軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第18話、ダンジョン探索中

ダンジョンの入り口は、岩山の洞窟のような形をしていた。その周りには柵があって、準備をする冒険者や、露店で休憩している冒険者などの姿があった。

その入り口前にもやはり冒険者が門番のように立っていた。

「おう、二人かい?」

新顔だな、というその冒険者は中年男性。口ひげを生やした中堅ないしベテランっぽい外見だ。

「どんなクエストだい?」

「初見だから下見のつもりだったんだが――」

ソウヤは眉をひそめた。

「ここじゃ、クエスト内容を申告しないといけないのかい?」

「いや、単なる世間話さ」

その中年冒険者は笑った。

「ただ、万が一戻ってこなかった奴がいた時に、おれが覚えていれば、ギルドに知らせやすいだろう?」

「そういうことか」

すると、この人はギルドから派遣された専属の冒険者なのかもしれない。

「ご苦労さん」

「おう。そっちも気をつけてな」

中年冒険者の見送りを受けて、ソウヤとミストは洞窟のような入り口に入る。

「案外、いい人っぽかった」

「そう?」

ミストは肩をすくめた。ダンジョン内に入ると、燭台があって光源を提供している。

「こういうのを見ると、やっぱ少なくない冒険者が出入りしているってわかるよな」

入り口近くのフロアは照明が用意されているというのは。逆に言うと、入り口近くは魔物がいないということでもある。入った冒険者が端から、倒してしまうから。

奥からじめっとした空気がお出迎え。岩や土、むき出しの洞窟を道なりに進めば、先行していたと思われる冒険者とすれ違う。魔物とのエンカウントより先に、人と出くわすとは。

ソロだった。軽装備のシーフ系と思われる青年に、ジロリと警戒の目を向けられた。こちらが新顔だからだろう。

背中に背負った袋には何やら入っているようだが、おそらく彼の本日の成果だろう、とソウヤは見当をつける。若干、装備に血がついているようだが、返り血で当人は怪我はなさそうだ。

ソウヤはあまり害意を持たれない様に軽く会釈すれば、ミストが冗談めかした。

「ワタシが美人過ぎるからかしら?」

無言で通り過ぎた冒険者を見やり、ソウヤも微笑した。

「マジでそれあるかもな」

こんな可憐な美少女冒険者がいれば、誰だって見るかもしれない。

その後、二組ほど冒険者とすれ違ったが、特に話しかけられることもなかった。それぞれ倒したモンスターの部位を持っているようで、それぞれ目的は果たしてのご帰還だろう。

やがて、ソウヤたちは開けた場所に出た。ギルドの酒場で聞いた話では、ここから行き先が無数に分岐するという。

「さて、こういう時、どこから行くか迷っちゃうんだよなぁ」

「どれが正解?」

「オレたちの探索の目的を考えたら、どれを選んでも正解」

たとえ行き止まりでも、何があるか確かめられるならそれでいい。そんなわけでサクサク行こう。

・ ・ ・

ダンジョン探索は、順調だった。

奥へ進めば進むほど、さまざまなモンスターと出くわす。堅い外殻を持つ昆虫型モンスターとか、集団行動の犬系亜人コボルトとか、スライムとか、肉食のオオトカゲとか……。

それらをソウヤとミストは、出てくる片っ端から叩き潰していく。

ソウヤが斬鉄を叩きつければ、装甲芋虫だろうが、コボルトだろうが肉の塊と化す。ミストの槍――竜爪もまた、その名の通り、あらゆる物を切り裂く竜の爪。それに狙われれば、防御も容易く貫通してしまう。

さらに物理耐性がとても高いスライムもまた、ソウヤの渾身の一撃を食らえば潰れて四散。ミストはふっと息を指に吹きかけ、火の玉を具現化させて、敵にぶつけて炎上させた。

物理より魔法。特に火に弱いスライムも楽勝で撃破。

そもそも魔王討伐勇者とドラゴンにとって、大抵の魔物など敵ではなかった。

「さあ、どんどん、出てきなさい!」

ミストは実に楽しそうだった。とびっきりの笑顔が、敵を求め、潰す時のそれは、一種のバトルジャンキーを思わせる。

――いいなぁ、頼もしい。

女の子は守ってあげないと、という気分には、ミストを見ていると感じないソウヤだが、丸っきり安心していられるというのはいいと思った。

「ソウヤ、あの岩のところ、魔石があるわよ」

「本当か!?」

魔力の吹き溜まりなどで、長い時間をかけて作られる魔力を含んだ石――それが魔石だ。モンスターの体内にも発生することが多いが、地面から生える、あるいは埋まっている魔石もまた存在する。それらは魔道具や、魔法武具の素材などになるので、高値で売れる。

ミストの魔力を察知する嗅覚は大したものだった。聞けばドラゴン種は、魔力の流れや存在には敏感な種族らしい。

地形もさまざまだ。岩と土だらけの洞窟かと思えば、石造りの迷宮になったり、沼があったり、岩棚が連なる坂だったりと、ただ歩いているだけでは困難なルートもあった。

――まあ、ダンジョンなんてこんなもんだよなぁ。

勇者時代にいくつかダンジョンを踏破しているから、多少の驚きはあっても、常識の範囲内で抑えることができた。

さして苦戦するようなモンスターも出ないから先へと進む。出てくる敵もゴーレムとか、スケルトンとか、ジャイアントスパイダーとか、新種も増えてきた。

――素材が取れるようなやつがいいんだがなぁ。

目的の半分以上がモンスター素材の仕入れ(物理)だから、色々な種類と遭遇するのはありがたい。が、素材にならないものは、ただ疲れるだけだ。

「これ、スケルトンの骨って言ったら売れないかな?」

何とか役に立てられないかと、倒したスケルトンの骨をつまむソウヤ。しかしミストはあからさまに眉をひそめる。

「そんな気味の悪いもの、誰が欲しがるのよ。ワタシなら、枕元に置くのもお断りだわ」

……何で枕元なんだろう? 理解できないソウヤだった。

「まあ、確かに、動かないんじゃ、そこらへんの骨と一緒か」

それを買おうなんて物好きはいなさそうだ。というか詐欺っぽくて嫌だ。

閑話休題。

ダンジョン内を進みながら、見かけた薬草や毒草、キノコなどを採集。こういうのはポーションとか薬の材料として、冒険者ギルドの採集系クエストでよくある。売り物にするにしろ、集めて損はない。

拾い物といえば、自然の恵み以外にも転がっていた。例えば、ダンジョンに挑んだ冒険者の武器や防具、あるいは道具など。

持ち主が命を落としたか、あるいは生存優先で捨てたかはわからないが、こういった落とし物についても、冒険者ギルドのルールでは拾った者の物となる。本人が特定できるものについては、持ち主が拾った相手にお金を払って買い取ることできる、となっている。

ミストが頭を傾ける。

「案外、落ちているものね……。見つけた冒険者が拾っていってもおかしくないのに」

「貴重そうなものは、拾ってるだろうな。だけど、オレみたいにアイテムボックス持ちでもなければ、あんま手当たり次第に拾いたがらないんじゃないかな」

特に低ランク冒険者が持っているような、一般の武器屋とかで買えるような代物だと。武器や防具は、市販品でも結構高いのだが、もっと貴重な物を拾った時のために、無視することもある。

――まあ、アイテムボックスがあれば、どんどん拾っていけるんだけどね。

ソウヤは、見た目まだ使えそうなロングソードを拾い、アイテムボックスに放り込んだ。