軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1話 ミキとの約束

僕こと、ライトは無事に両親、村人を皆殺し、故郷を破壊し尽くした男――ヒロへの復讐を果たす。

他の竜人帝国側『ますたー』達も確保。

彼らの頭の中から『なぜ僕の村を滅ぼしたのか?』、『しーとは?』、『ルカンの裏切りに気付いていたのか?』など、知りたい情報をエリーが抜き出してくれる。

お陰で僕が知りたかった真実の大部分を知ることができたが……。

腑に落ちない点もいくつかあった。

しかし、『腑に落ちない』原因であるルカンが自爆自死している以上、解明することは事実上不可能である。

他にも腑に落ちない点として……。

僕の両親を殺害し村人を殺し、故郷を破壊した理由は――『ヒロ達が、「C」という存在を恐れ、始末するため僕のような「偽ますたー」達を殺害して回っていた』だ。

これはヒロ達の頭からエリーが直接読んだ以上、絶対の真実なのだろうが……。

僕はその真実を知っても、なぜか納得できなかったのだ。

(エリーの魔術を疑っている訳じゃないんだが……)

なぜ腑に落ちないのか、自分自身でも分からず、小さな疼きを覚えつつ日々を過ごしていた。

そんな小さな疼きを抱えて、元『種族の集い』パーティーとヒロ達への復讐を終えた僕が次にしたことは……。

元魔人国側『ますたー』の一人、ミキに対する褒美を与えることだ。

「ライトちゃん、ここをミキィが使ってもいいのぉ!?」

元魔人国側『ますたー』であるミキは、地下牢屋から連れ出され、『奈落』最下層に一室を与えられた。

部屋はリビングに、寝室、風呂とトイレが別で、台所も存在して自炊もできる。

一般的な妖精メイド達の自室より圧倒的に広く、快適に過ごせる設計だ。

僕はリビングソファーに座りながら、テーブルを挟み同じくソファーに腰を下ろすミキへと告げる。

「ヒロ達の脱出を阻止する前、約束したからね。待遇を改善するって」

竜人帝国から亡命してきた者達が、機密書類を持ち込んできた。

お陰で僕の故郷を滅ぼしたのがヒロだと判明。

そして、『プロジェクト・アーク』でこの星から脱出しようとしていることも発覚した。

なので計画を妨害するため、ミキに情報提供を求めた。

その際、彼女が、『知っている限りの竜人帝国側「マスター」とヒロについて話をするから、終わった後、ミキを拷問したり、殺害したりしないって約束して欲しいのよぉ。もちろん待遇は今まで通りでいいから……駄目かなぁ?』と要求。

その要求に僕は納得して、『分かった。竜人帝国側「ますたー」、ヒロについて知っている限りの情報を――いや、もうこの際、知っている情報を全て話せば拷問、殺害もしない。待遇も緩める。僕、ライトの名に懸けて約束するよ』と話した。

約束した以上、守るのは当然のことだ。

なので地下牢から出して、僕達同様に『奈落』最下層に彼女の専用の部屋を作ったのだ。

とはいえ、ただ部屋を作った訳じゃない。

僕は釘を刺すように告げる。

「ここで過ごす分には問題ないけど、許可無く部屋の外に出ようとしたら……。悪いけど、状況次第では再び地下牢に戻ってもらうことになるから」

「分かっているわぁ。せっかく得た権利も、ライトちゃん達の信頼も投げ捨てるマネはしないわぁ!」

ミキは満面の笑顔を作り同意した。

別に彼女を信頼して地下牢から、僕達と同じ『奈落』最下層フロアーに上げたわけではない。

ミキの部屋は確かに僕達と同じ『奈落』最下層にあるが……。

内実はまったくの別物だ。

ミキを隔離するため、わざわざ新規に『奈落』最下層を拡張。

彼女の部屋は僕達とは大きく離れ、隔離されている。

さらに部屋に入出するためには、長い廊下があり、その廊下には三つの扉が存在する。

最初の門には妖精メイド達が武装し、24時間体制で警護。

2番目の扉には、地下牢同様引き続き『UR 近接戦闘魔術ゴーレム ダークナイト レベル5000』が見張りとして待機している。

最後3番目の扉はエリーが魔術で封印した特別仕様だ。また2、3番目の扉の間にある廊下にはエリーが厳選し、ネムムが暗殺者観点からマジックアイテムの罠がぎっしりと敷き詰められている。

天井、床、壁、空気その物にも罠が仕掛けられている徹底ぶりだ。

お陰で出入りするだけで一苦労である。

ちなみに食事は、三ヶ月分の食材を部屋にストック。

月一で補充する予定だ。

食事がしたかったら、ミキ自身が勝手に作れというスタンスである。

食材が三ヶ月あるのも念のためのストックでしかない。

話を戻す。

ミキの新たな自室は地下牢より広く、綺麗で快適になっただろうが、警備状況を考えたら隔離の強固さはあまり変わっていない。むしろ、より強固になっているだろう。

(ミキよりレベルが低いユメや妖精メイド達がいるんだから、当然といえば当然の対応だよね)

未だにミキの首には『SSSR 呪いの首輪』がつけられている。

弱体化しているが、彼女が高レベル『ますたー』なのは変わりは無い。

最大限、警戒するのは当然のことだ。

僕は軽く咳払いしてから、話しを続ける。

「次はアイスヒート達に協力してくれたお礼として、一月に一回、『奈落』最下層での自由を許すよ」

僕が上昇する『アーク』に新品の『アーク』……『SUR 宙城(そらじろ) 』をぶつけて撃墜。

その残骸から抜け出してくるヒロ達と対峙。

瞬間、僕、メイ、アオユキ、エリー、ナズナが転移してしまう。

残されたアイスヒート達は、姿を消した僕達を探し出すためミキに協力を求めた。

その際、『この報酬は後日必ず支払おう』と約束。

アイスヒート達が独断で交わした約束だが、彼女達が転移した僕達を心配した結果交わしたものだ。

トップとしてアイスヒート達の気持ち、メンツを潰さないためにも、『奈落』最下層での限定された自由を許したのだ。

この発言にミキが目を輝かせ、身を乗り出す。

「それって自由にお買い物できたり、お店で食事をしたり、スズちゃんを誘ってデートしてもいいってこと!?」

「デート云々はスズが受け入れるかどうか分からないけど……買い物や食事は好きにするといい。お金――『奈落』で使用できる貨幣は月一で定額を出すよ。その使い道に対してうるさくいうつもりはないから」

『僕達に害をなすための準備をしていると判断した場合、その限りではないが……』

その点についてわざわざ言うつもりはない。

ミキは両手で顔を押させて体をくねらせる。

「えぇえ~どうしよう! スズちゃんと楽しくデートして、夕食を共にして、お洒落なバーでお酒を飲んでベッドインしちゃったら! きゃぁぁぁぁ! あっ、でもその場合、一日を過ぎちゃうからルール違反になっちゃうわよね……。……ッ!? 閃いた! むしろ、スズちゃんをこの部屋に連れ込めば一ヶ月間スズちゃんと同棲! ぬるぬるぐちょぐちょベタベタ塗れ濡れの毎日が送り放題じゃない! やば! ミキィ、天才過ぎ!」

「「…………」」

僕と背後に立つメイは、ミキの口から漏れ出る妄想に無言でドン引きしてしまうのだった。