作品タイトル不明
2話 ミキへの問い
『奈落』最下層、牢屋。
元魔人国側『マスター』の一人、ミキが入れられている牢屋の前に、アイスヒート、メラ、スズ&ロック――レベル7777のメンツが勢揃いしていた。
彼女達の顔色は冴えない。
理由はライト達、レベル9999全員が現在行方不明だからだ。
ライトがアークに乗って逃げる竜人国側『マスター』達を阻止するため、『SUR 宙城(そらじろ) 』を顕現。
宙城を逃げるアークにぶつけて撃墜させた。
宙城とアークは互いに重なり合い竜人帝国北部山脈を越えた森林地帯に激突し、巨大なクレーターを作り出す。
可燃物に引火したのか、そのまま宙城、アーク共に燃えだした。
クレーターの縁にライトが着地。
その後、瓦礫化したアークから、竜人国側『マスター』らしき人物が這い出てきた。
ライトの側にはメイ、アオユキ、エリー、ナズナが駆けつけた――直後、魔方陣が展開してライト達とマスター達全員がその場から姿を消したのだ。
その様子をアイスヒート達は上空から見ていた形になる。
別に彼女達は傍観していた訳ではない。
空を移動する巨大なアークが、同様の宙城と重なり落下。
瓦礫を雨あられのようにまき散らしながら、地面に激突したのだ。
そんな光景に驚いていた中でも、我に返りライトの側に急ぎ向かおうとしたが、レベル差によってメイ達に遅れ辿り着けなかった。
移動途中でライト達が姿を消してしまったのだ。
彼らが姿を消した後、『SR 念話』、『SSR 千里眼』で連絡、捜索したがどちらも空振り。
念のため周囲を探したが、姿形もなかった。
ライト達がどこに行ったのか、アイスヒート達には皆目見当も付かない。
結果、唯一竜人帝国マスター達のことを知り、彼らの行き先を知っている可能性があるミキに、話を聞きに来たのだ。
ミキは過去、情報の対価にスズへコスプレをして欲しい等、様々な要求をしてきた。
今回、ライト達が行方不明なこともあり、もしミキがいつもなら拒否するような過大な要求をしてきても、スズは覚悟を決めてある程度のことまでは受け入れるつもりでいる。
ライトに対する忠誠心もあるが、想い人が『もしかしたら何か危機に陥っているかも』と、心配の気持ちも大きい。
レベル9999が危険に陥る相手、トラップ、状況に自分達が行っても足手まといになる可能性は大きいが、時間稼ぎをしたり、盾などになることもできる。
状況が分からなければ、そんなこともできない。
故にどうしてもライト達がどこに行ったのか、知る必要があったのだ。
「……なるほどね、今、そんなことになっているんだぁ」
「ああ、だから、知っていることがあるのなら、話して欲しい。対価はアイスヒート達の名誉に懸けて必ず払おう」
未だ牢屋にいるミキに地上でおこなわれたことについて説明をし終えた。
ミキは事前にライトと交渉し、今回の一件が終われば、監視、レベルダウンペナルティー、隔離などされるが牢屋から出られることになっていた。
今はレベル9999が全員出払っているため、今更反抗するとは思えないが念のため牢屋に入っている状態だ。
ミキは一通り話を聞き終えると牢屋越しに、意味ありげな視線を深め問う。
「ちなみにどんなお願いでもいいのかしらぁ?」
「……もちろんだ。アイスヒート達が叶えられる願いならば、どのような対価でも払おう」
アイスヒート達は既に覚悟を固めている。
たとえ、『ミキに永遠に隷属しろ』と言われても、ライトの居場所が判明するなら、了承する覚悟だ。
全てはライトのため。
そんなアイスヒート達の覚悟を前に、ミキは意味深な笑みから一転、場の空気を和ませるような笑みを作る。
「なんかスズちゃん達が真剣味な空気を漂わせていたから、ついつい調子に乗っちゃったけど、事前にライトちゃんにはミキの命の保証、ある程度の自由なんか認めてもらう代わりに知っている限り全ての情報を伝え済みよぉ。その中の情報になかったら、ミキもライトちゃん達がどこに転移したのかなんて分からないわよぉ?」
「ケケケケ! そういえばそういう話だったな!」
『焦リスギテおいら達、スッカリ頭カラ抜ケ落チテイタナ!』
ミキの台詞にメラ達が頭を抱えてしまった。
事前に、ミキから助命と待遇改善の代わりに、知っている全ての情報を伝えることを約束したことを今更思い出す。
一応、アイスヒート達もミキから聞き出した情報を共有していたが、『強制転移先の情報』など無かった。
つまり、手がかり無しである。
(それに下手に変なこと要求して後からライトちゃんに知られて激怒されたら、折角手に入れた助命と待遇改善が反故にされたら嫌だし。ライトちゃん、スズちゃん達部下達も家族ってくくりにいれてるから。しかもライトちゃんは家族に対する思いが強すぎるから。そんな地雷ポイントでわざわざ踊る趣味はないわよぉ)
ミキが胸中でそんなことを考えている間も、アイスヒート達は頭を抱えていた。
さすがのミキもその様子を見て、少しだけ優しげに言葉を続ける。
「連絡も取れないのは心配だろうけど、今更レベル9999のライトちゃん達が負けるとは思えないわぁ。少し落ち着いて、相手から連絡を待っているのが賢明じゃない?」
「ご主人様達の強さはアイスヒート達もよく知っている。だが、物事に絶対はない! 実際、ご主人様達が強制転移されて、連絡が取れなくなるなど考えてもいなかったからな。配下として楽観視して傍観した結果、ご主人様達の誰かが手傷を負うどころか、命の危機に陥ったら……。アイスヒート自身、そんな自分を許すことなどできなくなってしまう!」
アイスヒートの台詞にメラ、スズ&ロックも同意した。
そんな彼女達にミキは面倒そうに溜息を漏らす。
「もぉ~真面目ちゃん達なんだからぁ~。でも、ミキだって竜人帝国側『マスター』達のことを全て知っているわけじゃないんだよ。しかも、強制転移先がどこになっているかなんて知るわけないよぉ~」
「そこをなんとか! アイスヒート達にはオマエの知識ぐらいしか頼る先がないのだ!」
「(こくこく!)」
『相方モ、「頑張ッテ何カ思イ出シテ」ダト』
「スズちゃんを焚きつければミキがなんでもどうにかすると思われても……」
いくらスズからのお願いでも、出来る事と出来ない事がある。
とはいえ、彼女達は納得しないだろう。
ミキは目を閉じ、腕を組んで頭を絞る。
「ライトちゃんと連絡が取れない上、転移で戻ってもこないんでしょ? ……それってつまり普通に考えたら、ライトちゃん達はどこかのダンジョンに入っている? たしかダンジョンって連絡も、転移も阻害するのとかあるよね? しかも、竜人帝国側『マスター』達はルカンさんの協力でよく海中にあるダンジョンでレベル上げをしていた云々と聞いた覚えがあるようなないようなぁ……」
「!? そうか海中ダンジョンか!」
ミキがひねり出した情報にアイスヒートが天啓を得た。
「連絡がとれない・転移が使えないという線で、ダンジョンは十分ありえる」
「でも、あくまで現時点の情報とミキの想像を組み合わせた程度だよ。正直、信頼度はそれほど高くないと思うけど……」
「ケケケケケケ! だが闇雲に探すよりずっとマシだ!」
「(こくこく!)」
あくまでこれらはミキの想像でしかないが、アイスヒート達にとっては値千金の情報だ。
指針もなく、この広い世界を探し回るより大分マシなのは確かだった。
指針が決まれば次は行動に移すだけである。
「この報酬は後日必ず支払おう。アイスヒート達はすぐにご主人様の捜査に向かわせてもらう!」
「はいはい、気をつけてねぇ。報酬も楽しみにしているからぁ~」
ミキは足早に牢屋を出て行くアイスヒート達を軽い調子で見送りつつ、後日得られる報酬について考え出す。
もちろん、下手に過激にしてライト達側の印象を損ねなってはまずいので、その範囲内で自分の欲望を満たすことができる報酬がないか彼女は真剣に検討するのだった。