軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3話 ダンジョンコア爆弾(仮称)

海底ダンジョン、コアルーム。

その一室の壁には一抱えある球体のマジックアイテムが埋め込まれていた。

これは所謂、マジックアイテム版監視カメラだ。

ビー玉サイズの玉が埋め込まれた部屋や廊下などを映すカメラで、壁に埋め込まれた一抱えある球体が映像を映す画面となる。

とはいえ万能なものではなく、映像は映るが音声までは聞こえない。

画質もそこまで良い物ではなかった。

マジックアイテム版監視カメラを起動した竜人帝国側『マスター』のヒロ、ヒソミ、カイザーはそれぞれ画面をチェックしていく。

チェックしている途中でカイザーが渋い顔を作る。

「……最悪だな。 セスタ(爆弾小僧) 達が話をしていた化け物のように強いガキまでダンジョンに転移しているとは」

『化け物のように強いガキ』、ナズナが廊下のトラップを次々にひっかかるも次々破壊しながら突き進む。

途中、モンスターハウス的広場に出るが、鎧袖一触で敵モンスターを倒していく。

カイザーの言葉にヒソミとヒロも、ナズナが映る画面に視線を向ける。

「銀髪に赤い目、背が低い大剣使い……特徴が一致しているから間違いないでしょうね」

「戦闘が得意ではない小生でも分かるほど、強いですね……」

ヒロが目を細め警戒し、ヒソミが怪物と敵対した暗い表情を作った。

しかし、彼らの間に絶望感、諦め、自暴自棄的な空気感はまだない。

ヒロが断言する。

「画面越しでも分かるほどレベルが高く強いですが、倒すだけなら問題ないですね。対『C』用の『ダンジョンコア爆弾(仮称)』を使えば……」

『ダンジョンコア爆弾(仮称)』とは?

ヒロ達が万が一、アークでこの星から脱出できなかった際、『対C最終決戦用ダンジョン』であるこの場を用意していた。

そのダンジョン内で『C』を始末するため、竜人帝国側『マスター』達はとある部屋に長い年月をかけて、他の攻略したダンジョンのダンジョンコアを収集し、連結。

『C』が侵入したら、ダンジョン丸ごと吹き飛ばすほどの威力がある爆弾を作り出した。

そのコア爆弾を『ダンジョンコア爆弾(仮称)』と彼らは呼んでいた。

もちろん本当に自分達が居るダンジョンごと吹き飛ばすつもりはない。

現在は爆発する刹那、足を踏み入れた敵ごとその部屋を一時的に空間から隔離。敵を倒しつつ、ダンジョンそのものに影響を及ぼさないように設定してある。

当然、そんな無茶な仕様を実行した場合、彼らが居るダンジョンコアは魔力を大量に消費。再度、最低限の魔力が溜まるまでまともに機能しなくなるが……。

ヒソミがぼやく。

「彼女だけではなく、他の侵入者達も『ダンジョンコア爆弾(仮称)』で同時に始末できればいいんですけど……。折角、対『C』用に作り出した『ダンジョンコア爆弾(仮称)』をたった一人に使うのはもったいないですからね……」

「たわけ! 相手はアークを撃墜した奴らだぞ! 出し惜しみして誰も始末できず『ダンジョンコア爆弾(仮称)』を無力化されたら、それこそ余達の努力が水の泡になるではないか!」

ヒソミの台詞にカイザーが反論を叫ぶ。

『確かにそうなんですが……』とヒソミは彼の正論に納得しつつも、若干、拗ねた口調で返答した。

ヒロが二人を落ち着かせるように口を開く。

「ヒソミさん、カイザーさん、どちらの意見も正しいと思います。とりあえず、今、もっとも警戒するべきはアークを撃墜したこの黒髪の少年と、ゴウさんとセスタくんを退けた高い実力を持つ銀髪少女。どちらか一人、理想を言えば魔女を入れて三人が『ダンジョンコア爆弾(仮称)』に入ったらためらわず起爆しましょう。まずは強力な敵を一人でも減らすことが大事です」

「ふん! それで問題ないわ」

「小生も問題ありません。それにこのまま行けば、銀髪少女が先に一人で到着しそうですね」

『ダンジョンコア爆弾(仮称)』起爆基準を決めると、カイザー、ヒソミも同意の声をあげた。

二人の返事にヒロも満足そうに頷く。

「ありがとうございます、二人とも。それに映像を見る限り、 黒(ヘイ) さんと敵のメイド、ゴウさんとセスタくんと敵の猫耳少女、ルカンさんと敵の黒髪の少年――ゴウさんとセスタくん組が苦戦しているのは驚きですが、彼らなら挽回は難しくないでしょう」

この三人でまともに戦闘できるのはヒロだけだ。

カイザー、ヒソミ、どちらも戦闘より、技術者としての技能を伸ばしている。

そんなヒロの目から見て、『ライトvsルカン戦』はルカンが最も得意とする水中戦に引き込み、地の利を得ている。

『メイvs黒戦』では、竜人帝国側『マスター』内部で最も近接戦闘に優れ、戦闘特化のギフトを持つ黒が負けるとは考え辛い。

『アオユキvsゴウ、セスタ』は、現在アオユキが優勢だが、元魔人国側『マスター』最強の男ゴウ。足を引っ張っているセスタだが、戦闘技能、勘にはヒロも一目置いているほどだ。そんな二人がこのまま終わるとは思えなかった。

『エリーvs海底ダンジョンモンスター達戦』は、さすがにエリーが有利だった。

ヒロの目から見ても、モンスター達が彼女に勝利するのは難しいと分かる。

「他はこちらの優勢。このまま彼らを始末すれば、銀髪少女を『ダンジョンコア爆弾(仮称)』で爆殺。残る『巨塔の魔女』はボク達が一斉にかかれば倒すのは難しくないはずですよ」

「アークを撃墜された時は肝が冷えましたが、どうにか生きる目が出てきましたね……」

「…………」

ヒロの分析にヒソミが安堵の溜息を漏らした。

九死に一生を得たような溜息だった。

逆にカイザーは渋い顔を崩さない。

『そんなに上手く物事が運ぶか?』と疑心暗鬼だった。

もしヒロの楽観視が正しいなら、自分達はとっくにアークに乗ってこの星から脱出できていたはずである。

(チッ……)

カイザーとしては他にも懸念があった。

思わず画面に釘付けになっているヒロを横目で盗み見て、胸中で舌打ちをしてしまう。

カイザーは自分が考える最悪の状況にならないことを一人、祈る。

切り札を使い切り、こんな地の果て――どころか海の底まで来た以上、彼には神なきこの世界で、『ナニカ』にただ救いを求めて祈ることしかできなかったのだった。