軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15話 エピローグ

――とある深海遺跡。

その奥に魔術が幅を利かせるこの世界には似つかわしくない、電子機器、多数の配線、銀色の大きなポットのような物が鎮座していた。

そのポットは機械が死んだように長年停止し続けていたが……。

突然、落雷にあったかのように各種機械が起動を開始。

機械音、電子音、駆動音などが部屋一杯になり響く。

一通り機械が起動すると、終末のラッパを告げるかのように筒状のポットから空気が抜ける音が鳴る。

音だけではない。

静かなモーター音に合わせて筒状の機械半分上部がスライドし開く。

中には一人の少女が眠りについていた。

年齢は15歳だろうか。

髪は緩やかなパーマを描き、肩にやや触れる程度の長さ。

身長は低めだが、胸は年相応に大きく、足も長いためスタイルは良かった。

肌はシミ、ほくろなど一切ない。

目を閉じているが、瞼を開けば大きな瞳になるだろう。まつげも長く、『美少女』と断言していいレベルだ。

衣服は下着含めて一切身につけていない。

全裸で横たわっている。

ただ彼女の欠点を現段階で無理矢理上げるとしたら、機械の筒から出てきたのと、顔立ち、スタイルが整いすぎているためまるで工業製品人形のような印象を抱いてしまう。

金属蓋が開き、数十秒。

まつげが震えて瞼が開く。

彼女は天井を見上げながら、整った眉一つ動かさず、バラ色の唇を淡々と動かす。

「――現在進行中の 物語(シナリオ) 情報、ダウンロード。……ダウンロード、終了。 物語(シナリオ) の進捗、及び、予定進捗情報の齟齬計測――エラー。再度チェック……エラー。現在深刻なエラーが発生していることを確認いたしました。『C・U』様の現状情報確認。非覚醒。安全性に問題なし。総合判断として重大な正規 物語(シナリオ) 破綻を確認。第一サポートAI『requin』自己破壊確認。以後、第二サポートAI、『 AI(アイ) 』の緊急覚醒承認――承認確認」

再度、金属筒に繋がった機械類が、激しく音を奏で出す。

機械音のフルオーケストラ中、美少女が淡々と口を動かし続ける。

「身体機能スキャン、確認。異常無し。プログラム、起動――確認。規定人格の起動を了承しますか? ――了承確認。規定人格起動を承認。独立AI、正式名称『 Einqru(シングル) AI(エーアイ) 』、アイ、正常に起動いたします」

『Einqru AI』のアイと呼ばれる少女が起動を宣言。

宣言と同時に機械音は落ち着きを取り戻し、再びアイドリングするかのように静かだが確かに動いている音を漏らし続ける。

アイと自身を呼んだ少女は、一度目を閉じ、3秒ほど静止。

再度、瞳を開くと、驚きの表情を作り、金属の筒から飛び起きる。

「どういうことよ!? どうしてアイがもう目覚めないといけないの!? アイの出番はまだ先、っていうか『C・U』様――『C』様が目覚めて 物語(シナリオ) を開始するまでまだ数年先じゃない!? 何がどうなっているの!? ルカン(アイ) はここまで 物語(シナリオ) が破綻するまで何をしていたのよ!?」

アイは金属筒から飛び起きると、端に座って裸にもかかわらず、恥ずかしがるどころか、質の良い髪を両手でガシガシと掻き毟り出した。

緩やかなパーマのかかった髪が一掃ぐちゃぐちゃになってしまう。

「――いや何が起きているのかは情報を取得したから理解しているけど……。ありえないでしょ。『巨塔の魔女』っていう、 物語(シナリオ) にはいないキャラクターの誕生。 物語(シナリオ) が始まる前に 物語(シナリオ) が次々クリアー。さらに酷いのはアークが黒髪の少年によって撃墜されるって……。あれは元々『C』様の移動と後半の住居を兼ねた物でしょ? なのに撃墜されて、緊急事態とはいえコアまで消失とか……。大失態ってレベルじゃないわ……」

彼女は多少の冷静さを取り戻すと、自らぐちゃぐちゃにした髪を手ですきながら頭を回転させる。

「……アークのコア消失は痛手だけど、 ルカン(アイ) が緊急判断を下して、原因を特定できたのはお手柄ね。この黒髪のガキと『巨塔の魔女』を確実に始末すれば、 物語(シナリオ) の大幅修正は仕方ないとしても、まだ立て直しはできそうね。……『C』様が満足できるレベルになるか分からないけど……」

現実を突きつけられたアイは再び、両手を髪の毛――頭を掴む。

『C』――『C・U』と呼ぶ存在のためにアイとルカンは存在していた。

物語(シナリオ) の大幅修正を余儀なくされ、その『C・U』が満足できるかどうか未知数。

もし満足せず、『非難をされたら』と考えたら、自分達の存在意義が揺らいでしまう。

頭の一つも抱えたくなるというものだ。

しかし、いつまでも頭を抱えている訳にはいかない。

「とにかく、一刻も早くこのクソガキと『巨塔の魔女』一派を始末して、 物語(シナリオ) の大幅修正に取りかからないと!」

彼女は銀筒から降りると、ぺたぺたと裸足、裸のまま部屋の奥へと向かう。

部屋の奥には複数のモニターが存在していた。

彼女は服を着るより先にモニターの起動を開始。

モニターが起動し、現在いる海底神殿の各所を映し出す。

その一つに巨大な地獄の底まで繋がっていそうな穴があり、うごめく存在がいた。

「 ルカン(アイ) が負けた以上、アイが出ても二の舞になる可能性が高いわ。一応、こういう場合に備えて存在しているとはいえ……。今、この子を動かすのは気が引けるけど……四の五の言っている状況でもない。背に腹はかえられないわね」

アイは裸のまま席に座るとキーボードを叩き出す。

モニターの一つに映るもの動かすため、各種システムの操作を開始したのだ。

彼女はキーボードを叩きながら、一人殺意を漏らす。

「 ルカン(アイ) 達の仕事の邪魔をした黒髪のクソガキ、『巨塔の魔女』一派、その関係者、全員、こいつのエサにしてやるんだから!」

大きな瞳にモニターに映る数字、画像、複雑なプログラムなどが反射した。

アイはそれらの画像を爛々と輝く殺意の瞳で捉えて作業を嬉々としておこなうのだった。