軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18話 ライトvsヒロ5

「今からやるのはしかたないことだ。船が嵐にあって沈没。自分が助かるために他者を殺害してでも、海面に浮かぶ板を掴むようなもの。これは『カルネアデスの板』なんだ。ボクは悪くない……ッ。悪いのはここまでボクを追い詰めた ライトくん(君) だ!」

「「「!?」」」

ヒロの行動に僕、メイ、ナズナは驚く。

だがある意味、それだけならただ『驚いた』で済んだのだが……。

ヒロはあろうことか、取り出した心臓にかぶりついたのだ。

「「!?」」

「うげぇ!? 気持ち悪!」

僕とメイは突然の奇怪行動に目を剥く。

ナズナは心底気持ち悪そうに声をあげた。

突然、火も通していない、未だ血が滴る心臓を貪り喰いだしたのだ。

引かないほうが無理である。

あまりに気持ち悪い行動に攻撃するのも忘れて、見入ってしまう。

ヒロはその間に両手に握った心臓を喰い終える。

「――眷属作成!」

「!?」

彼は口元についた血を拭わず、そのまま地面に手を突く。

そして、『眷属生成』と叫ぶと、魔方陣が展開。

地面からゴーレム×3が姿を現すと、僕へ向かって突撃してくる。

反射的に警戒してゴーレムを鑑定。

(レベル1000のゴーレム。特殊な能力はなし)

レベル1000程度のゴーレムなど、封印を一部解放した『 神葬(しんそう) グングニール』を軽く振るうだけで、倒すことができる。

僕の相手ではないが……。

嫌な予感が背筋を這い回り止まらない。

僕がゴーレムを倒している間に、ヒロは地面に手を突いたまま続けて叫ぶ。

「――錬金変成!」

今度は地面所か、部屋全体が変質した。

地面、壁、天井、全てが丁寧に磨かれた綺麗な鏡状態に変質してしまったのだ。

あまりの変わりように目を奪われてしまう。

ヒロはその隙を逃さない。

「光線!」

光と化したヒロが再び光速での『 光撃(こうげき) 』をしかけてきた。

ただし今度は直接僕を狙わず、大きく脇を通り過ぎる。

通り過ぎたヒロは、鏡の壁にぶつかり反射! 反射! 反射! 反射!

「ぐぅッ!」

「ライト様!」

「ご主人様!」

どうやらヒロは、『 神葬(しんそう) グングニール』、『UR 上級魔術倍反射(ハイマジック・カウンター) 』、彼的には認識不能攻撃な『UR 時間停止(タイムストップ) 』を警戒し、部屋を鏡張りに作り替えて、『 光撃(こうげき) 』で乱反射。

光速で動くことで僕に狙いを絞らせず、少しずつ削り殺すつもりらしい。

ヒロの狙い通り、攻撃を仕掛けようにも不規則に反射する上、速すぎて反応できない。

回避、防御に専念していると、腕、足、肩、頬などが鋭い刃に削られるようにずたずたにされて血を流し出す。

メイ、ナズナが思わず心配の声をあげてしまうほどだ。

僕は彼女達の声を聞きながら、回避に専念。

回避に専念しつつ、疑問を抱いてしまう。

(こんな力があったなら、どうしてさっさと使わなかったんだ? だいたい、彼の 恩恵(ギフト) とゴーレム製造、錬金なんて繋がらない気が……。それに心臓を突然、食べ出した意味――!?)

つい疑問を考察。

結果、一つの答えに辿り着く。

驚愕で一瞬、動きが鈍る。

その隙をしっかりとヒロは狙い『 光撃(こうげき) 』をしかけてきた。

僕はほぼ勘で体を捻り、致命傷を避ける。

足に大きく傷を受け、機動力が落ちてしまうが、直撃を喰らうよりはマシだ。

傷を受けた足の膝を床に突ける。

ヒロが先程居た位置へと着地。

先程と違って、僕の体は切り刻まれ、鏡張りの床に血が飛び散っていた。

彼は勝利を確信した笑みを浮かべる。

「やはり地の利を得れば、ボクに敵う存在は『C』しかいないようですね……ッ」

「…………」

「ふふふふふ! どうしたのですが黙り込んで? 勝機がないのを自覚して、絶望してしまったのですか? さきほどまであれだけイキっていたのに! これが所謂、強くて調子に乗っている相手を逆に圧倒的な力で倒す『ざまぁ!』というヤツですかね! あははははは! まさしく、ざまぁですよ! ざまぁ! ざまぁ! ざまぁぁぁぁああッ!」

「…………」

既に自身の勝利を確信し饒舌になって『ざまぁ!』を連呼するヒロに反応せず、僕は汚物でも見るような侮蔑の視線を向け続けた。

視界の端で『もう我慢ならない!』とナズナが参戦しようとするのを軽く手を上げ止めつつ、調子に乗っているヒロへ心底冷えた言葉を向ける。

「……この場所へ来る前に、メイと戦い捕らえられた 黒(ヘイ) さんという人の話を彼女の口から聞いた。 黒(ヘイ) さんから、カイザーさんという人は助けて欲しい。彼は罪を犯していない。ただ脱出用のアークの修理をし続けていただけだから。代わりに自分はどうなってもかまわないと」

「どうしたんですか、当然? まぁ、黒さんらしいといえばらしいと思いますけど」

「彼の口から、カイザーさんという人種の 恩恵(ギフト) が、『錬金』だと聞いたらしい。その力でこの星から脱出するための『アーク』をずっと修理していたと。さっき貴様が部屋全体を鏡に変化させた力、『錬金』はそのカイザーさんという人の恩恵なんだろう? 恐らく、眷属作成も!」

僕は足、腕、頬などから流れる血、痛みなどを無視して立ち上がり、心底軽蔑した視線でヒロを睨む。

「貴様……仲間の恩恵を得るため、心臓を抉り出し口にしたんだな!」

「「!?」」

僕の台詞に参戦しようとしていたナズナ、彼女を止めていたメイが青い顔で驚愕してしまう。

あまりの事実に二人の視線もヒロへと向けられた。

彼は僕の問いに未だ仲間の血が付いた口元も拭わず、爽やかに笑う。

「ええ、そうです。正解ですよ。ボクの最後の切り札。隠し 恩恵(ギフト) 、『 同族喰らい(トモグイ) 』の力によって、カイザーさん、ヒソミさんの恩恵を得たのです」

彼は明日の天気を答えるような気軽さで同意した。

「『 同族喰らい(トモグイ) 』は同種――ボクは人種なので恩恵持ちの人種の心臓を食べると、その相手の恩恵を得られるんです。最もボク自身、そんな非人道的なマネはしたくなかったので、未来永劫この力は使うことはないと考えていたんですが……。君達がボクをここまで追い詰めた結果、使わざるを得なくなったんです。だからボクは悪くない。悪いのは――君たちだ。君たちのせいだ!」

ヒロの話を聞いて、メイは青い顔で口元を押さえ、ナズナは涙目でメイの後ろに隠れる。

僕達から軽蔑、侮蔑、哀れみなどの視線を向けられても一切気にしない。

むしろ、開き直って話し続ける。

「アークが壊れた以上、この星から脱出することは不可能。ですが、ボクはまだ生きるのを諦めていない! ライトくん、君を殺した後、君の心臓を食べてその素晴らしい恩恵をボクがもらい受ける。そこのメイドさんと銀髪の少女。メイドさんは黒さんを倒したほどの素晴らしい恩恵持ちで、銀髪少女は対『C』用に準備した『ダンジョンコア爆弾(仮称)』にも耐えきった素晴らしい恩恵持ち! 君達の心臓も食べてその恩恵をもらいますね!」

ヒロは既に焦点の合っていない目で叫び続ける。

「君達だけじゃない! ゴウさん、セスタくんを倒したあの猫耳フードの少女の心臓も! 魔女姿の彼女の心臓も! 地上に出たら、恩恵を持つ人種の心臓をみんな食べて世界中の恩恵全てをボクの物にするんだ! そうすればたとえ『C』にも必ず対抗できる! そして最終的に『C』の心臓も食べてボクが『C』に成り代わるんだ! ははははは! あはははははははッ!」

ヒロは壊れた笑い声を上げ続けた。

『 同族喰らい(トモグイ) 』を初めて使用した影響か、『しー』に対する恐怖心か、追い詰められ自暴自棄になった結果か、別の要因かは分からないが、もう彼は人種ではない。

人種をただ恩恵を増やすエサと認識している『化け物』だ。

彼を地上に上げては絶対にならない。

「オマエは地上にあげるわけにはいかない。何より僕は言ったよな? 『貴様は絶対に許さない。貴様だけは地獄が生ぬるい地獄以上の地獄を味わわせてやる!』と」

狂気的に嗤う彼を前に僕は力強く断言したのだった。