作品タイトル不明
9話 アオユキvsゴウ&セスタ2
アオユキは地面に足を着けると、ゴウの一撃をガード。
衝撃で切った血を吐き捨て、彼らを改めて睨む。
(――正直、舐めていた。ナズナに無様に敗北した2人、最初は連携も知らずただ互いに攻撃をしてくるだけだった)
しかし、蓋を開けてみればナズナに敗北し逃げた者達だが、実力は高く最初こそ連携はからっきしだったが、次第に長年連れ添ったパートナーのように巧みに戦い出す。
結果、『アオユキ自身』の奥の手を切る決断をすることになったのだ。
(――気は進まない……非常に進まないが……最後の奥の手を使うしかないか)
「オイ、クソ猫! 何かやらかすつもりだなァ! わざわざやらせるかよォ!」
戦闘勘が高いゴウは、敏感にアオユキが奥の手を切るのを察して、潰しにかかった。
彼に合わせるようにセスタは瓦礫を爆弾化、高速で投擲し、ゴウの援護に回る。
最初の戦いが嘘のようなコンビネーションだ。
「――神獣・始祖フェンリル、神獣・玄武、合成。 氷河甲壁(ひょうがこうへき) !」
アオユキが両手を突き出すと、彼女達の間に一瞬で氷と甲羅で固められた壁が出現。
アオユキ、ゴウ&セスタを隔壁のように二分する。
この氷と甲羅の壁は、『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』の最後の能力で作り出したものだ。
『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』には、『配下のモンスター達の能力を掛け合わせて新たな力を作ること』が出来る。
もちろん、無制限に何でも出来る訳ではない。
今回はフェンリルの氷、玄武の甲羅で強固な防護壁を作り出したのだ。
セスタの瓦礫爆弾が、 氷河甲壁(ひょうがこうへき) に着弾、爆発するも、小揺るぎすらしない。
「アァアアァ! クソが! 逃げ道もないのに無駄な時間稼ぎなんてすんじゃねぇよォ!」
ゴウは怒りの声を上げて、氷河甲壁を殴り破壊し出す。
レベル9000台が、本気で拳を固め殴る。
さらに、
「ゴウ! どけ! こういう壁の破壊は、僕様ちゃんの専売特許だから!」
爆弾魔セスタの言葉通り、壁、建築物などの破壊は彼の得意分野だ。
瓦礫を爆弾化して、配置。
爆破して、脆い箇所を作り出していく。
後はその脆くなった所をゴウに殴らせれば、神獣・始祖フェンリル、神獣・玄武の力を合成して作り出した壁とはいえそう長くはもたない。
第一、ゴウの指摘通り、部屋を出る唯一の出口は彼らの後ろにある。
なのでアオユキが部屋から出るのは不可能だ。
当然、彼女はそんなこと百も承知だ。
あくまで氷河甲壁は一時的に時間を稼げれば良いだけ。
アオユキは『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』は首から外し、しまう。
そして、複数の『無限ガチャ』カードを取り出し、解放していく。
「――『SSR 思考加速(アクセル・ソート) 』、『SSR シックセンス・アップ』、『SSSR 防御能力超強化(ディフェンスビルドアップ) 』、『SSR 痛覚遮断』、『SSSR 耐久度強化』、『UR 耐久度超強化』、『SSSR 再生回復(リジェネレーション) 』、『UR 超再生回復(スーパーリジェネレーション) 』、解放」
アオユキは防御、耐久度、継続回復をメインにカードを解放。
最後に彼女は……心底不満そうに1枚のカードを取り出す。
「――『SSR 全盛期成長』、解放」
『SSR 全盛期成長』。文字通り、全盛期へ一時的に成長できるカード。老人でも、このカードを使えば一時的に全盛期の姿に若返る。
正直、そこまでレア度は高くない。
しかし、アオユキは最後までこのカードを解放することに躊躇った。
『SSR 全盛期成長』を解放し終えると、丁度、ゴウ&セスタが 氷河甲壁(ひょうがこうへき) を破壊。
2人が並んで楽に通れるぐらいのスペースを作り出す。
「クソ猫ォ! 無駄に抵抗をしやがっ――ッ!?」
「これでもうオマエを守る壁は無くなったね! あとは爆殺して――ッ!?」
壁を破壊した際、煙が舞ってアオユキの姿を一時見失う。
その間に2人は上から目線で、彼女に対して暴言を吐くが……。
煙が晴れアオユキの姿を捉えると、2人揃って暴言が途中で止まってしまった。
「…………」
氷河甲壁に遮られる前、2人の前に居たのは、幼い猫耳パーカーを被った青髪の美少女だった。
しかし、現在、目の前に居るのは20歳の美女だ。
手と足がすらりと伸び、身長が約160cm近くまでになる。
当然、今まで来ている服の丈にサイズが合うはずもなく、腕は裾が出てしまう。足はスカートが圧倒的に短くなってしまっていた。
黒いタイツを穿いているが、ゴウ&セスタとの戦闘で所々破れ、真っ白な肌が一部露出。
一部、露出しているせいで、穿いていない以上に淫靡な雰囲気が漏れ出る。
幻想的な青髪も、アオユキのチャームポイントである猫耳フードを押し退け背中まで伸びてしまう。
胸も服の下から分かるほど大きくなる。ただ大きすぎず、成長したアオユキの体型バランスを崩さない神がかったスタイルだった。
そんな青髪から覗き見える素顔。
大きな紫の瞳には固い意識が宿り、新雪のような真っ白な肌は戦闘で汚れてしまっている。しかし、その汚れすら、アオユキの美貌を損ねる所か、より引き立てる化粧だと思えるほど美しい。
幼い少女姿の時も幻想的な美少女だった。
しかし、20歳に成長したアオユキは、以前以上に幻想的な青髪が似合うとてつもない美女になっていたのだ。
あまりの美しさに、戦闘中だったゴウ、セスタが黙って見惚れるほどである。
仮に地上で暮らす一般的男性が、今のアオユキを目にしたら、そのあまりの幻想的な美しさに物理的に心臓が止まるほどだろう。
「――眷属徴収!」
そんな成長したアオユキが自身、最後の切り札を解放!
「グゲアァ!?」
「!?」
アオユキは一瞬で自身の姿に見惚れていたセスタを蹴り飛ばす!
彼の側に居た筈のゴウが反応できないレベルの素早い一撃だ。
当然、威力も高い。
この一撃でセスタは壁に叩き付けられ部屋全体を揺るがすほどの衝撃が広がる。
「オッ!? オオオオオッ!」
ゴウは戸惑い、驚愕、怯えが混じった雄叫びを上げつつ、次、自身へと向けられた矛先に辛うじて反応。
二本の腕で弾丸のように飛翔し向かってくる炎の羽根を捌いて背後に居たセスタを守り切ったりもした。
しかし、今回のアオユキの攻撃。
ただ正面からのパンチに反応できない。
長年、武術に携わってきた者の勘によって辛うじて防御する――が、1、2、3撃で崩壊。
防いだ両腕が、アオユキのただのパンチに耐えきれず折れて、骨が皮膚から突きだし、血を溢れさせる。
激痛がゴウの脳内に届くより速く、防御を破壊したアオユキが攻め立てる。
「んんんにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!」
ゴウを殴り飛ばし、壁に叩き付けて追撃!
手を休めず殴り、彼に反撃の隙を与えない。
技術もない単純な暴力!
ダンジョンの壁がアオユキの攻撃に耐えきれず、崩壊。
ゴウを壁が崩壊した先の廊下へと瓦礫と共に転がる。
アオユキは追撃――することができなかった。
彼女の両腕は自身の攻撃能力に耐えきれず、骨が折れ、皮膚を突き破り、血を溢れ出させる。
拳だけではない。
「グウゥッ!」
アオユキの全身から血が噴き出す。
足、腕、胴体、瞳からも血涙が流れ落ちる。
当然、立っていられる筈もなく、その場に崩れ落ちた。
さらに、
「げほ! ごほッ! げほッ!」
その場に蹲ると、何度も喉を鳴らし血反吐を吐き出した。
時間にして10秒もかかっていないにも関わらず、アオユキは内外関係なくダメージを負ってしまう。
ゴウ&セスタから攻撃を受けたわけではない。
アオユキ自身の最後の奥の手『眷属徴収』の反動だ。
『眷属徴収』――自身の配下にしているモンスターのステータス1割を一時的に強制徴収。自身のものにすることができる。
以上が『眷属徴収』能力だ。
ゴウ&セスタを倒したのも、配下のモンスターから一時的に強制徴収し底上げ。
『柔よく剛を制する』の反対、『剛よく柔を断つ』ったのだ。
早い話が、ステータスを底上げて、単純な暴力で2人を圧倒し、倒したのだ。
一見すると非常に有効な能力だが……当然、デメリットもある。
いや、デメリットというより、『無限ガチャ』とアオユキの能力が上手く噛み合い過ぎるのだ。
『無限ガチャ』から強力なモンスターを大量に顕現させることができる。
それこそ好きなだけだ。
アオユキはそれを次々に配下にすることが出来る。
『眷属徴収』能力も配下にしているモンスターのステータス1割を一時的に強制徴収するが、その際、えり好みはできない。
配下にしているモンスター全員のステータス1割を一時的に強制徴収するのだ。
結果、アオユキの体が自壊するほどの力を得てしまう。
たとえ、『無限ガチャ』カードで底上げしても耐えきれないほどに……。
「けほ! ごほ! げほッ! ……にゃ~」
一通り血を吐き出し、呼吸を整えると、天井を仰ぎ見た。
アオユキは心底不満そうに大きな瞳を絞る。
(やはりこの力は嫌いだ。体を成長させるとどうしても髪の毛まで伸びる。主が褒めてくださった猫耳パーカーのフードが被れなくなるのが嫌だ)
彼女が最後の奥の手を使うことを心底嫌っていたのは、反動で傷つくからではない。
奥の手を使う際、どうしても自壊に耐えるため、耐えられる体に成長する必要がある。
その際、どうしても青い髪の毛が伸びてロングヘアーになってしまう。
ロングヘアーになると主――ライトが褒めてくれる猫耳パーカーのフードが強制的に脱げて、かぶれなくなるのがアオユキ的には心底嫌だった。
(とりあえず……もう少し体調が落ち着いたら体の傷を回復させて、髪を切って猫耳パーカーを早く被らなければ。被った後、倒した彼らを拘束しないと……)
自身の回復を終えた後、倒したゴウ、セスタを拘束することを考えた。
手加減する余裕がなかったため、死亡している可能性があるが。
その時は『にゃ~』と鳴いて誤魔化そうとアオユキは考えるのだった。