作品タイトル不明
4話 メイvs黒1
とある海底ダンジョン、広間。
メイは『 魔力糸(マジック・ストリング) 』を収束し、固めて、剣状態にする。
敵は黒髪の男で、黒い目隠し、手に持っている刀は柄、刃部分まで全て黒い。
竜人帝国側『マスター』達の中で最も接近戦に強い 黒(ヘイ) とメイが切り結んでいた。
数度打ち合い、互いに後方へと距離を取る。
メイは『 魔力糸(マジック・ストリング) 』剣を構えつつ、改めて相手を鑑定する――が、相手のレベル、名前すら読むことができなかった。
(ライト様の『無限ガチャ』カードなどで 強化(ブースト) していないとはいえ、名前、レベルの欠片すら鑑定できず拒否されるとは……。どれだけ強固に隠蔽をかけているのか……)
敵に自身の情報を与えないのは戦闘の基本だ。
隠蔽し、レベルの桁すら情報を与えないの理解できるのだが……。
メイは目の前の黒い男に違和感を覚える。
(隠蔽に力を入れて、敵に情報を与えないのは戦いの基本……。けれど、黒い男性の場合、『敵に情報を与えない』より、内側。自身自身に向けている?)
黒が黒刀を手に接近!
高速の踏み込み。
フェイント入れられ、釣られそうになったメイが紙一重で黒刀を防ぐ。
「くっ!」
「…………」
一撃が重く、防ぐので手一杯だ。
再び、二度、三度のと打ち合いに。
その全てをメイはなんとか受け止め防ぐ。
上段、袈裟斬り――黒の太刀筋に気づき、防ぐため剣の軌跡に『 魔力糸(マジック・ストリング) 』剣を割り込ませた。
しかし、黒はその軌跡に剣を乗せず、上体をただ沈める。
メイは予想外の動きに僅か、0コンマ数秒、思考が止まる。
黒はその場に倒れるのかと疑うほど体を沈め、黒刀を地面ギリギリに滑らせる!
『上段、袈裟斬り』は、ブラフ。
本当の狙いはメイの足首だ。
メイは完全に虚を突かれた形になる。
(戦い慣れた者ならこの程度のブラフに引っかかることはなかったのでしょうが――ッ!)
胸中で悔しがりながら、上空へ退避。
正確には上空しか逃げ道がなかった。
剣で防ぐには間に合わず、足首を切断されるか、そこまでいかなくても傷を負えば機動力が落ちる。
しかし、このメイの選択を黒自身、予想していた。
空中ではすぐさま動きが取れず、選択肢も限られてしまう。
メイは黒に動きを誘導される形になった。
黒が空中にいるメイに向けて、黒刀を走らせる。
「ッゥ!?」
空中で即座に身動きが取れず、黒の攻撃をなんとか『 魔力糸(マジック・ストリング) 』の剣で防ぐしかない。
当然、全ての攻撃を防ぐことは叶わず、足、腕、頬に受け損なった刀傷を受ける。
致命傷にはほど遠い。
魔術、カードでの治癒ももちろんできるが、消耗したのは事実だ。
僅かながら戦況が黒へと傾く。
メイは地面に着地後、片膝を突き、剣を盾に追撃のカウンターを狙うが、黒は無理に攻めず僅かながらでも手傷を負わせたことに満足する。
非常に堅実な戦い方をしてくる。
(機を競って無理攻めしてくれたなら、カウンターで手痛い一撃を与える機会もあったのですが……。本当に戦い慣れていますね)
メイは心底やりづらそうに溜息を漏らす。
実際に刃を交えて分かることは、相手が真っ当な高レベルな戦闘者ということだ。
鋭い剣筋に積み上げられた技術、レベルも高いことを肌で実感した。
(とはいえレベルは私よりは低いでしょうね。戦闘が苦手な私でもなんとか切り結んでいられるのがその証拠でしょう)
メイはなんでもこなせる万能メイドだ。
それ故に戦闘能力はそこまで高くない。
むしろ、戦闘する味方のサポートが得意なタイプである。
今回のように一人で実力者と戦うのを苦手にしてた。
そんな自分が曲がりなりに戦えているのは、相手よりレベルが高いお陰だと予想したのだ。
(だからこそ疑問を抱きます。黒い男性は自身の隠蔽に力を入れていますが、戦い方は正道。相手を騙して勝利を得るタイプではありません)
戦ってみて『敵に情報を与えず、騙し、隙を突いて倒す』狡猾さが黒からは感じられなかった。
あくまで堅実、真っ当な戦闘を得意としている事物だと分かる。
では、メイが鑑定しても欠片も情報を読み取れないほど強固な隠蔽をしている理由は?
(隠蔽……というより封印に近い感じ。自分自身に封印を施すほど強い力……。『ますたー』と呼ばれる者達は、今のところ全員、強力な 恩恵(ギフト) を所持しています。黒い男性は未だに 恩恵(ギフト) を使用していない。もし私の予想が正しければ、彼が封印しているのがその 恩恵(ギフト) の力だとしたら……)
自分の強い力を固く封印しており、鑑定で情報が欠片すら読み取れなかったのはそのせいだとしたら辻褄があう。
(ただでさえ現状は私が不利。その上、強力な 恩恵(ギフト) を使用されたら勝利する可能性がさらに低くなる。ならばその力、 恩恵(ギフト) を使われる前に倒すしかありませんね!)
メイは立ち上がると、『 魔力糸(マジック・ストリング) 』収束剣を解放。
全力で『 魔力糸(マジック・ストリング) 』を展開する。
(相手が力を押さえている間に、私の切り札の一つで倒します!)
メイは黒を倒すため、最初に自身の切り札を晒す選択をした。
この選択が吉と出るか凶と出るか。
まだこの時点では誰にも分からない。