作品タイトル不明
17話 ライトvsヒロ4
竜人帝国側『マスター』のリーダーを務めるヒロは、元居た世界の日本でもエリート街道を歩む男性だった。
勉強、スポーツ、友人、恋愛、etc……容姿にも優れ、身長も高く、持病も無い健康体。実家も太く、両親に愛され、妹、弟にも慕われていた。
彼が望みを叶えられなかったことはなく、何をしてもコツをすぐに掴み誰よりも上手くこなすことができた。
海外の有名大学に留学、卒業し、日本へ帰国。
大企業に入社し、誰もが羨むエリート街道、人生を歩んでいた。
一見すると、完璧なヒロだったが……。
彼には一つ悪癖があった。
その悪癖とは……イジメだ。
彼自身が直接イジメ対象に手を出すのではない。
周囲を動かし、気付けばその者がイジメられる環境を作り出す。
そして、そんなイジメられているものに、さも『自分はあなたのヒーローです』と言わんばかりに善意の手を差し出し、相手から尊敬の目を向けられる。
イジメ被害者がヒロ自身が本当の首謀者とは知らず、尊敬の目を向けてくることにどうしても快楽を抱いてしまうのだ。
結果、小中高大学でもイジメを続け、過去には自殺者まで出すほど追い詰めていた。
それでも止められず、現在勤める会社でも似たようなことをしていた。
しかし、そんなヒロは気付けば、異世界にいた。
(これってよくある異世界転生ってこと?)
ヒロ自身、別に死んだ記憶は一切ない。
最後の記憶も一人暮らしのタワーマンションの自室ベッドで横になり、目を閉じ眠りについた。
眠っている間に、地震、火事が発生しタワーマンションが崩れたか?
突然、心臓麻痺で死亡したのか?
原因は分からないが、自分が別の世界に記憶を持ったまま転生したのは事実だ。
なぜなら元いた世界には魔術で部屋を照らす技術など存在しない。
――ヒロが生まれた実家は、街に店を持つ商人だった。
そこそこ裕福で、上に年の離れた兄が居た。
ヒロは次男で、両親、兄からも可愛がられ育つ。
彼は異世界物にありがちなことを一通りためした。
その一つが『ステータス』だ。
(ステータスって……まさにゲームのような世界だな……)
彼は呆れつつも、重要な情報のため自身のステータスをチェックした。
レベルはまだ子供のため低いが、気になる点が一つあった。
ある程度、成長すると、ステータスに変化が起きる。
( 恩恵(ギフト) 、光?)
恩恵(ギフト) について調べると、稀に神から与えられる珍しい力のことらしい。
両親、兄はヒロが 恩恵(ギフト) を持っていることに喜ぶ。
ヒロは家族からの後押しもあり『 恩恵(ギフト) 、光』について調べる。
最初こそただ光を放つだけだった。
しかし、モンスターを倒しレベルを上げると、出来る事が増えていく。
光を纏めて剣にしたり、狙いを付けてビームのように発射、怪我を負っても光を浴びれば一定時間で治癒などすることができた。
レベルが上がれば、より強い力が引き出せることを実感する。
(『 恩恵(ギフト) 、光』。名前は適当だけど、大当たりの恩恵のようだ。ゲームでいうなら、超万能型ってやつかな)
ヒロは『 恩恵(ギフト) 、光』の検証を続けている間に、気付けば著名な冒険者として名前が広まっていた。
冒険者――この異世界にはモンスターが居て、人々を苦しめていた。
それら危険なモンスターを退治するのが、冒険者だ。
実力が高い者は、尊敬され、社会的発言力、立場も高まる。
ヒロは『 恩恵(ギフト) 、光』の力、実家の太さ、前世でも培ってきた外面の良さであっさりと、高レベル冒険者へと到達。
街でも一目置かれる人物となる。
街を歩くだけで尊敬の視線を向けられ、冒険者からは憧れ、街の権力者達からは敬意を払われていた。
しかし、彼の悪癖は未だに止められなかった。
『 恩恵(ギフト) 、光』の力でモンスターを倒し、『 ヒーロー(英雄) 』として尊敬を向けられる一方、裏でイジメで自殺まで追い込む『遊び』を止められず、むしろ積極的におこなっていた。
魔人国側『マスター』のゴウとは、この時期に出会う。
ゴウも前世の記憶を持ち、恩恵を所持していた。
最もゴウの場合、持ち前の天才的武術家技能のみで、ヒロ同様の高レベル冒険者の地位に就いたのだが。
ヒロとゴウは前世の記憶という共通点から手を結ぶ。
手を結んだ理由は、『この異世界にどうして自分達が連れてこられたのか?』、『元の世界に戻る方法はあるのか?』、『自分達の他にも前世の記憶を持つ者はいるのか?』について調べるためだ。
どんな基準で自分達がこの異世界に連れてこられたのか?
連れてきた者にはどんな意図があるのか?
連れてきた自分達に何をさせたいのか?
自分達をどうしたいのか?
疑問はつきない。
最悪、相手の狙いが『自分達を苦しめるため』という可能性も否定できない。
なのでその場合の対抗策も二人は話し合い、探すことに同意しあう。
またその段階でゴウは、ヒロが裏でイジメを楽しんでいることには気付いていた。しかし、自分には何の関係もないからと一切気にせず流す。
そして二人は手を組み、ダンジョンに潜ったり、著名な研究者、魔術師に話を聞きに行ったり、自分達で技術開発などをおこなったりした。
いくつかの発見はあったが、彼らをこの異世界に連れてきた存在の正体は不明。
他の前世所持者も発見されなかった。
――数年後、邪神を従えて『C』と名乗る化け物が世界を襲い出す。
『C』が従える化け物は、皆から『邪神』、『魔王』と呼ばれ恐れられた。
「ば、化け物、あ、あんなのに勝てるはずがないですよ!」
「アァ……同意見だ。ヒロ、あれを使うぞ……ッ」
ヒロ、ゴウは一目『C』と邪神を目にして、戦闘を放棄。
彼らは家族、冒険者仲間、友人達を見捨てて自分達だけが助かる道を選択する。
二人だけでダンジョン奥地へと移動。
二人が辿り着いた場所は、ダンジョンのセーフエリアの小部屋だ。
いくつかのダンジョンに潜ったことがあるが、このセーフエリアの小部屋は外界と断絶しており、非常に強固な作りをしていた。
そして、別のダンジョンで発見した『時止めの秘宝』と呼ばれる希少なマジックアイテムを取り出し、使用。
二人だけで時間を停止。
マジックアイテムを使った疑似的コールドスリープをおこなう。
マジックアイテムの効果がどれだけ続くかは分からない。一生かもしれないし、短くて役にたたないかもしれないし、数万年後かもしれない。
目が覚めて外に出たら誰もいない荒野が続いているだけかもしれなかった。
それでも『C』と邪神と戦うよりマシと二人は判断したのだ。
結果、彼らは一応、賭けに勝利する。
マジックアイテム効果が切れて、ヒロとゴウの時間が再び動き出す。
二人はダンジョンから外へと出る。
ダンジョンの外に出ると、以前の文明は滅んでいた。
代わりに前世と比べて大きく衰退した文明が存在していた。
ヒロとゴウは、人里に降りて情報収集をおこなう。
「おい、ヒロ、こいつをどう思う……」
「正直、気味が悪すぎますよ……。本当に気持ち悪い」
情報を収集すると、二人がいた文明は 邪神(魔王) によって滅ぼされていた。
それは納得が出来る。
その 邪神(魔王) を退けたのが聖女、勇者達らしい。
『あんな化け物を退けられるのか?』とも思うが、ギリギリそれについては納得できる。
しかし、どれだけ二人が情報を収集しても『C』については一切の情報が出てこなかったのだ。
まるで誰かが意図的に『C』の存在を消したかのように……。
「そんなことをしてなんの意味があって、誰が得をするのか……」
「決まっているだろうがァッ……」
恐らく何かしらの意図があって『C』自身が、自分の情報を歴史から抹消したのだ。
理由は色々考えられるが……再び、『C』が姿を現す可能性が高い。
なのでヒロとゴウは裏で繋がりつつ、別々の組織を立ち上げる。
『C』を滅ぼす組織、『C』に従う組織。どちらに転んでも互いに助け合うことを約束し、二人は動き出した。
そして、ヒロは再び冒険者として活動を再開。
その際、『C』& 邪神(魔王) 、勇者達に殺害されたという前世持ちのカイザー、 黒(ヘイ) 、ルカンと知り合う。
竜人帝国と繋がり、ヒソミ、セスタも仲間へと加わった。
それから国家の力を借りて、『C』と 邪神(魔王) の存在を調べたが……一切の情報はなし。
同時並行で対『C』の方法を模索する。
いくつか計画はあったが、最も現実的な方法は『P・A』――『プロジェクト・アーク』。『C』が居るこの世界から脱出して、新しい住める星に移住する計画だ。
また国家の力を使って『 恩恵(ギフト) 』を調査。
自分達と同じ前世持ちならスカウトして、仲間に取り込む。
またヒロの考え、予想の一つだが……『C』が、現在の世界から消えた理由として、前文明から長い時間が経っている。
『寿命で死亡したのでは?』と。
だが同時に『あの怪物が寿命程度で死ぬか?』とも思ってしまう。
自分達が転生し、この異世界に来てしまったようにあの怪物なら『 生まれ変わる(転生) 』する力があってもおかしくない。
なので人種、奇妙な恩恵を持つ子供についても調べるようになった。
『産まれる前、直後、まだ子供状態なら、怪物「C」でも殺せるかも』という淡い期待を持って、調査、ヒロ自ら出て可能性がある赤子、子供、村などを殺害、破壊を繰り返してきた。
『あの怪物を殺すことなどできない』と理解しつつも、『C』が再び現れるのが恐ろしくて何かせずにはいられなかったのだ。
結果、ライトの恨みを買い、復讐対象になってしまったのだが。
☆ ☆ ☆
追い詰められたヒロが、恨めしそうにライトを睨み付ける。
「……『C』から逃げるため星からの脱出に失敗。ダンジョンでの爆発トラップも失敗。本当に君達はボクの邪魔をしてくれたね。心底嫌になる」
『しかし』と彼は続ける。
「まだボクには最後の……本当に最後の切り札が残っている。けど、この最後の切り札は正直ボク自身、使いたくない。なぜならボク自身の人間としての尊厳を捨てることになるから……。けど、もうそんなことは言っていられる状況じゃない。目の間には『C』にも匹敵する怪物がいるのだから!」
ライトは挑発するように微笑みを浮かべる。
「『C』にも匹敵する怪物って、褒めてくれているのかな?」
「本当に嫌になる。嗤っている所がそっくり過ぎるだろ……ッ」
ライトの嫌みにヒロは不快そうに歯がみした。
彼は軽く呼吸をして、光剣を消して覚悟を決めた視線を向ける。
「今からやるのはしかたないことだ。船が嵐にあって沈没。自分が助かるため他者を殺害してでも、海面に浮かぶ板を掴むようなもの。これは『カルネアデスの板』なんだ。ボクは悪くない……ッ。悪いのはここまでボクを追い詰めた ライトくん(君) だ!」
そして彼はアイテムボックスから二つの新鮮な臓物――心臓を取り出すのだった。