軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第2話 お見舞い

ミキとの話し合いを終えると、次に向かったのは……。

アオユキの私室だ。

彼女は現在、ベッドで療養中だった。

アオユキの私室には猫のグッズが所狭しと置いてある。

ぬいぐるみ、置物、椅子、テーブル、果ては彼女が寝ているベッドすら猫デザインが施されていた。

僕はそんなベッドで横になっているアオユキの頭を撫でながら尋ねる。

「アオユキ、体調はどうだい?」

「にゃぁ~」

布団にくるまって横になっているアオユキは、僕に頭を撫でられると気持ちよさそうに鳴く。

実際、体調に問題はない。

彼女も元気そうに鳴いているのが証拠だ。

では、アオユキはなぜベッドで安静にしているのか?

「深海ダンジョンでゴウとセスタを倒すためにアオユキが、最後の切り札『眷属徴収』を使うまで追い詰められるとは……。本当に大変だったね」

「にゃー」

『眷属徴収』は、アオユキ最大の切り札だ。

その能力は――自身の配下にしているモンスターのステータス1割を一時的に強制徴収。自身のものにすることができる。

効果は非常にシンプルなものだ。

配下のモンスターから一時的にステータスを1割徴収し、ゴウ&セスタ、二人の『ますたー』をアオユキ一人で倒したのである。

ここまで聞くと非常に便利な能力かと思いきや……。

当然、デメリットが存在する。

正確には……デメリットというより、僕の『無限ガチャ』とアオユキの能力が上手く噛み合い過ぎるのだ。

『無限ガチャ』から強力なモンスターを大量に顕現させることができる。

それこそ好きなだけだ。

アオユキはそれを次々に配下にすることが出来る。

『眷属徴収』能力も配下にしているモンスターのステータス1割を一時的に強制徴収するが、その際、えり好みはできない。

配下にしているモンスター全員のステータス1割を一時的に強制徴収するのだ。

結果、アオユキの体が自壊するほどの力を得てしまう。

たとえ事前に『無限ガチャ』カードで、体を成長させて頑強にして耐久値を大幅にアップさせてもだ。

僕は背後に控えるメイに振り返り尋ねる。

「でも『眷属徴収』で耐えきれなかった傷はすでにカードの力で治癒されているんだよね?」

「はい、ですがエリー曰く、傷が塞がっただけで、筋肉疲労、内臓、血管等へのダメージ蓄積は無視できないとのことです。なので、暫く安静にしているのがよいと」

「にゃふぅ!」

アオユキはエリーの診察に『傷は塞がって自分なら大丈夫なのに』と文句を言いたそうな声を漏らす。

僕は彼女を落ち着かせるように再び頭を撫でる。

「頑張ってくれてありがとう、アオユキ。お陰で『ますたー』を二人も捕らえることができたよ。しばらくは、体調を戻すためにもお休みしていてね」

「うにゃぁ~♪」

僕が頭を撫で、声をかけたことでアオユキは、暫く体を休めることを受け入れた。

背後でメイもアオユキが素直に休息を取ることを安堵しているのが伝わってくる。

見舞いを終えると、長居してはアオユキの体に障るため、私室を退席。

廊下に出ると、次に向かう先をメイに尋ねる。

「次はどこに行くんだっけ?」

「ユメ様、ナズナとのお茶会です。今回のお茶会には二人のお手製お菓子が出るとのことです」

「それは楽しみだね。それじゃ急いで向かおうか」

僕は背後にいるメイへと笑みを向け、歩き出した。

『SSR 転移』で移動してもいいが、気分的に歩きたくなり、足を動かす。

メイは何も言わず、僕の後ろに控えて黙って続く。

ミキ、アオユキと立て続けに『竜人帝国ますたー達捕獲作戦』関係者達と会ったことで当時を思い出し、ユメの前に顔を出すには雰囲気が鋭くなりすぎる気がした。

なので歩くことで雰囲気を落ち着かせようと考えたのである。

(竜人帝国といえば……帝国の上層部が慌てて星から逃げようとして『プロジェクト・アーク』を前倒しで起動させたせいで、殆ど引き継ぎをやっていない上、搭乗していた上層部全員が落下し死亡。さらに『巨塔の魔女』エリーの暗殺に失敗した元竜人帝国上層部達が亡命を希望したせいで、誰が現在『竜人帝国を統治しているのか?』曖昧な状況らしい。その状況を利用して、『自分が現皇帝だ!』と名乗り上げる者が出たり、『いや、自分が皇帝だ』)と権力争いをしているとか。恐らく近々、竜人帝国内部には小さな国が乱立するだろうな)

誰が統治するのかも決めずトップ陣がごっそりといなくなったのだ。

竜人帝国がバラバラになるのは避けられないだろう。

(あと『ますたー』といえば……黒さんはちょっと心配だな……)

僕は後ろを歩くメイに軽く視線を向けてしまう。

メイが1対1で戦い黒を倒し、無事に捕獲。

彼の口から、『金髪で上半身裸、口が悪い男――カイザーという名前の人物に合ったら、彼だけは殺さないでくれ』と懇願。

カイザーという男性は、黒の親友で、自分のせいでこの世界に来てしまったらしい。

しかし、カイザーという男性はヒロによって殺害。

ヒロの隠し 恩恵(ギフト) 、『 同族喰らい(トモグイ) 』のため、カイザーは心臓を抉られて喰われてしまう。

黒はカイザーの遺体の前で僕に願う。

『……コレはどうなってもいい。だからカイザーの遺体は丁寧に埋葬してもらえないだろうか』

『……分かりました。お約束します。罪を犯していないのならば、黒さんの身柄も悪いようにはしませんので安心してください』

彼の親友を思う気持ちを無碍にはできず僕は約束を交わした。

当然、交わした約束は守る。

現在、黒はミキと同じ『SSSR 呪いの首輪』をつけて、黒い刀は没収。

目の封印もエリーによって強化。自分では外せないようにしている。

そして、『奈落』最下層の一部を譲り、カイザーの墓を作る場所を与えた。

以後、彼はカイザーの墓を作ると、1日の殆どをその場所で過ごしている。

エリー曰く『精神的に病んでいるようですわ。場合によっては自ら命を絶ってしまうかもしれませんの』とのことだ。

エリーの記憶チェック、メイの嘘判別による尋問でも黒は犯罪らしい犯罪はおかしていない。

レベルアップも海中か、ダンジョン奥地で行っていた。

それ以外は基本カイザーの側に居続けていただけ。

しかし、そんな常に一緒に居た親友であるカイザーが死亡。

殺害した相手は『奈落』最下層のさらに下で現在、苛烈な拷問を受けている。

黒自ら手を出すより、よほど辛く苦しい目にあっていた。

なので復讐を果たしている状態ともいえる。

結果、何をしていいのか分からず、静かに親友の墓の側で一日を過ごしているのだ。

妖精メイド達が武装して監視しているが、逃亡や反乱のためではない。

いつ自殺するか分からないから、監視させている状態だ。

一応、僕の『無限ガチャ』カードで精神治療を申し出たのだが……。

『……申し訳ないが。気持ちだけありがたく。今はただカイザーと向かい合っていたい』と黒本人からやんわりと拒否された。

今は本人的にもそっとして置いて欲しいのだろう。

そういう時は誰にでもあることだ。

僕は思わず軽く溜息をついてしまう。

ちょうどそのタイミングでユメとナズナが待つ部屋へと到着する。

待ち構えた妖精メイド達がそっと扉を開く。

僕は軽く手を上げ彼女達に礼をすると、部屋に足を踏み入れる。

部屋に入るとすぐに香ばしい甘い匂いが漂ってきた。

僕の姿に気付き、ユメ、ナズナが笑顔で駆け寄ってくる。

「にーちゃん! いらっしゃい! あのね、ユメ、ナズナちゃんと一緒にクッキーを作ったの!」

「ご主人様のためにいっぱい妹様と作ったんだぞ!」

「ねー!」

「なー!」

二人は笑顔で互いに笑い合う。

僕も先程までの沈んだ気持ちが嘘みたいに自然と幸せな笑みを作ってしまう。

「それは楽しみだね。それじゃ二人が作ってくれたクッキーをお茶と一緒に楽しもうか」

「食べて、食べて! ユメ、頑張って作ったから!」

「あたいも頑張って作ったぞ!」

にこにこ笑う二人に手を引かれて席へと向かう。

背後でメイがお茶の指示を出し、妖精メイド達が動き出す。

僕は復讐を終えて真実を知り、一部違和感やもやもやとした感情を抱えながらも、全ての決着をつけ、妹達と平和なお茶会を開くことが出来たのだった。

――しかし、そんな平和は紛い物で最悪な形でぐちゃぐちゃに潰されることをまだ僕はこの時点では知らずに居た。

その前触れとなる一報が翌日、世界中から届く。