作品タイトル不明
8話 アオユキvsゴウ&セスタ1
「にゃ!」
「クソ猫! その動きはもう見切っているんだよォ!」
アオユキが元魔人国側『マスター』リーダーであるゴウに対して、『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』を投擲。
しかしゴウは何度も『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』の攻撃を弾き、いなす。
彼は『一度目にした体験した武術の技術、奥義などを自分のものにする』ほどの高い実力と才能を持つ。
さすがにこう何度も攻撃を受ければいなしかたの一つや二つは理解してしまう。
さらにゴウは鎖を掴み、アオユキの体勢を崩す。
「ナイス、ゴウ! 爆死しろ! クソ猫!」
「うにゃ!?」
竜人帝国側『マスター』の1人爆弾魔のセスタが、瓦礫を爆弾化して投擲!
体勢を崩されたアオユキは、焦り声を上げつつも、無理矢理、ゴウから鎖を引っこ抜きうねらせ、瓦礫爆弾をガードした。
爆発。
「シッ!」
「!?」
その爆発の煙幕を利用し、ゴウが間合いを詰めてアオユキを殴り飛ばそうとした。
彼女は咄嗟に鎖を両手で掴み、ピンと伸ばす。
ゴウは伸ばされた鎖を殴らされた。
アオユキは、彼の攻撃に逆らわないように背後へと飛ぶ。
彼女の体重が軽いのと、ゴウの一撃の威力にアオユキは簡単に壁際まで吹き飛んだ。
まるで本物の猫のように空中で体勢を捻って、激突しそうになった壁に足裏で着地。
無事、無傷で地面へと降りる。
一連の流れにセスタが、ゴウに対して不満をぶちまける。
「ゴウ! どうしてあのクソ猫の体勢を鎖越しに崩したままにしなかったんだよ! あのままいけば僕様ちゃんの爆弾で結構なダメージを与えられたのに!」
「うるせぇクソガキ! あのクソ猫の腕力が予想以上に強かったんだよ! けど、あいつの動きはだいたい掴んだ。そろそろあの細首をへし折るぞォ!」
「いや、そこは『爆死させるぞ』でしょ?」
「にゃ~」
最初こそ、ゴウとセスタはアオユキに押されていた。
しかし、ゴウがアオユキの動き、セスタとの連携に慣れた結果、情勢は徐々に彼らの方に流れてしまう。
このままではゴウとセスタの言葉通り、アオユキが2人に敗北してしまうだろう。
元々、アオユキは単騎での戦闘よりテイムしたモンスター達を指揮して戦う方が強い。
今回の戦いのように配下のモンスターなし、敵は複数、限定された空間での戦闘は得意ではなかった。
とはいえ、別に『戦えない』訳ではない。
「にゃ!」
アオユキはこのままでは自分が敗北すると戦況分析をおこない、『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』を自分の首へと嵌めた。
彼女の切り札のひとつだ。
「――召喚顕現、神獣・ 不死鳥(フェニックス) !」
「「!?」」
アオユキの背中に『真っ赤に燃える炎の羽根』が顕現。
突然、彼女の背中に真っ赤な燃える炎の羽根が出現したことにゴウとセスタが驚愕した。
別にアオユキ自身に『背中から炎を出して飛行する』能力がある訳ではない。
これは 幻想級(ファンタズマ・クラス) 『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』の能力によるものだ。
『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』は、投擲した際、自動で追尾する機能があるだけではない。
『天才モンスターテイマー』の能力を持っているアオユキが使うことによって、配下にしたモンスターの能力を使用することが出来るようになるのだ。
もちろんそれだけではない。
彼女は驚く2人の隙を逃さず、炎の羽根を強く羽ばたかせる!
同時に、突風と炎の羽根の弾幕が2人に襲いかかる。
「!? セスタ! 俺様の後ろに隠れろ!」
本来、ゴウの性格上、他者を庇うマネはしないが、今回はアオユキ――強敵が相手だ。
セスタという戦力を失い、戦闘が不利になるのを避けるため庇う。
ゴウがすぐさま声をかけ、返事をするより早くセスタが彼の背後へと隠れた。
「クソがァアアァァァァッ!」
ゴウが吼え、二本の腕で弾丸のように飛翔し向かってくる炎の羽根を捌いていく。
羽を弾いたお陰で、彼らの周辺だけ綺麗に切り取ったように炎の羽根が刺さっていなかった。
しかし、アオユキの攻撃は終わらない。
「にゃ!」
彼女が『パチン!』と指を鳴らすと、炎の羽根が膨れあがり、爆発、爆炎化する。
この羽根が肉体などに刺さると、内部で爆発、爆炎化し追加でダメージを与えることができるのだ。
とはいえ爆発が強すぎる。
「アアァァ! ナイスだ! セスタ!」
「!?」
爆煙を切り裂き、ゴウがアオユキとの間合いを詰める!
彼女の攻撃をセスタが、咄嗟に周囲を爆発し相殺したのだ。
お陰で無傷でゴウが爆煙を切り裂き、アオユキへと殴りかかる。
「死ね!」
「んにゃ!」
ゴウの一撃をアオユキが羽根でひと薙ぎ!
彼はその流れに逆らわず、あえて合わせて体を回転。
その勢いのまま回し蹴りをアオユキへと叩き込む。
彼女は咄嗟に両手でガードする。
だが、ゴウの強烈な蹴りはガードを貫通して、アオユキの体の芯に響いた。
「ぐにゃ……ッ!」
今度は壁に足裏を着ける余裕もなく、背中をしたたかにぶつけてしまう。
その衝撃で仮面が外れ落ちてしまうほどだ。
演技でも、偽装でもなくアオユキが追い詰められていく。
ゴウが拳を固める。
「クソ猫! 終わりだ!」
「ゴウ! 最低でも足を潰せよ! その後は僕様が遠距離から爆殺するから!」
まるで何年も連れ添った戦闘パートナーのように、ゴウとセスタは互いの動きに合わせていく。
その動きは時間が経つといっそう洗練されていった。
腐っても『マスター』ではないということだ。
「――召喚顕現、地獄の番犬・ケルベロス」
不死鳥(フェニックス) を消して、ケルベロスに力を切り替え、彼女が大きく息を吸い込む。
胸を精一杯膨らませて空気を吸い込み、
「にゃ!」
ゴウ、セスタを吹き飛ばし、距離を稼ぐためケルベロスの衝撃砲を放つ。
アオユキの狙い通り、殴りかかってきたゴウ、爆殺を狙っていたセスタは、予想外の衝撃砲の威力に吹き飛ぶ。
お陰でアオユキは彼らから距離を取ることができた。
しかし、現状の不利は変わらない。
(――合成を使う? 否、状況が変わる可能性は低い)
『 獣の鎖(ビースト・チェイン) 』の最後の能力に『配下のモンスター達の能力を掛け合わせて新たな力を作ること』ができるというものがある。
とはいえ、掛け合わせる力が増えるほど、制御が難しく、相性が悪いと発動すらしない。そもそも配下が多数居る必要があるため、アオユキ以外ではほぼ意味がない能力だ。
しかし、その能力を使っても、現状を覆せるとは思えなかった。
それほど連携を覚えてきたゴウとセスタが強い。
(――気は進まない……非常に進まないが……最後の奥の手を使うしかないか)
アオユキは心底嫌そうに彼女自身が持つ『最後の奥の手』を切る覚悟を固めるのだった。