軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12話 心臓

少し前に、ナズナは1人、不規則に柱が乱立している部屋に入った。

部屋の中心には、太い柱があった。

その柱こそ、竜人帝国側マスター達が長い年月をかけて作り出した対『C』用に作り出した『ダンジョンコア爆弾(仮称)』である。

ゴウ、セスタ曰く『化け物のように強い少女』であるナズナを始末するため、ヒロ達が『ダンジョンコア爆弾(仮称)』を起爆。

無事に『ダンジョンコア爆弾(仮称)』は爆発し、ナズナを仕留めたと思ったが……。

彼女は咄嗟に大剣プロメテウスで大量に増えて、1人を守るように重なり合い半球状態になった。

そして、外側のナズナが死亡したが、中心の1人は無事に生き延びることが出来たのである。

中心にいたナズナが、他ナズナ死体を押し退け姿を現した。

彼女は冷や汗を掻きながら、心底驚きの声を漏らす。

「やばい、マジでやばかったぞ。本気で死ぬところだったな。こんな死にそうになったのは……エリーに怒られた時と、メイに怒られた時と、あと……とにかくやばかったな!」

いかに自分が危機に陥っていたことを1人まくし立てると、彼女は大剣プロメテウスを掲げて世界に干渉し『摂理をねじ曲げる』。

「摂理をねじ曲げて傷を癒せ! あと死んだあたいを生き返らせろ、プロメテウス!」

大剣プロメテウスが世界に干渉し、死亡したナズナ達を生き返らせて、負った傷も最初から『無かった』ことにしてしまう。

倒れていたナズナが装備の損傷、傷、欠損など一切合切、元通りに戻り、布団から抜け出るような気軽さで立ち上がり声を上げ出す。

「いやぁ、さすがにさっきの爆発は危なかったな!」

「対処を間違えていたら、マジであたい、死んでいたぞ!」

「でも、機転を利かせられたお陰であたい達、無事に復活したぞ! さすがあたいだぜ!」

復活したナズナ達が口々に驚きを漏らしつつ、自画自賛をした。

一通り感情を吐き出し終えると、今後の方針を話し合う。

「これからどうやって進もう……。またあの爆発攻撃を受けたら、危ないよな……」

「また同じ攻撃を仕掛けられて反応できなかったら、今度こそあたい達、死んじゃうぞ」

「でも、さすがにあんな爆発攻撃、そうそう何度もできないと思うぞ? もしできたら、もっと仕掛けてきてもいい訳だし」

「そんなの分からないじゃないか! この先、ガンガン使ってくるかもしれないぞ!」

ナズナ×複数が喧々諤々の意見交換をした。

そのうちの1人が、ふと、漏らす。

「……このまま、複数のまま行けばいいんじゃないか?」

「? どういうことだ?」

「これだけ増えた状態で進んで行けば、たとえさっきの爆発攻撃を不意打ちで受けても、誰かしら反応して生き残るだろう。その生き残りがまたプロメテウスで倒れたあたい達を復活させればいいんじゃん」

『それだ! さすがあたい、頭良いぜ!』

ナズナのアイデアにナズナ達が揃って声をあげた。

この案が採用されて、ナズナは1人に戻ることなく、ダンジョン奥へと再度進み出したのだった。

――ちなみに、複数人数に分かれたのなら、『ライト達を探す班を作った方がいい』とまで彼女達の頭は回らない。

なぜならナズナだからだ。

ナズナ達が複数人数で再度、ダンジョン最奥を目指す頃、ダンジョンコアルームでは……。

☆ ☆ ☆

対『C』用に作り出した『ダンジョンコア爆弾(仮称)』の爆発にすら耐えて、生き残ったナズナを前にヒロ、ヒソミ、カイザーは驚愕し、絶望感から彼らの間に冷たく重い沈黙が降り積もった。

「ッゥ!? ガァッ……ッ!」

その沈黙を最初に破ったのは……ヒソミの苦痛に満ちた呻き声だった。

ヒソミの背後からヒロが手に光をまとわせ、手刀にして心臓を掴み抉り抜く。

ヒソミは口から血を流し、細目を限界まで広げて驚愕する。

「ひ、ヒロ殿!? ど、どうして……ッ!」

「…………」

ヒソミはヒロへと振り返り苦痛、困惑、驚愕が折り重なった表情を向けた。

しかし、ヒロは一言も漏らさず、心臓をえぐり出し、自身のアイテムボックスへとしまう。

さらに止めを刺すように、そのまま光の剣を作りだしヒソミの首を切断。

彼の首はダンジョンコアルームへと転がった。

切断されたヒソミの顔は、細目を限界まで開き、疑問、絶望、困惑などが支配したまさに苦悶の表情を作る。

心臓が抜き取られたため、切断された首から血が噴水のように吹き出なかった。

しかし、首から血がある程度、出てヒロの顔、体に付着。

返り血を浴びたヒロは表情を一切動かさず、そのまま地面に倒れるヒソミの体を見つめた。

「…………」

カイザーはヒソミがヒロによって殺されても、動揺した態度を表さず、声をあげることすらしない。

むしろ、ヒロに対して軽蔑するような視線を向けつつ、軽く溜息を漏らす。

「まったく……これほど予想通り動くとは……」

「カイザーさん、ボクは……」

「みなまで言うな」

カイザーはヒロの言い訳を一切聞く気はないと切り捨て、いつも通りの態度でソファーへと戻り、腰を下ろす。

アイテムボックスからワインとグラスを取り出すと、つまらない劇を見せられたような態度をとる。

「貴様のやろうとしていることは分かる。自分だけは生き残るため、余達を殺し、レベルをカンスト――レベル9999にするつもりなのだろう? レベルさえカンストすれば、オマエの能力ならば、あの怪物少女を倒すことも、逃げ延びることもできるかもしれぬからな」

「…………」

「どうして分かったのか? という顔だな。こんなの推理にもならんわ! 貴様のような自己保身が強い男が追い詰められたら、仲間や友人、恋人や親兄弟さえ裏切ってでも生き残ろうとする。簡単に予想がつくわ」

カイザーがワインを飲み、吐き捨てる。

「だから、貴様は ヒロ(エセ王子) だというんだ」

「…………」

ヒロはカイザーの言葉に、一切、表情を動かさず、獲物を逃がさないよう慎重に間合いを詰めていく。

彼は両手に光剣を作りだし、瞳はドロドロと昏い殺意で澱んでいた

一方、カイザーはヒロとは正反対に一切、逃げるそぶりを見せない。

2人がけソファーにいつも通り、1人で座り、足を組んで優雅にワイングラスを片手で弄び、ワインを一口だけ口にする。

カイザーはヒロに対して、つまらない輩に向けるような視線を向けつつ、告げる。

「……先にいっているぞ。せいぜい、仲間達を裏切り、殺してでも生きあがいた結末が幸いであることを願うのだな」

ヒロが獰猛な肉食獣のように飛びかかり、カイザーの首を二つの光剣が薙ぐ。

彼の首はヒソミ同様に切り落とされる。

( 黒(ヘイ) 、オマエはまだ生きる道が残っている。故に生きることをあきら――)

彼と唯一違うのは、最後、目の前のヒロの事を一切考えず、唯一の親友を心配した憂いの表情を作ったことだろう。

――こうしてヒロは仲間を殺害し、レベル9999へと到達したのだった。