軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10話 やったか!?

ライトがルカンを倒し、新たな行動を起こそうとする頃。

ナズナは何をしているかというと……未だ一人、ダンジョンを進んでいた。

「ご主人様! メイ! アオユキ! エリー! どこだ!」

ダンジョンを勘で進み、そのたびに罠を起動。

回避、破壊していた。

最初はアトラクションとして楽しんでいたが、誰とも合流できずただ進むだけなので飽きてしまった。

ナズナは誰とも出会わないせいで、だんだん寂しくなり、声にも寂寥感が漂い始める。

下手なトラップより彼女にたいしてダメージを与えているほどだ。

「みんな! マジでどこに行ったんだよ!」

ナズナは全身を串刺しにする虎バサミトラップを破壊後、思わず寂しげに叫んでしまう。

罠を破壊し、進むナズナが行き着いた場所は、大部屋だ。

「? なんだこの部屋……」

ナズナは何の警戒もせず、すたすたと大部屋の中へと入っていった。

彼女の背後で扉が勝手にしまり、鍵がかかるがナズナは一切気にせず、奥へと移動して行く。

「柱ばっかりで、見通しが悪いな」

彼女の言葉通り、大部屋内部は不規則に柱が立っている。

以前、『白の騎士団』を逃がさないようにエリーが『巨塔』を建築。

その際、スズ&ロックが、シャープハットと対峙した『巨塔』二階の部屋に似ていた。

その部屋と違う点を上げるとするなら、竜人帝国側『マスター』達が作り出したこの大部屋の中央には太い柱が存在する。

まるで世界樹のように太い柱が天井へ伸びている。

ナズナが無警戒に近づいて行く。

「おお……マジで大きな……。あたいが何人居たら、この柱を囲めるかな?」

中央にある太い柱へ近づき、『パンパン』と片手で叩き、天井を見上げた。

「ん~……ご主人様達、モンスター、敵が居る気配もないしさっさと先へ進む――ッゥ!?」

のんきに周囲を見回し、ライト達味方、他敵などもいないと判断を下したナズナが、先へ進むため、大部屋奥へと向かおうとした。

刹那――彼女は本能的、危機感を覚えて高速で太い柱から飛び退く!

自分と太い柱の間に大剣プロメテウスを滑り込ませて全身をガードする。

レベル9999のナズナが完全に守りに入ると、ほぼ同時に――太い柱、他柱が同時に爆発。

その爆破規模は、もし何の対策も講じていなければ、ダンジョン丸ごと吹き飛ばすほどの絶大な破壊力を秘めていた。

☆ ☆ ☆

「よし! よし! よしッ! 『化け物のように強い子供』はこれで確実に倒すことができましたね!」

海底ダンジョン、コアルーム。

その一室の壁には一抱えある球体のマジックアイテムが埋め込まれている。

これは所謂、マジックアイテム版監視カメラだ。

ビー玉サイズの玉が埋め込まれた部屋や廊下などを映すカメラで、壁に埋め込まれた一抱えある球体に映像を映す画面となる。

映像は映るが音声までは聞こえない。

画質もそこまで良い物ではなかった。

マジックアイテム版監視カメラを起動した竜人帝国側『マスター』のヒロ、ヒソミ、カイザーはそれぞれ画面をチェックしていた。

そんな彼らが、『化け物のように強い子供』――ナズナが大部屋に入る様子をマジックアイテム越しに監視していた。

ナズナが入った部屋は、彼らが対『C』用に作り出した『ダンジョンコア爆弾(仮称)』がある部屋だ。

ヒロ達が万が一、アークでこの星から脱出できなかった際、『対C最終決戦用ダンジョン』を用意していた。

そのダンジョンで『C』を始末するため、竜人帝国側『マスター』達は、とある部屋に長い年月をかけて、他の攻略したダンジョンコアを収集連結。

『C』が侵入したら、ダンジョン丸ごと吹き飛ばすほどの威力がある爆弾を作り出したのだ。

さらに暇になったセスタが、爆弾を強化して回っていた。

もちろん、そのまま起爆させたら、自分達ごとダンジョンが吹き飛ぶため、爆発する刹那、その部屋を一時的に空間から隔離。ダンジョンそのものに影響を及ぼさないように設定してある。

当然、そんな無茶な仕様を実行した場合、彼らが居るダンジョンコアは魔力を大量に消費。再度、最低限の魔力が溜まるまでほぼまともに機能しなくなるが……。

ヒロ、カイザー、ヒソミは、事前に話し合いゴウが一目置き、セスタが怯えるほど強いナズナを始末するため、彼女が『ダンジョンコア爆弾(仮称)』に入室したら起爆すると決めていた。

本当なら、他の『巨塔の魔女』メンバーも入室後、一緒に爆殺したかったが……。

欲を掻き、出し惜しみして誰も始末できず『ダンジョンコア爆弾(仮称)』を無力化されたら目も当てられない。

故に『巨塔の魔女』最大戦力であるナズナを始末するため、起爆したのだ。

爆発によって、一時、大部屋が空間から隔離。

それでもダンジョン全体が振動するほどの威力だ。

ヒソミはこの爆発でナズナを殺害したと信じ切り、子供のように無邪気にはしゃぐ。

一方、ヒロ、カイザーはというと、

「…………」

「…………」

2人揃って、ヒソミから『敵を無事に倒せた』という同意を求められても反応せず、画面のマジックアイテムを黙って睨み続けた。

隔離した空間はすぐに戻り、爆発後、内部を確認できるよう天井に埋め込まれていた監視マジックアイテムで3人は内部を確認する。

監視マジックアイテムは、計算した通り無事で、内部を映す。

画面マジックスアイテムには、未だ爆発煙しか映っていない。

その煙も徐々に落ち着いていく。

ヒロ、カイザーは物理的に画面が壊れてしまいそうなほど凝視していた。

2人の真剣な空気を感じ取り、ヒソミもはしゃぐのを止めて黙り込み画面を凝視する。

煙が薄れるとそこにはナズナの死体が存在した。

『! ……!?』

最初こそ3人とも、『よし! 無事に死体を確認! 倒すことができたんだ!』と喜びを露わにするが、すぐさまその喜びは否定された。

なぜなら、複数のナズナの死体が存在したからだ。

しかも、その死体は半球体状になっており、まるで中心部の誰かを守るように折り重なっていたのだ。

折り重なった死体が下からごそごと動き出す。

暫くすると1人のナズナが姿を現したのだ。

「「「!?」」」

ヒロ、ヒソミ、カイザーもこれには驚くしかない。

種明かしをするなら、爆発する瞬間、ナズナが本能的に『このままで死ぬ!』と気づき、大剣プロメテウスが世界に干渉。

ナズナを数百体顕現させた。

そして1人を守るため互いに折り重なり、防御。

お陰で内部の1人だけは、『ダンジョンコア爆弾(仮称)』の爆発からギリギリ生き延びることができたのだ。

さらに理不尽なことが画面アイテム越しに起きる。

『ダンジョンコア爆弾(仮称)』で死亡した筈の他ナズナを、大剣プロメテウスを握る1人が力を行使して世界に干渉。

倒れていた数百人は、まるで最初から傷など負っていないかのように次々立ち上がり出したのだ。

「ば、化け物、チートのレベルを超えている、とは聞いていましたけど……」

「…………」

「…………」

ヒソミが絶望的な声で一人漏らした。

ヒロ、カイザーは彼の言葉に同意するように黙り続けている。

暫し、海底ダンジョン、コアルームに沈痛な沈黙が支配した。

「ッゥ!? ガァッ……ッ!」

その沈黙の支配を最初に破ったのは……ヒソミの苦痛に満ちた呻き声だった。

ヒソミの背後からヒロが手に光をまとわせ、手刀にして心臓を貫く。

ヒソミは口から血を流し、細目を限界まで広げて驚愕する。

「ひ、ヒロ殿!? ど、どうして……ッ!」

「…………」

「…………」

ヒロはこの問いにすぐには答えず、またカイザーは彼のおこないに対して予想していたかのように驚かず冷たい視線を向けるだけだった。