作品タイトル不明
11話 合流
「メイ! エリー! 無事だったんだね!」
「……ッ! ライト様もご無事でなによりです」
「ライト神様! ようやくお会いすることができましたわね!」
複数の知っている気配に気付き、その方向へ足を進めた。
歩を進めた部屋に入ると、頭からつま先まで黒い男性を拘束し終えたメイとエリーが居た。
二人は合流できた事を喜び声をあげ、安堵の表情を作る。
そんな二人に僕も返事をしつつ、エリーの 戦略級(ストラテジー・クラス) 、 茨の束縛(ドルン・フェッセルン) で拘束している男性へと視線を滑らせる。
「彼は……宙城の瓦礫に居たよね? 二人で倒して、拘束したの?」
「いえ、メイさんが一人で無力化し、わたくしは拘束しただけですの」
「メイが一人で!?」
僕は驚き、声をあげてしまった。
メイはレベル9999と高レベルの割に戦闘は得意ではない。
代わりに何でも万能にこなせるのだが。
相手は僕が一目見ただけでも強者、高レベルで、戦闘慣れしている雰囲気を持っている。
なのに彼女1人で彼を殺さず、無力化したとは……。
「大変だったようだね、メイ」
「はい、かなり厳しかったです。もし少しでも運がなければ、負けていたのは私の方でした」
メイは素直に感想を告げた。
彼女の声には相手を讃える敬意があり、敵対し、命のやりとりをした後とは思えないほどだ。
僕は思わず、尋ねる。
「メイ、その彼と命のやりとりをした割に、敬意を払っているようだけど何かあったの?」
「はい、彼が私と同じ『メイド道』を歩む者だと知ったからです」
「?」
思わず拘束されている黒い男性に視線を向けた。
茨の束縛(ドルン・フェッセルン) で拘束、首には『SSSR 呪いの首輪』がはめられレベルダウン、魔力、身体能力低下、所持している 恩恵(ギフト) の制限など、弱体化されている。
だが、どう見てもメイドには見えないのだが……。
(もしかしてこう見えて実は女性で、その格好も竜人帝国側だとメイド服になるってこと? で、でもどう見ても男性だし、来ている衣服はメイド服に見えないし……。けど、でも、もしかして……)
「にゃぁ!」
僕がメイの発言に対してぐるぐると考えを巡らせていると、別の出入り口から聞き覚えのある声が響く。
その声に皆が視線を向けると、ボロボロ状態だが、自分の足で歩くアオユキが姿を現した。
彼女が手にしている『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』の先には、鎖で拘束されたゴウ、セスタがいた。
2人の首にもしっかり『SSSR 呪いの首輪』がはめられている。
「アオユキ! アオユキは2人も『ますたー』を倒したの!?」
「にゃ~」
「もしかして、そんなぼろぼろになっているのも、切り札を使ったのかい?」
「にゃ」
しんどそうに歩くアオユキを抱きしめ支える。
アオユキ自身の切り札、『眷属徴収』――自身の配下にしているモンスターのステータス1割を一時的に強制徴収。自身のものにすることができる。
能力としてはシンプルだ。
しかし、問題は僕の『無限ガチャ』と相性が良すぎて、上手く噛み合い過ぎてしまう。
『無限ガチャ』から強力なモンスターを大量に顕現させることができる。
それこそ好きなだけだ。
アオユキはそれを次々に配下にすることが出来るのだ。
『眷属徴収』能力も配下にしているモンスターのステータス1割を一時的に強制徴収するが、その際、えり好みはできない。
配下にしているモンスター全員のステータス1割を一時的に強制徴収する。
結果、アオユキの体が自壊するほどの力を得てしまうのだ。
「まさか、あの切り札を使うまで追い詰められるなんて……。いや、『ますたー』を2人も相手にするなら当然といえば当然か。ご苦労様、アオユキ。無事でなによりだよ」
「んにゃぁ~」
僕に支えられたアオユキが幸せそうに鳴いた。
エリーは羨ましそうに眺めつつも、『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』の鎖から解放されたゴウ、セスタを 茨の束縛(ドルン・フェッセルン) で拘束していく。
メイは、幸せそうに僕の体に『ゴロゴロ』と鳴きながら頬を擦りつけるアオユキを眺めつつ、尋ねてくる。
「ライト様も、手傷を負っていたようですが……。やはり『ますたー』と戦っていたのですか?」
「そうだよ。ルカンっていう『ますたー』だったんだけど……。エリー、拘束を終えたら、その黒い男性に聞こえないよう、彼の周囲にサイレントの魔術を。それが終わったら、自分達に何があったのか、情報交換をしよう」
「畏まりましたわ!」
僕の指示に、エリーは嬉しそうに返事をした。
そして、指示通り、ゴウ&セスタの拘束を終えると、黒い男性が僕達の情報交換を耳にしないように彼の周囲にサイレントの魔術を展開。
展開を終えると、僕達は順番に転移後、何があったのか情報交換を開始した。
☆ ☆ ☆
「――なるほど、皆、大変だったね」
「ライト様こそ厄介な輩を相手にしたようですね。竜人帝国側『ますたー』達の内部に居た『しー』の間者とは……。しかも、かなり重要な情報を持っていた上、自爆し自死するとは……」
「にゃ!」
「ですが話を聞く限り、ただの自死とは思えないのですが……。それにこの中で一番、戦闘的に楽だったのはわたくしのようですわね……」
メイ、アオユキ、エリーが順番に感想を告げた。
一通り情報を交換した後、エリーがこの中で唯一、『ますたー』と戦っていないことに肩を落とした。
僕はフォローの言葉をかける。
「『ますたー』とは戦っていなくても、多数の敵と戦ったじゃないか。『エリーだけが苦労していない』なんて絶対にないよ」
「ライト神様!」
僕のフォローを聞いて、エリーは心底幸せそうな表情を作った。
彼女の落ち込みを阻止した後、僕は話を進める。
「皆と無事に合流できてよかったよ。恐らく、ナズナも僕達同様にこのダンジョンに転移させられているはずだ。彼女のことだから敵に倒される心配はないだろうけど……。色々心配だから早めに合流――ッゥ!?」
『!!!?』
まるでダンジョン全体が巨人に掴まれて激しく揺さぶられたように振動する。
あまりに激しい振動に僕は思わず台詞を途中で止めて、地面に片膝を突き、バランスを取ってしまう。
僕だけではない。
メイ、アオユキ、エリーも僕同様に地面に片膝を突き、頭上が壊れて落ちてこないか警戒していた。
数秒後、振動は次第に小さくなり、落ち着きを取り戻す。
『…………』
しかし、経験のない、あまりにも激しい振動に僕達は収まったにもかかわらず、暫く地面に片膝を突いたまま声をあげることも、動くことも出来なかった。
呼吸を数度繰り返した後、僕はゆっくりと立ち上がる。
僕に合わせてメイ達も立ち上がった。
そんな彼女達に聞かせるように僕は独り言を漏らす。
「な、なんだったんだ、今の激しい振動は……。誰か……ナズナが他の『ますたー』達と戦っている振動?」
「いえ、それは考え辛いかと」
「ですわね。わたくし達が居る場所はダンジョンですから」
「にゃ~」
メイ、エリー、アオユキが僕の独り言に返答した。
彼女達の指摘に僕も納得する。
「だよね……いくら全力で戦ったからといって、あんなに激しく振動するなんてありえないよね」
ダンジョンが振動するほどの戦闘はなくはない。
とはいえ、それはあまり震源地から離れていない場所の場合だ。
先程のようなダンジョンそのものが激しく振動するなどありえない。
「できれば捕らえている『 ますたー達(彼ら) 』から、情報を引き出したいところだけど……」
爆発の原因は何か分からないが、ナズナがかかわっているのはほぼ間違いないだろう。
恐らく彼女は僕達よりずっとダンジョン奥地まで進んでいる。
既にルカン、ゴウ、セスタ。
黒い男性はミキの情報から推測するに、 黒(ヘイ) だろう。
残る『ますたー』は、ヒロ、ヒソミ、カイザーの三名だ。
「ナズナがこのままダンジョン奥まで進んだら、残りの三名とぶつかるだろうね。相手はレベル9000台。いくらナズナでも手加減して倒せる相手じゃない。下手をすれば僕の仇、復讐相手のヒロを彼女が倒してしまう可能性すらある。それだけは避けたい」
ヒロは僕の両親を殺害、故郷を破壊した相手だ。
彼だけは僕の手で倒し、『奈落』最下層のさらに下! 永遠に責め苦を与える場所に連れて行かなければ納得できない。
またナズナなら大丈夫だとは思うが……。
相手は『ますたー』×3人だ。
ナズナを殺害する奥の手を誰か所持しているかもしれない。
安全を考えても、わざわざ彼女1人で戦わせる必要はないのだ。
「情報収集をしている暇はない。一応、確認するけど……エリー、彼らの記憶を確認して必要な情報を得ることって数分で出来る?」
「申し訳ありませんわ。さすがに無理ですの」
「だよね。ごめんね、無理を言って」
『禁忌の魔女』エリーでも、彼らの記憶から僕達に必要な情報を数分で得ることは不可能だ。
予想していたので、彼女を非難するつもりはない。
ならば物理的に彼らの体に尋問してもいいのだが……。
(正直、記憶を確認するのとそう代わらないか……)
僕は溜息を一つして割り切る。
ここは速度を優先するべきだろう。
僕は意識を切り替え、指示を出す。
「メイは僕と一緒にダンジョン最下層へと向かう。罠の解除は任せた。けど罠を完全に解除する必要はない。強行突破できるのはして、速度優先で頼む」
「畏まりました。我がメイド道に懸けて最短でライト様をダンジョン最下層にお連れいたします」
僕はアオユキ、エリーへと向き直る。
「アオユキはダメージを負いすぎているからここで待機。エリーはアオユキのフォローと、他『ますたー』達の監視をお願い。アオユキ、エリーなら問題ないと思うけど、もし危機に陥ったら、 『ますたー』達(彼ら) の身柄より、自分達を優先して。ダンジョンの最下層に行けばまだ『ますたー』達は3人居るから。そいつらを捕らえて、情報を吐き出させればいいだけだしね」
「にゃ~!」
「畏まりましたわ!」
アオユキ、エリーが快活に返事をした。
僕はその返事を聞き終えた後、メイと一緒に2人っきりでダンジョン奥地を目指すため駆け出すのだった。