冒険者が交代で見張っているが、ダンジョン内で異変があればギルドや町に通報できるようになっている」

「異変っていうと……」

「ダンジョンスタンピードとか、未知で危険なモンスターが現れた時とか、かな」

スタンピード――モンスターの吐き出し現象。ダンジョン内の魔物が増えすぎると発生する厄災で、ダンジョンから出てきた大群が暴れまわる。

そうならないために、ダンジョンに冒険者が入って、モンスターを討伐して数が増えすぎないよう調整しているのだ。

「中の地図とかってあるの?」

「そんなもん役に立たんぞ」

「何せ数日で、中の構造が変わるからな!」

別の冒険者が口を挟んだ。

「変わらないところもあるんだが、一定周期で変わるところが多いって話よ。まあ、ある程度法則ってのがそれぞれあるみたいだけどな……。時々、レアな魔物とか、レアなお宝へ通じているルートが開くこともあるってぇ話だ」

「レアなお宝ね」

それは興味深い。ソウヤが頷くと、その冒険者は樽型コップを向けた。

「伝説級の名剣とか、どんな傷も治しちまう秘薬とかな」

秘薬――俄然、気になった。ソウヤがアイテムボックス内に保護している人たち……その死の一歩手前で停止している者を救うことができるかもしれない。

「むしろ、その話を待ってた」

「まあ、今までそういうこともあったって話さ。俺たちもそこそこあのダンジョンに潜ってるが、そういうレア場には出くわしたことないし」

要検討、というか、さらなる情報収集が必要か。そう簡単な話ではないのは、ソウヤにもわかっていた。

――何度か直接行ってみて、確かめるしかねえか。

先輩冒険者たちからお話を聞き、ひとまず情報集めは終了。

「あんがとよ、世話になった」

「また奢ってくれ。……そういや、あんた、結構強そうだけど、そっちの嬢ちゃんは娘か?」

「あらぁ、そう見える?」

聞いているのか聞いていないのかわからない素振りで、お酒ばかり飲んでいたミストが、急に反応した。――酔ってんな、このドラゴン。

頬が赤い。

「ま、そんなようなもんだ。こう見えても、強いぜ彼女は」

ソウヤは、ミストを抱え上げる。……とても強そうには見えない様子だが。――酒、くせっ! どんだけ飲んだんだよ。

ミストを抱えて、酒場を出る。宿屋を探して、近くの古めかしい外観の宿に入った。幸い部屋がとれたので、そのまま部屋に行ってミストをベッドに寝かせる。

ソウヤは寝る準備をして、アイテムボックスから取り出した寝袋にくるまった。――明日は、ダンジョンに入るぞ!

・ ・ ・

翌日、ソウヤの寝袋にミストがのしかかっていた。ベッドから落ちたのか、まるで抱き枕状態のソウヤである。

起床し、アイテムボックス内で朝風呂。例によってソウヤが入っていると、ミストもやってきた。派手にドボンしてもいいように、風呂はデカくしてある。――温泉みたいだろう!

彼女の裸は極力見ないようにするソウヤ。ミストさんは元はドラゴンなので平然としているが、もう少し裸に抵抗感を抱いてほしい。

風呂でサッパリした後、朝食でエネルギー補給。ダンジョンで昼をとることを考えて、予め作って、アイテムボックスに保存しておく。

「いい匂いがするわ」

「これは昼メシだからな、今はダメ」

支度を終えたら、いざエイブル町のダンジョンへ!

「冒険者ギルドへは寄らないの?」

ミストが聞いてきた。いつものドレスの上に漆黒の軽鎧を身につけ、手には槍――霧の谷でベヒーモスを仕留めた得物だ――を持っている。

「なんで?」

「クエストを受けないのかって思ったの」

「あー、そういうことね。今回はダンジョンの雰囲気をつかむための探索をメインにする」

ソウヤたちにとって今回のダンジョンは初めての場所。何があって、どんな魔物がいるのか、人伝の情報しかない。クエストを受けてしまうと、その達成も考えないといけないから、それ以外のものへと観察が疎かになる恐れがあった。

「探索しながら、出てきた魔物は片っ端からやっつけて、アイテムボックスだな」

「今日は『仕入れ』中心ってことね。了解したわ」

ミストは元気に歩き出した。昨晩、結構飲んだが、起きた時もケロッとしていた。ドラゴンには二日酔いとかそういう概念はないのだろうか、とソウヤは思った。自分だったら、たぶん翌日ダウンするだろう量だったから。

何はともあれ、ダンジョンに突入だ。