作品タイトル不明
16話 ライトvsヒロ3
メイ、ナズナも殺して『C』対策に乗り出そうと、敵であるヒロが構え――再び光と化す!
一瞬の閃き。
直撃すれば同格でも手傷を負い、格下なら確殺。
ほぼ致死的光が、僕へと襲いかかるが、
「――ガァッ!?」
だが吹き飛んだのはヒロの方だった。
彼は一歩も動いていない僕に正面から襲いかかり、まるで鏡に反射した光のように弾かれ壁へと激突してしまう。
光人化の影響でダメージは無いが、驚きで思わず声をあげてしまったようだ。
ヒロは転がった地面から、片膝を突き体を起こすと、心底困惑した表情を作る。
「い、いったい、何がおきたっていうんだ!? ボクは確かに光人化で攻撃をしかけたはずなのに! どうしてボクが地面を転がっているんだ!?」
「ふふふ……確かに種明かしをする側が気分がいいね。まさかそれほど驚いてくれるとは思わなかったよ」
ヒロの反応が良すぎて思わず僕の口から笑いが漏れてしまう。
彼の態度があまりに面白かったので、早々にネタばらしをする。
僕は一枚のカードを改めて取り出し、彼へと見せる。
「『UR 上級魔術倍反射(ハイマジック・カウンター) 』。相手の攻撃魔術を倍の力で反射する力を持つカードだよ」
もちろん、能力の全てを彼にわざわざ説明してやる謂われはない。
実際、『UR 上級魔術倍反射(ハイマジック・カウンター) 』の正確な説明はというと――攻撃魔術を倍の力で押し返すカード。もし反射に失敗した場合、2倍になった攻撃魔術に襲われる。諸刃の剣なカードだ。
もし『UR 上級魔術倍反射(ハイマジック・カウンター) 』を超える力だった場合、使用者である僕自身に倍の威力となって襲いかかってくる。
そんなデメリットをわざわざ ヒロ(敵) に教えてやるつもりはなかった。
僕は上機嫌で説明を続ける。
「人の体が実際に光になることはない。魔術的力が働いて、光人化中は恐らく『光の魔術』状態になっているんだろう? だったら、攻撃魔術を反射するカードで防げば良いだけ。わざわざ回避するため動く必要も無いよ」
「!? そ、そんなマジックアイテムがあるのか!?」
「攻撃を防ぐだけじゃない」
僕は手にした杖を彼に見せつけるように突きつけた。
「 魂魄封絶(こんぱくふうぜつ) 第一限定解除。コード、『9999』、フォーナイン。『 神葬(しんそう) グングニール』」
「!?」
右手で握り締めた杖――『 神葬(しんそう) グングニール』の封印を一部解放。
普段、僕が使っているこの杖。
一見すると魔術師風の地味な杖だが、実際は槍である。
創世級(ジェネシス・クラス) 、『EX 神葬グングニール』。
約3年間、 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』を毎日引き続けて、ようやく1枚だけ最上級のEXが出た。
それがこの『神葬グングニール』である。
『 神葬(しんそう) グングニール』の一部を開放しただけにも関わらず、ヒロは冷や汗を流し、片膝を突いたままじりじりと後退った。
まるで獰猛な肉食動物を前にした、小動物のような態度である。
彼の魂そのものが『あの槍はまずい物だ』と理解したようだ。
レベル9999の僕の手のひらに握っているだけで、ダメージを与える槍だ。
そんな物を前にして危機感を抱かない方が可笑しいだろう。
「…………」
彼の視線がメイ、ナズナ――ではなく、その奥へと向けられる。
僕に攻撃を通すのが難しいのと、『 神葬(しんそう) グングニール』に怯えてヒロはこれ以上の戦闘を避けて、逃走を選んだようだ。
「ッゥ!」
「『UR 時間停止(タイムストップ) 』、解放」
当然、彼を逃がすつもりなどないが。
『UR 時間停止(タイムストップ) 』。自分以外の対象の時間を停止させる。使用者以外の時間を1分間止める。
いくら光速で動いても時間を止めてしまえば、意味は無い。
僕は悠々と歩きヒロへと近づく。
片膝から、逃走するため立ち上がった状態の彼の腹部へと『 神葬(しんそう) グングニール』を突き刺す。
深々と突き刺した所で、『UR 時間停止(タイムストップ) 』の効果が切れる。
「――ギャアアァァァァア! ど、どうして!? どうして、光人化しているのにダメージを受けるんだ!? それにどうやって光速で移動するボクを貫いたんだよぉおおぉおッ!?」
光と化して逃避しようとしていたヒロだったが、腹部を『 神葬(しんそう) グングニール』に貫かれ、肉体の内側を黒い炎、煙のようなものによって内部から浸食。
僕の手のひらを浸食する以上の痛みをヒロが味わう。
さらに光速で移動する自分を易々と貫いたことに心底驚愕していた。
「あはははははは! さぁ! どうやったんだろう、ね!」
「ぐうぅッ!」
僕は『 神葬(しんそう) グングニール』を右腕一本で振り上げ、下ろす!
出入り口から遠くの壁へとヒロを叩き付けた。
彼が地面に転がるのを横目で確認しつつ、メイに指示を飛ばす。
「メイ、彼が僕達が来た出入り口から逃げ出さないよう封鎖を頼むよ」
「畏まりました。我がメイド道に誓い完璧に完遂してみせます」
メイは返事をするとすぐに『 魔力糸(マジック・ストリング) 』で出入り口を封鎖する。
これでヒロが逃げる心配をしなくてもいいだろう。
ナズナは僕の指示を受けたメイを羨ましそうに眺めていた。
僕が満足そうに頷いている間、ヒロはというと……。
「いぐぐぐぅううぅぅぅッ……ッゥ!」
『 神葬(しんそう) グングニール』で貫かれ、黒く変色した腹部を両手で押さえ痛みに悶え続けていた。
貫かれた箇所がまるで毒物攻撃を受けたかのように黒く変色している。
彼は脂汗を流しながら、点滅を繰り返す。
「ど、どうして!? 再度、光人化しても痛みが消えるどころか、ジワジワ広がっていくんだよ!? おかしいだろ!」
どうやら一度、元に戻って再度『光人化』してダメージを消そうとしていたようだ。
だが消えるどころか、『 神葬(しんそう) グングニール』で受けたダメージは、継続し、むしろじわじわとその黒い浸食を広げていく。
ヒロは苦しみに悶えつつ、壁を背にしながら立ち上がり叫ぶ。
「な、なんだその槍は! い、いったいボクにどんな攻撃をしかけたんだ!?」
「……さぁ? そういえば生物を刺したのは今回が初めてだから。それにこの『 神葬(しんそう) グングニール』は鑑定したけど詳細は不明で……。僕達自身、よく分からない武器なんだよね。だから、その傷口がどうなっているのか、今後どうなるのか知らないんだよ」
「ふ、ふざけるな!? 自分達も理解していない武器を使うなよぉおおぉッ!」
人種に攻撃を仕掛けたのは、レベルアップ馬鹿――魔人国側『ますたー』の1人ダイゴが初めてだが……。
あれは第二解放までして投擲。
細胞一つ残さず消失した。
エルフ種、ミカエルにも攻撃をしたが……。
あれは 幻想級(ファンタズマ・クラス) 、『祝福と天罰』を破壊するため。
ミカエル自身は吹き飛ばしただけで傷を与えていない。
そう考えると、今回のように槍として人種、生物相手に刺すのは初めてのため、相手にどのような影響を与えるのか本気で分からない。
ただ光人化した相手でも、『 神葬(しんそう) グングニール』ならダメージを与えられるだろうと解放。
実際に攻撃をしかけたら、効果があった。
「酷い言われようだ。でも、どんな攻撃をしようが僕の勝手じゃないか。それに貴様にダメージを与える方法は何も『 神葬(しんそう) グングニール』だけじゃない。なぜなら『無限ガチャ』の 対応能力(可能性) は無限大なのだから。たとえば――『UR 超重力槍・乱舞』、解放」
「!?」
痛みに悶えていたヒロだったが、『UR 超重力槍・乱舞』攻撃に慌てて光速移動回避。
一部、回避が間に合わず黒い槍に巻き込まれえぐられる。
「ッゥ!?」
『UR 超重力槍・乱舞』――超重力の槍を複数発射。大抵の物や者は破壊、死亡する。
予想通り、光人化しても『UR 超重力槍・乱舞』、光すら飲み込む超重力には耐えきれず、ヒロの体の一部が削り取られた。
すぐに削られた一部は復活するが、彼の表情に余裕は無い。
「いくら光人化していても『UR 超重力槍・乱舞』で削り続ければ、いつか倒せそうだね」
「…………」
ヒロは今にも呪詛を吐き出しそうな表情で黙り込む。
どうやら、僕の予想は当たっているようだ。
彼は未だに浸食が止まらない腹部を押さえつつ、僕を恨みがましそうに睨み付けてくる。
その表情が僕の長年の怒りを慰撫してくれた。
僕は嗤いながらヒロに尋ねる。
「どうしたの、さっきから逃げてばかりだけど。僕程度、相手にする暇はないのだろう。 さっさと僕達を殺して地上に戻って『しー』について対策するんじゃなかったのかい?」
「ギギギギギ――ッ!」
ヒロは心底悔しそうに歯がみするのだった。