作品タイトル不明
第6話 カメーナエと『邪神』1
海が割れたと錯覚するほど強大な醜い生物が姿を現した。
そんな生物の上に一人の少女が立っている。
彼女は海から姿を現したにもかかわらず、髪の毛一本濡れていない。
そんな彼女が明確な敵意、殺意をもって叫ぶ。
『妾の名は「C」! カメーナエ(Camenae) ! この世界を創造した女神 カメーナエ(Camenae) ! 「巨塔の魔女」、そして黒髪の少年! 貴様達はこの世界を穢した罪人! 貴様達はこの世界のバグだ! 故に貴様達をこの世界から排除してくれる!』
普通ならばどれだけ大声をあげても、距離的な問題で聞こえるはずなどない。
しかし、少女は魔術かなにか声を拡声し、エリー、妖精メイド、エルフ種達にも台詞が聞こえた。
妖精メイド、エルフ種達は、その巨大な生物の登場に驚いていたが――エリーだけは別の意味でも驚いていた。
「!? あ、あの生物は! ヒロさん達が見た邪神ではありませんの!?」
ヒロ達、竜人帝国側『マスター』を捕らえた後、エリーが彼らの頭の中を確認。
その際、旧文明を滅ぼした邪神(当時は『魔王』とも呼ばれていた)を操る存在が『C』の姿を確認した。
『C』は遠目だっため、ヒロ達の記憶も曖昧だった。
しかし、邪神はこの巨体のためはっきりと目撃している。
その邪神が今、突然、姿を現したのだ。
エリーが驚くのも当然である。
また『C』が邪神(魔王)を好きなように操っていたのと、彼女自身が『自分はこの世界の神』を自称していたらしい。
故に邪神の上にいる彼女が『C』で間違いないのだろう。
エリーは反射的に『C』、邪神を鑑定する。
『レベル―――― 独■A■(偽神) ■イ( カメーナエ(Camenae) )』
『レベル―――― 超高位生命体 邪神(魔王)』
(邪神の方はともかく、『しー』さんの方はわたくしでも鑑定を一部弾かれてしまうのですね。しかもお二人ともレベルが存在しないですの?)
ドワーフダンジョンで遭遇した蛇擬きもメイが鑑定した限り、レベルは存在しなかった。
あれは武器だから、レベルは存在しないだけだ。
しかし、現在目の前にいる者達は明らかに生物で、武器、道具ではない。ならレベルは必ず存在するはずなのだが……。
『C』の視線が上空で滞空する『巨塔の魔女』エリーへと向けられる。
『まずは「巨塔の魔女」! 貴様から殺してくれる!』
「!?」
かなり距離があるにもかかわらず、魔術によって『C』の声がエリーまで届く。
邪神の身体側面にある口が発光。
直後、エリー目がけて複数の光線が発射される。
発光とほぼ同時に彼女へと着弾!
大きな爆発が空を埋め尽くした。
爆発の煙が一瞬で吹き飛ぶ。
自分の周囲を魔術防御を展開したエリーが、同じく魔術で晴らしたのだ。
(今の攻撃、なかなかのものでしたわね……)
レベル9999のエリーに『なかなかの攻撃』と思わせるだけの力が『C』、邪神にはあるらしい。
彼女も負けずに攻撃をしかける。
「突然、攻撃を仕掛けてくる野蛮人へお返しですわ! 星の撃ち抜き!」
邪神の攻撃にならったような複数の『星の撃ち抜き』を展開、発射!
『星の撃ち抜き』は太いレーザーのような光線攻撃だ。
先程の邪神攻撃と似ている。
『星の撃ち抜き』は、真っ直ぐ『C』、邪神へと降り注ぐ。
『C』はともかく、邪神はその巨体から、攻撃を回避するなんて事はできない。
普通なら、そのまま着弾、ダメージを与えるはずなのだが……。
「!? 攻撃が霧散したですの!?」
『あはははははは! 言っただろう! 妾はこの世界の女神! 魔女程度の攻撃など避けるまでもないわ!』
エリーが放った『星の撃ち抜き』は、確かに『C』、邪神へとヒット。
しかし、彼女達には一切のダメージはない。
まるで日光を浴びるかのように痛みどころか、身じろぎすらしなかったのだ。
さすがにノーダメージ、どころかたたらすら踏ませられなかった事実にエリーは驚愕した。
そんな彼女の側の空間が歪む。
「エリー! ご主人様に言われて助太刀にきたぞ!」
「な、ナズナさん!?」
ライトは『奈落』最下層から、この状況を確認していたらしく、最強戦力であるナズナを投入してきた。
彼女は早速、大剣プロメテウスを使って分身。
そのまま『C』、邪神へと突撃する。
「いくぞ、デカブツ!」
「あのちっこいのもぶっ飛ばすぞ!」
「オマエ達、気をつけて攻撃するんだぞ? ご主人様は相手の手の内が分からないから、気をつけて攻撃しろっていわれているからな!」
「だな! ご主人様の指示通り、気をつけてぶっ飛ばすぞ!」
「おおー!」
ナズナ×5人が落下するように『C』、邪神へと殺到。
ためらわず大剣プロメテウスを振るう!
『奈落』最下層、最高戦力である『SUR 真祖ヴァンパイア 騎士(ナイト) ナズナ レベル9999』の全力攻撃。
並のものなら一撃死亡。
相当な高レベル、防御特化でもノーダメージとはいかない。
何か特殊な魔術、恩恵などがあっても、衝撃などでたたらを踏ませることもできるだろう。
――しかし、『C』、邪神はナズナ×5の攻撃を受けても一切傷を負わず、たたらを踏むことすらなかった。
『C』は見下しきった笑顔で告げる。
「バグ共が……。神である妾を本気で殺すことができると思っているのか?」
『!?』
『C』が一閃!
ただそれだけで『C』と邪神に攻撃を加えていたナズナ×5人が吹き飛び海に落ちる。
水柱によって巻き上げられた水のしぶきを浴びながら『C』は断言する。
「妾はこの世界を創造した神――神を殺すことなど何人もできるはずなかろう?」
恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』で、『奈落』最下層で戦力を溜め込んで以降――初めて彼ら以上の存在がこの瞬間、現れたのだった。