軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第16話、ダンジョンに行きたい

ソウヤとミストはDランクの冒険者になった。

登録から十日あまり、実に早い昇格だった。

果たしたクエストによる報酬額自体は微々たるものだが、クエスト達成率百パーセントなことと、不人気とはいえ、比較的難度の高いクエストを複数こなしたせいだろう。

……ギルドフロアでの一件も影響している……とは思いたくない。

ソウヤは、ミストに告げた。

「王都を離れる」

「どこへ行くの?」

「ダンジョンがある町だ」

正確にはダンジョンが近くにある町、である。

魔物が徘徊する地下迷宮こと、ダンジョン。人工的な作りかと思えば、天然の洞窟だったりするが、その中では外とは異なる奇妙な事象が働いている場所だ。危険な場所ではあるが、時々お宝やレアなアイテムが発生する。それ目当てのハンターや冒険者が中に入って富や名声を手に入れることもある。

「この王都ってさ、近くにダンジョンがないんだよね」

ここにいる限り、近場の森や街道周りのモンスター討伐とか、割と大人しいというか。

「商売のための品集めって観点からすると、掘り出し物が多いダンジョンのほうがいい」

ハイリスク・ハイリターン、というか、それに近いものがある。

「ふうん。でもソウヤ、それなら最初から王都じゃなくて、ダンジョンがあるところに行けばよかったのに」

「商売始めた時には、どうせ王都に立ち寄ることになるから、下見や準備のために来ておきたかったんだ。証明書を手に入れるついでもあったしな」

そんなわけで、短い間だったが、王都冒険者ギルドに、しばらくダンジョンのある場所に拠点を移すことを知らせておく。

いちおう、先輩冒険者の何人かに相談はした。王都冒険者が他で仕事をすることについて。返ってきた答えは、季節や稼ぎによっては、仕事を変える冒険者は珍しくないというものだった。

顔なじみの受付嬢――モニカという名前だ――に移動を告げたところ、とても残念がられた。

「ソウヤさんは未消化クエストを積極的に受けてくださっているので、とても助かっていたんですよ」

とはいえ、ダンジョン攻略は冒険者の華だから仕方ない、と理解を示してくれた。

「ちなみに、どちらのダンジョン町ですか?」

「王都より南にある――ええっと」

「エイブル」

「そう、それ」

ソウヤが頷くと、モニカ嬢は、すぐさま書類を作成し、それにギルドの印を押した。

「エイブルの冒険者ギルドは、王都ギルドと同じグループなので、こちらの冒険者プレートがそのまま使えます。エイブルの冒険者ギルドにこちらの手紙を出していただければ、ソウヤさんたちも、すぐにクエストを受注できますよ」

「そいつはありがたい」

紹介状みたいなものかな、と思う。冒険者ギルドにもグループとかあるのか。遠方のギルドとは、まったく関係ないから改めて登録が必要、とかあるのかもしれない。

「またいつでも戻ってきてくださいね、ソウヤさん、ミストさん」

「また来るよ」

「じゃあね」

ソウヤとミストは、冒険者ギルドを後にした。宿も引き払っているので、そのまま王都の外へ出た。

南に伸びる街道を進み、分岐点で南東方向へ。途中から浮遊バイクこと、コメット号を走らせる。

何人かの旅人を追い越したり、すれ違ったりしたが、特にトラブルもなく進んだ。……接触しないよう、人が見えたら街道をはずれて迂回した、というのもある。

・ ・ ・

ダンジョンのある町エイブル。例によって城壁に囲まれたその町は、通称『冒険者の町』。

モンスターが湧く地下洞窟、その内部に入るのは勇敢なる冒険者たち。お宝やレア素材を求めて、今日も冒険者は地下へと潜る。

ダンジョンを攻略する冒険者たちのために、宿ができて、各種の店ができて、やがて家族や関係者、商人らが集まってひとつの町になった。

「王都に比べると、全然小さいわね」

ミストの率直な感想。

「でも、その分、頑強さを感じるわ」

「そりゃダンジョンと隣り合わせになっている町だからなぁ」

勇者時代に聞いた話だと、ダンジョンというのは時々、スタンピードと呼ばれるモンスターの吐き出し現象が起きるという。いわゆるダンジョン内にモンスターが溜まり過ぎた時に発生するものらしいが、問題は吐き出される数があまりに大きいことだ。

下手をすると王国軍に鎮圧出動を要請しなくてはならないほどの惨事となるという。ゆえに、ダンジョンが近くにある町は、ダンジョンスタンピードの際に立て篭もれるように防備が固められるようになっている。

王都のような優美さはない。質実剛健を地でいっているのだ。人もそこそこ多いが、その多くが冒険者とわかる。戦士や魔術師らしい格好の者が多いからだ。

たまに見かける子供は、こちらに来ている冒険者の子か、はたまた商売人家族の子だろうか。

ソウヤは肩に斬鉄を担ぐ。隣のミストはいつもの黒いドレス姿で、特に武器は持たない。彼女は必要とあればすぐに武器を生成できるから、必要のない時は出さないのだ。代わりにソウヤが、その見るからに筋力バカが振り回しそうな武器を見せることで、不用意なちょっかいをかけてくるアホを牽制するのである。

到着早々、エイブルの冒険者ギルドへと向かう。石造りの建物を見たソウヤは、どこか警察署的な印象を抱いた。王都のギルド建物は、博物館のような

があったのだが。

中は、建物の大きさ相応に、王都ギルドに比べたら少々狭く感じたが、そこそこの大きさはある。だが休憩所が酒場になっているようで、すでに酒を飲んで談笑や陽気な笑い声が響いていた。

「王都に比べると、少々下品よね」

「お前は、いつも直球だよな」

「正直者なのよ、ワタシは」

思っていても言わないことを平然と言い放つミストである。霧竜さんにとっては、怖いものなしなのだろう。

まずは受付へ。ソウヤは王都冒険者ギルドから預かった手紙を出しながら、冒険者として仕事をしにきたことを説明した。そうですか、と淡泊な返事の受付嬢。事務的な処理をした後、彼女は笑顔の欠片もなく言った。

「ようこそ、エイブルへ。ランクやルールについて改めて説明はいりませんね。クエストボードはあちら。手順は王都のギルドと同じです。早死にしないように精々気をつけてください」

「……どうも」

そっけない人だと思った。ミストが何か言いたげな目を向けてきたから、ソウヤは肩をすくめる。

何はともあれ、ソウヤたちのダンジョンの町エイブルでの活動が始まった。